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INTERVIEW

Japanese

パスピエ

2017年02月号掲載

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Member:大胡田 なつき(Vo) 三澤 勝洸(Gt) 露崎 義邦(Ba) やおたくや(Dr) 成田 ハネダ(Key)

Interviewer:秦 理絵

今回のニュー・アルバム『&DNA』で"自分たちを守る場所ができた"と、成田ハネダは言った。デビュー当時から圧倒的なオリジナリティを掲げ、音楽への深い探求心を抱きながら駆け抜けてきたパスピエは、今作で間違いなく新たなフェーズへと突入した。2015年に初の日本武道館ワンマンを成功させて以降、2016年はシングル3作品を立て続けにリリースしながら、並行してアルバム制作に取り組んできた5人。今作ではメンバーそれぞれのルーツを存分に発揮しながら、かつてないほど積極果敢に幅広いアプローチを見せている。めまぐるしく変わりゆく音楽シーンの中で、試行錯誤を続けるバンドが、ようやく手にした"自分たちを守る場所"とはどういう意味なのか? メンバー全員に話を訊いた。

-『&DNA』は、パスピエという世界観はもう完成したように見えて、まだまだ開拓の余地がいくらでも残されている、そういう可能性を感じるアルバムだなと思いました。

成田:なるほど。ありがとうございます。

-率直にいま感じている手応えから教えていただけますか?

露崎:いまは完成できた安心の気持ちでいっぱいですね。今回は1年間っていう、いままでで最長の期間を費やしたんですけど、常にそのとき考えていることを取り入れつつ、パッケージできたというか。当初のスケジュール感だと難しいかなって思ってたんですけど。

-1年間にシングル3枚を出して(『ヨアケマエ』、『永すぎた春 / ハイパーリアリスト』『メーデー』)、さらにアルバムを作るというスケジュールですもんね。

露崎:そう。そういう、いろんなプレッシャーがありつつも、そのぶんワクワク感もあったりして、すごく濃密な1枚になったと思います。結果として、シングルは飛び抜けて強いものになったんですけど、それに負けないくらいアルバム曲も個性の強いものになったんじゃないかと思います。

-三澤さん、やおさんはどうですか?

三澤:このバンドはメンバーみんなルーツがそれぞれ全然違うので、そういうのがいままでの作品よりも色濃く出てるのかなと思ってます。それこそ(タイトルの)"DNA"じゃないですけど――いままでもアレンジでトライ&エラーはしてきたんですけど、うまくまとまらなかったりして。デビューから5年間やってきたいまだからこそできたアルバムだなぁと思いますね。だから、自分たちの好きなことがかなりできてると思います。

やお:前作の『娑婆ラバ』(2015年リリースの3rdフル・アルバム)までとこれからを分けるアルバムだと思うんです。やっぱり2015年は武道館に向けて1年を過ごしたというか。それを乗り越えて、2016年はずっとアルバム作り向き合った1年だったんです。だから、今回のアルバムに対してリスナーがどういうリアクションをするのかは楽しみですね。

-成田さんはいかがですか?

成田:自分たちを守る作品ができたかなと思ってます。新しい試みをしてはいるんですけど、その幅の広さも含めて、パスピエ印というか。いま、女性ヴォーカルのバンドは男性ヴォーカルのバンドと比べたら少ないですし、こういう編成のバンドも多くはない。だからこそ遊べる幅が広いなと思ってるんです。そういう意味で、これだけ長くやっても、また新しいチャレンジができるんだっていうのは改めて再確認できたと思います。

-"自分たちを守る作品"というのを、もう少し噛み砕くと?

成田:いまは音楽シーン全体が活気づいてて、常にめまぐるしく動いていくなかで、いかに自分たちの場所を作るかっていうのが、今後続けていくうえでは絶対に必要なことだと思うんです。そういうなかで、今回、自分たちのやりたい音楽の居場所を作ることができたっていう実感があるんです。それが来年すぐに芽が出るかはわからないですけど。(※取材日は12月9日)

-この先の自分たちを見据えたうえで自分たちの場所ができた、と。

成田:これからも僕らのライヴで長くやり続けられる作品じゃないかなと思います。

-大胡田さんは今作について、どんな手応えを感じてますか?

大胡田:2016年でCDデビューから5年なんですけど、今回のアルバムはこれまでに出したCDのどこのテンションにも偏らずに、自分たちを表現できた1枚かなと思ってますね。"&DNA"っていうタイトルは私がつけたんですけど、"デビューしてからの5年間と私たちのDNAでできた作品"っていう意味なんです。"これがパスピエのDNA"って言えるような作品かなと思っています。

-今作を作るうえで、目指した方向性は何かありましたか?

成田:デモを作り始めたきっかけとしては、バンド・サウンドの可能性を広げる方法として、トラックとバンドの共存ができたらいいなっていう発想から、まず2016年が始まってたんです。それで、「ヨアケマエ」(Track.12)と「DISTANCE」(Track.3)を作って、「ヨアケマエ」はシングルとして出したんですけど。僕らは絶対に同期を使わないバンドなので、トラックをどう解釈して、バンドの音として生み出していくかが肝になっていったかなと思います。

-トラックとバンドの共存っていうのは、打ち込みのトラックに、生バンドの楽器隊を乗せるっていう発想だと思いますけど、それをパスピエはすべて生でやるという。

成田:そうですね。

-それを目指そうと思ったのはどういう意図だったんですか?

成田:結局、咀嚼できる音楽の情報量は限られてるなぁと思うんです。いま、ライヴハウス・シーンが盛んになってるから、その瞬間に楽しめる音楽が重要なのはもっともだとは思うんですね。ただ、僕らはわりと情報量の多いことが専売特許というか。だから、そこをうまく繋ぐ音楽は何かなと考えたときに、EDMっていうのが、ものすごく整頓されたループ・ミュージックだなと思ったんです。いままで、そういう要素をあんまり考えてなかったから、それを人力で表現したときに、また新しいものが見えるかなっていうのがあったんです。

-なるほど。

成田:リズムの部分をシンプルな軸にしたからこそ、メンバーのプレイ自体も余裕とか余白が生まれやすくなったのかなっていうのは完成して思いますね。