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COLUMN

ヒトリエの「グルメトーキョー」【第7回】

2015年07月号掲載

ヒトリエの「グルメトーキョー」【第7回】

この原稿を書くにあたって気づいたが、前回担当した時と同じく新譜リリースとコラム掲載のタイミングがぴったり重なってしまった。 

前作から8ヶ月の間隔で発表される5曲入りのミニアルバム。その間にはワンマンツアーを含む数々のライブがあって、曲を作るペースは体感としてかなり速かった。前回の制作が難航した経緯を知っている人ならヒトリエ大丈夫かと訝しんだかもしれないし、4コマばかり書いているシノダの姿に胸を痛めていたかもしれない。

大丈夫です。これは1月の全国ツアー終了後、wowakaの作曲の筆がほとばしった結果だし、4コマの人もまだギターが弾けます。ゆーまおさんに至っては今回、他では聞けないリズムパターンを発明してしまったので天晴れ。めでたくリリースを迎える今、季節はもう夏です。


イガラシです。夏なので今回はビールです。
リアルエールの専門店があるということでお邪魔してきました。場所は京王新線の幡ヶ谷駅から直通の地下街にある「GREMLIN」さん。
店の内装も外装も全て店長の手作り、ビールはリアルエールのみ、さぞ気合の入ったお店なのでは。若干身構えて入店するも、唯一の店員である店長の佇まいと口調はめちゃくちゃゆるい。気軽に入って大丈夫なお店です。

そもそもリアルエールとは?という話は各自想像におまかせするとして「要はイギリス生まれの地ビールだよね」程度の認識で席に着いた矢先、グラスにビールを注ぐ様子に面食らう。なぜならカウンターの奥に置かれたのは一般的な炭酸ガスを用いるサーバーではなく、ハンドルを倒しビールを押し出すハンドポンプ。...かっこいい。リアルエールの定義には原料や発酵の製法だけでなくこの注ぎ方も含まれているそう。初めて見る光景に感動しつつ、その日仕入れてあった5種類の銘柄のビールをクセの弱い方から順番に出してもらうことにする。
 
(1)金髪の双子(京都)
一杯目のリアルエールと対面してまず驚いたのは泡の薄さ。温度はキンキンに冷えたいつものビールと比べるとじゃっかんぬるめ。飲みます。  
「......めちゃくちゃ飲みやすい。」体感としてはコロナやシンハー、オリオンビールなど暑い土地由来のビールを連想させる爽やかさ。屋外フェスの会場で飲めたら気持ちいいだろうなーという飲み心地。その一方で炭酸は相当弱く、ホップの香りと味がめちゃくちゃ濃い。いわゆるベルギービールや黒ビールのような濃厚さとはまた違って、とにかく香りの抜けが良い。泡の量といい、このへんがハンドポンプで注いだエールの特徴なのかなーと思いつつ次のビールへ。

(2)金鬼ペールエール(北海道) 
個人的にはこれが一番おいしかった。金髪の双子に比べて更に温度がぬるく、柑橘系の香りと酸味がしっかり感じられる。すっきりした苦みのキレが抜群。炭酸の弱さも相まって舌触りが滑らかなせいで、気がついたら飲み干していた。しまった。

(3)サマークリスタルエール(ノースアイランド)
スパイシー。前2杯が温度の効果で香りがたっていたのと同様、辛みの立ち上がりもかなり速い印象。名前の影響もあってか独特の切なさを感じる。サマーという響きに反応してセンチメンタルになってしまうのは間違いなくFenneszの名盤「Endless Summer」の影響だ。酔ってきたのかもしれない。

(4)HOUSE IPA (志賀高原)
メニューに書かれたIPAという文字が気になったので聞いてみる。

わたし:IPAって最近よく見ますけど実際なんなんですか。
店長:2秒の説明と1分の説明どっちがいいですか。
わたし:2秒でお願いします。
店長:へへっ。簡単に言うと濃いエールです。
 
なるほど。テーブルに運ばれてきたビールを見て、色がちょっと琥珀色になってきたなーと思いつつ飲む。なるほど、苦い。ホップの抜けの良さに、麦芽の風味が重く加わる。アルコールもこれまでの4~5%と比べて7%と高く飲みごたえがあり、グラスの底に近づくほど風味を楽しめる一杯。ちなみにIPAはインディア・ペールエールの略だそうです。

(5)W-IPA(箕面)
最後です。IPAが更に強力になったというこちら。アルコール度数は9% 、普通のビールの倍。
かなりブラックな味わいで、もはやウイスキーの様。ここまでくるとクセが強すぎて苦手なひとも多くなってくるかもしれない。が、ちびちびとグラスを傾ける手は止まらないのです。そういう意味でも、いわゆる「とりあえず生で」の冷たいビールをピューッといく醍醐味とは全く別のもの。鋭く長く楽しめる。ありがとう。ありがとう。 


5種類飲み終えた頃には気持ちの良い疲労と満足感、そしてすぐにまた1杯目から辿り直したくなるような寂寥に包まれていた。これが酔いだ。それぞれ強烈なものの重くなく、悪酔いもしなそう。まるでモノクロノ・エントランス。素晴らしいです。店長も気さくに色々教えてくれてビールが楽しくなる店、GREMLIN。ぜひ。


Gremlin
東京都渋谷区幡ヶ谷1-3-1 ゴールデンセンターB1
TEL:03-6300-5723 営業時間:15:00-23:30 定休日:月曜日

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