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LIVE REPORT

Japanese

POETASTER

Skream! マガジン 2022年01月号掲載

2021.11.29 @渋谷CLUB QUATTRO

Writer 秦 理絵 Photo by そらおあきら

メンバーの脱退が相次いでも、不測の事態でCDを出せなくなっても、POETASTERは止まることなく、バンドを動かし続けてきた。その理由を、この日のステージで高橋大樹(Vo/Gt)はこんなふうに語った。"何があっても、なんで俺だけとかまったく思わなくて。バカなのかもしれないですけど。そういうことがあってなお支えてくれる友達とか事務所の人とか、みんなのことが大事というか。今手にある自分を、持ってるものを否定したくなかったんだよね"と。2013年に八王子でバンドを結成してから8年。コロナ禍の逆風の中でも、POETASTERは一貫して今自分たちができることだけに目を向け、ライヴハウスに立ち続けてきた。そんな彼らが今年8月にリリースした最新作『The Gift of Sound e.p.』を引っ提げ、全国14ヶ所を回った"君に話があるんだTOUR2021"のツアー・ファイナルとなった渋谷CLUB QUATTROだ。

対バンに迎えたハルカミライが熱いステージで会場を温めたあと、POETASTERのライヴが始まった。ヴォーカル 高橋とFuma-Z(Dr/Cho)に加えて、サポートにYoshi Nakayama(Gt/Cho)とごろう(Ba)を加えた4人編成による熱量の高い、剥き出しのバンド・サウンドに乗せて、"歓声よ 鳴り響け"と軽やかなメロディを歌い上げる「ラルム」からライヴは始まった。コロナ禍のライヴハウスのルールによって、今は会場に歓声が鳴り響くことはない。だが一斉に上がったこぶしがフロアの昂揚感を十分に伝える。フロントの3人が思いきりジャンプをして突入した「声あげて」から、声を出せないお客さんの代わりにメンバーがウォーウォーという力強いシンガロングを聴かせた「HEART OF GOLD」へと、序盤からペース配分を一切考えていないような高いテンションで楽曲を畳み掛けていく。

"うぉー、すげぇ超楽しい"。ツアー・ファイナルに辿り着いた喜びを爆発させた高橋は、最初のMCでギターをかき鳴らしながら、"ライヴハウスが大好きなんですよ"と(本心でそう思っていることがわかる口調で)切り出した。"俺の思うライヴハウスって笑うときは本気で笑うの。涙を流すときも本気で泣く。こぶしを上げるときも本気でこぶしを上げるんだ。今日はそうなるように一生懸命歌って帰るね"。そんなふうに意気込みを語り、Fuma-Zのドラムが力強い推進力を生み出していく未発表音源「放ツ言葉」へと繋いだ。ミラーボールの光を浴びたフロアがハンドクラップで一体になった「イマジネーションワールド」、1分間に全力を注ぐ前のめりな高速ショート・チューン「お先 失礼いたします」。心のリミッターを取っ払い、全力で感情を解放していくPOETASTERのライヴには日常では味わうことのできない、ライヴハウスならではの醍醐味が詰まっていた。

序盤の熱気をクールダウンしたのは、ギター1本で始まった高橋の歌に途中からバンド・サウンドが加わった、文字通りのバラード・ナンバー「バラード」だった。ここからは、全身を激しく揺り動かしながら繰り出されるエモーショナルな演奏の上で、高橋の力強い歌が心を揺さぶる「彼方」や「春になる」といった楽曲が続いた。どこか危うく、それでいてその奥に大きな包容力と優しさを感じる高橋のヴォーカルは、ライヴという空間の中で、一曲一曲にその瞬間だけの命を吹き込むように歌を届けていく。中でも"地元のことを思いながら作った曲です"と繋いだ、最新作『The Gift of Sound e.p.』の収録曲「望碧」が素晴らしかった。緑色に染まったステージ。ノスタルジックなメロディが、やがて"絶望に HOPE 秘めて/どこまでも行こうよ"と繰り返す、昂揚感に満ちたラストへと上り詰めていく。たとえ絶望の中でも、そこに僅かでも希望があれば、人は歩いていける。そういうことを身をもって知っているからこそPOETASTERの歌には説得力がある。

"まだまだ通過点だと思うんですけど、こんな大きなところでみんなに観てもらえて、バンドをやれて。僕は恵まれて音楽をやってるんだなと心から思いました"。ライヴの終わりを惜しむように高橋が感謝の言葉を伝えたあと、「GIFTSONG」を皮切りにライヴは再びクライマックスに向けて熱量を加速させていった。フロアの隅々までしっかりと見渡すような仕草を見せながら、頭上高くにピース・サインを掲げた高橋。最後に届けたのはバンドにとって大切なナンバー「君に話があるんだ」だった。どんなときでも"君"の味方でいるということを裸の心で宣言するような温かな1曲で、本編を締めくくった。

アンコールでは、バンドを長年支えてきたサポート・ギタリストのNakayamaが、正式メンバーとして加入することが発表された。高橋の報告のあと、そのNakayamaのギターが口火を切った「あの空の向こう」を披露して一度は幕を閉じたライヴだったが、なかなか鳴りやまない拍手に答えて(中には帰ってしまったお客さんもいたが)、本編でも演奏した「お先 失礼いたします」を何も言わずに全力でやり切って、今度こそ本当にライヴは幕を閉じた。終演後、POETASTERのオフィシャル・サイトには、Nakayamaを含む新生POETASTERの写真が公開されていた。真ん中で豪快に笑う高橋を中心にFuma-ZもNakayamaも最高の笑顔だ。もちろんこれからだって笑えない現実はあるだろう。それでもその1枚は、これからもPOETASTERが自分たちのバンド道を謳歌してゆくという気持ちの表れのように感じた。この日披露された「GIFTSONG」で歌われていた"辿り着いた先がバッドエンドでも/全てを愛せるように"という想いを全力で体現するために。


[Setlist]
1. ラルム
2. 声あげて
3. HEART OF GOLD
4. 抱きしめたって
5. 放ツ言葉
6. イマジネーションワールド
7. お先 失礼いたします
8. バラード
9. 彼方
10. 春になる
11. 望碧
12. Starry Night
13. 夜に溢れるもの
14. GIFTSONG
15. その夜を越えて
16. 君に話があるんだ
En1. あの空の向こう
En2. お先 失礼いたします

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