劣等感を反逆の意志に変える群馬発の4人組ロック・バンド、KAKASHIの2ndミニ・アルバム『PASSPORT』。初の全国流通盤となった前作『ONE BY ONE』から1年足らずでリリースされた今作は、いかにも彼ららしいタイトルの「ドブネズミ」から始まる。相変わらず物事の"終わり"を夢想しながら、泣きたい夜を越え、それでも信じるものを手離さずに生きていくための泥臭い歌たち。"歌うべきこと"がより研ぎ澄まされた堀越颯太のヴォーカルには、安心して心を委ねられる強さが芽生えた。アルバムのラストには、まるで彼らの主催フェス"灯火祭"のテーマ・ソングのような、優しいメロディで泥まみれの過去を肯定する「愛しき日々よ」を収録。まさに笑い合う未来へのパスポートだ。
誰に、なんのために、この音楽を届けるのか。それが明確に浮かびあがる作品だ。八王子発のギター・ロック・バンド POETASTERが、ふたり体制で初めて完成させた1st EP。これまで恋愛の歌が多かった高橋大樹(Vo/Gt)のソングライティングが一転、君を泣かせる奴は許さない、とストレートに歌う「君に話があるんだ」に代表されるように、聴き手の人生に寄り添う全5曲が収録されている。バラエティ豊かな作風となった前作に比べると、シンプルにまとめ上げた今作は、歌と言葉が鋭く心に突き刺さる。彼らが届けるべき"誰に"とはリスナーであり、"なんのために"とはその人生を肯定してあげるために、だ。まさに"The Gift of Sound=音楽の贈り物"というタイトルがぴったりな、強くて優しい1枚。
グッドモーニングアメリカ、NECOKICKSを擁するFIVE RAT RECORDSから初の全国流通盤を放つニューカマー、POETASTER。"生"を"声"に換えて"声命力"――それだけで、彼らがいかに声に想いを託して歌にしているかがわかるだろう。"詩人"を名乗るだけのことはある、ドラマ性が高く情景的な歌詞と、そこに込められたメッセージを運ぶ熱を帯びた歌声は相乗効果で強い武器に。"所詮"とか"どうせ"とか、若者がこぼしがちなネガティヴなワードをフックにしつつ、そこから光の当たる方へ引っ張っていくパワーは計り知れない。そして、ライヴ感のある熱いバンド・アンサンブルから始まる曲が多いあたり、さすがはライヴハウス・シーンが色褪せない八王子育ちのバンドだ。メロディックなギター・フレーズも、彼らのカラーを強く印象づける。