Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

INTERVIEW

Japanese

パスピエ

2016年12月号掲載

いいね!

Member:大胡田 なつき(Vo) 成田 ハネダ(Key)

Interviewer:秦 理絵

パスピエが、デビュー5周年記念日となる11月23日にニュー・シングル『メーデー』をリリースする。2016年は短いタームで精力的に楽曲制作を続けてきたパスピエの今年3枚目となるシングル。作品を出すごとに明確な意志と目的を開示してきた彼らが、表題曲「メーデー」で掲げたテーマは"内面の葛藤"だ。5年間の活動のなかでは、意図するしないにかかわらず、抱かれるパブリック・イメージにすれ違いがあった。パスピエは、ときにはそれを逆手に取って、自分らしさとは何かを模索し続けてきたバンドだ。その揺れる心を表すように激しさと穏やかさとを行き来する「メーデー」は、そんなバンドの内なる逡巡の歴史を刻んだものでもあり、これからも同じように進んでいくという覚悟のナンバーにも感じた。

-今年は点を結んで面を描くようなシングルを出していくという話でしたけども、今年3枚目のシングルになる『メーデー』はどういう意味合いの点になりましたか?

成田:今年出してきたシングルはわりと全部、裏テーマとして"対"というものを軸に作ってきたつもりではいるんです。1作目に『ヨアケマエ』(2016年4月リリースの5thシングル)を出して、そのときはアー写での顔出しというか――武道館を経て新しいパスピエを見せていこうっていう流れのひとつで、トピック的に見せていったんですね。つまり、過去と現在の境目っていう対だったんです。それをタイトルの"ヨアケマエ"という言葉でも表現できたらと思っていたんですけど。2作目の『永すぎた春 / ハイパーリアリスト』(2016年7月リリースの6thシングル)に関してはダブルAサイドということで、パスピエが持つ曲の二面性を対という形で出したんです。で、今回の『メーデー』は内面との対というか。周りの人が見聞きするものは表側の表現だったりするんですけど、それはストレートに生まれたっていうだけじゃなくて、必ず内面との対になる部分なんですよね。5年のなかで僕らが歩いてきた道も、本当にいろんな道のりがあって、決して順風満帆ではなかったと思ってて。

-順風満帆ではなかった?

成田:例えば、『演出家出演』(2013年リリースの1stフル・アルバム)はライヴを意識して作った作品だったんですけど、そもそも『ONOMIMONO』(2012年リリースの2ndミニ・アルバム)とか『わたし開花したわ』(2011年リリースの1stミニ・アルバム)を出したときに、僕たちはバンド・シーンで地に足をつけて活動していけるんじゃないかと思ってたんですよ。でも、もちろんある程度の反応はあったけど、思ってた反応と違ったというか。自分たちにはない見られ方で物事を見られることもあるんだなっていうのは、デビューしてから思ってたことなんです。

-なるほど。

成田:それで自分たちもライヴを意識した曲作りをしていくと、またそれに対して違う反応を得られるんですね。そこで出していったのはパスピエなりのロック・サウンドなんだけど、そうなると自分たちが最初に掲げていたテーマ――"印象派×ロック"の比率が自分のなかで崩れてきた部分もあったんです。そのなかで、パスピエの軸をどこに置いて活動していくのか。どれがパスピエなんだろう? って迷ってた時期もあって。でも、自分たちが迷ってることは、お客さんにとっては関係なかったんですね。"どこをとってもパスピエはパスピエ"って思ってもらえてたんです。

-それはパスピエが良いリスナーに恵まれてたってことでもありますね。

成田:そうですね。"あのアルバムとあのアルバムは違うよね"じゃなくて、どっちにもパスピエらしさを発見してくれるのは、自分のなかで支えになってた部分でもあるんです。ただ、そういう葛藤があるなかでいろんな作品が生まれてきたっていうのを、作品を通しても伝えたいなっていう気持ちがあって。悩みや苦しみも、自分の考え方ひとつでネガティヴにもポジティヴにも転んでいくんだろうなとは思うんですよ。

-当時は表に出ることのなかった自分の内側の気持ちをこのタイミングで伝えたかった?

成田:伝えたいというよりはアウトプットしたかったんですね。それをパスピエのひとつの歴史と捉えてもらってもいいんですけど。だから、「メーデー」(Track.1)の作詞に関しては大胡田との共作になっていて。僕らは性別も違うし、感性も違う。それがひとつの作品になったらいいなと思ったんです。

-大胡田さんは、成田さんと一緒に葛藤をアウトプットする作業はどうでしたか?

大胡田:一緒に歌詞を書くのは初めてじゃないので、やりにくいことは全然なかったですね。この曲は最後まで結末が出ないで終わるんですよ。今までシングルとかリード曲では、完全にすっきりしないで終わる曲ってなかったんです。だから、5年やってきたことで内面も隠さずに出せるようになったんだなと思いましたね。いつもは、どうしても最後にすっきりする答えを出してしまうので。この結末で終われたのは、そこで飾り立てる必要がなかったから。また新しいことができたと思います。

-出だしが"あー面倒だ"で始まって、曲の終わりも"あー面倒だ"ですもんね。

成田:この曲で表現したかった自分の内側は、"そこにある固定観念を1回壊さなきゃいけない"っていうことだったんです。やっぱり何もしないことが一番傷つかないし、平穏な状態だと思うんですね。でもそこを壊すことで絶対にネガティヴなイメージもまとわりついてくる。そういう自分を表すときにインパクトのある言葉として何かいい表現がないかなと考えていたら、"あー面倒だ"っていう言葉を思いついたんです。