Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

INTERVIEW

Japanese

空想委員会

2018年07月号掲載

いいね!

Member:三浦 隆一(Vo/Gt) 佐々木 直也(Gt) 岡田 典之(Ba)

Interviewer:沖 さやこ

-収録されている4曲の歌詞にも"届く"という言葉が多いですものね。三浦さんのいろんな心境が重なって、"何色の何"という物語が完成したと。

三浦:物語を書いたことがなかったので最初は恐る恐るでしたけど、高校時代授業中に読んでいた(笑)、鈴木光司さんの小説などから受けた刺激を出せたらいいな......と思いながら書きました。最初のうちは物語の筋道をはっきり書いていたんですけど、最終的には読みとける人には読みとけるような書き方をしてみたりして。第6稿くらいまで書きましたね。

佐々木:書き上げてきたとき、ほんと驚いたよね。"すげぇな! 俺にはできねぇ!"って(笑)。

岡田:三浦さんは普段歌詞を書くときもプロットを用意するので、お話を書くことはできるだろうなと思ってはいたんですけど、文字量にびっくりした(笑)。ちゃんと物語としてまとまっていたので、"これはいける!"と思いましたね。

三浦:原作は8,000字くらいあるので、アニメは監督さんと相談しながらストーリーを詰んで構成してもらいました。

-アニメの製作と劇伴の制作は同時進行で行われたのでしょうか。

佐々木:アニメの監督さんとお話をして"こういう雰囲気のものがいいんじゃないか"と提案を貰ったり、お互い状況を確認したりしながら同時進行していきました。原作を読んだイメージでできた曲もあるし、変えた曲もあるし......劇伴を作るのは初めてだったので、どういう音を入れようかかなり悩みましたね。アニメは声優さんの声が入ると一気に世界観が変わるんですよ。自分が想像してたものと全然違う雰囲気になることも多くて、どうやったら絵と声に合うのか考えながら劇伴の曲も変えていきました。

岡田:劇伴はなおぴー(佐々木)が中心になって作ってくれました。一度全員佐々木家に集まってミーティングをしたりもして、きれいなかたちになったなと思います。なかなか劇伴を作れる機会なんてないし、くるりみたいに映画1本まるまる自分たちで作るなんて(※くるりは映画"ジョゼと虎と魚たち""奇跡"の全編音楽を担当)、本当に憧れの憧れなので、今回その貴重な第一歩が踏み出せました(笑)。

-原作も主題歌も劇伴もセルフ制作となると、曲作りの視点も普段と変わるでしょう。

三浦:実は歌詞が難産だったんですよ。煮詰まっているときに友達と飲んで、そこで"AI(人工知能)も歌詞が書けるんだぜ? そのときお前の価値はどこにある? AIが持ってない目線で書くのが人間なんじゃないの?"と言われて、"そうか、物語に出てくる登場人物視点で歌詞を書いてもいいんだ!"と思ったんです。これまでの空想委員会の歌詞は、僕が体験したことを僕目線でしか書いてなかった。ただ今回は物語と友達のアドバイスのおかげもあって、全部違う目線で書けたんですよね。主人公のかなたから彼女の遥に向けた気持ちを書いたのが「宛先不明と再配達」と「ベクトル」、遥からかなたに向けた気持ちが「エール」、僕からかなたに向けた気持ちが「マイヒーロー」。自分で原作が書けたからこそ、振り切っていろんな目線で歌詞を書けたことは大きかったですね。

岡田:アニメ"何色の何"の主題歌は「マイヒーロー」で、EP『何色の何』のリード曲は「宛先不明と再配達」で。音と映像はリンクしつつも別のもの、という作り方ができたのは良かったなと思っています。

佐々木:アニメで使われている「宛先不明と再配達」は空想委員会の切なくて温かい感じが出ている曲だから、EPのリードにしたいなと思っていたんです。エンディングの「マイヒーロー」は弾き語りをブラッシュアップしてバンド版にした感じですね。無駄な音を一切省いて、2番でリバーブ/ディレイを使うなど、初めての試みも取り入れました。

三浦:「マイヒーロー」、すごい好きなんです。『デフォルメの青写真』まで歌とサウンドが拮抗している感じを突き詰めてきたので、アレンジも凝ってたんですよね。だから今回、ふたりにシンプルなものにしてくれないかと頼んだんです。ちょうどそのときよく聴いていたのがOASISで。あのバンドは超単純なコード進行で、単純な演奏だけど、曲が素晴らしい。それでいて言葉が聴き手に届くもの――今回はそういうところに行きたくて。今までいろんなことに挑戦してきたからできることでもあると思いましたね。

-お話をうかがっていると今の空想委員会は"届ける"という気持ちが強いので、アニメ"何色の何"をクラウドファンディングで製作したことも大きな意味があると思います。

三浦:届ける気持ちが強くなったのは、「エール」だけでなくクラウドファンディングも大きかったですね。支援してくれた人たちと僕らのみんなで、ひとつのものを作れた。

佐々木:クラウドファンディングのリターンだからこそ、ここでしかできないことをやろうと思いましたね。"アコースティック音源出さないんですか?"と言われることも多かったので、"じゃあこのタイミングでやろう!"と自分たちで録音してみたり。楽しかったですね。

岡田:ベース・レッスンは普段やらないんですけど、クラウドファンディングのリターンだからこそ挑戦してみました。自分なりに初心者向けとちょっとできる人向けの教則本も手作りしてみたりして、自分のためにもなりました。いい時間でした。