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DISC REVIEW

K

MAGNET

Kroi

MAGNET

"MAGNET"というタイトルには人を惹きつける引力の意味が込められているとのことで、そんなコンセプトを持ったうえで制作に臨んだメジャー2nd EPは、初めて体験するような刺激的な音や展開がちりばめられた、型にはまらないKroiが堪能できる1枚に。だが聴き手を圧倒するだけでなく、相変わらず"おっ"と心躍らせるような心地よさがどの曲にもあるのがさすがで、何度も繰り返し聴き入ってしまう。そんな楽曲群の中でも、泣きのギターとレトロな鍵盤の音色でブルージーに聴かせるインスト「cranberry」では彼らのルーツを感じさせるし、ラスト・チューン「風来」はその名の通り風で吹き寄せられるような軽快で爽やかな仕上がりで、実験的でありながらも幅広いリスナーの心を掴めそうな技ありの作品だ。

telegraph

Kroi

telegraph

TVドラマ、CM、番組テーマ曲のタイアップ、そしてファッション・ブランドとのコラボやKing & Princeへの楽曲提供など、さらに幅広く彼らの名を目にすることが増えたのを実感するなか、満を持してのアルバムが到着。だが、落ち着いたムードのメロと各楽器の音がドカンと押し寄せるサビとの緩急が凄まじい「Pixie」をはじめ、どれだけリスナー層を広げても、彼らの独創性は失われることがなく、予想を気持ち良く裏切るKroiサウンドを鳴らし続けている。また、ボサノヴァっぽいリズムやアコギの涼しげな音色が彼らにしては新鮮に感じる「Not Forever」、ゴキゲンなインスト「banana」、バカンス感満載の「熱海」など季節感のあるナンバーもあり、この夏のお供に自信を持っておすすめできる1枚に!

nerd

Kroi

nerd

今年全国デビューを果たして以降勢いを加速中のKroiによる新EP。フル作含め今年3枚目のフィジカルというスピードにも驚きだが、さらに望外なのはそのクオリティの高さだ。本作も先行曲「Juden」から飛びっきりファンキーに腰から躍らせる。ぶりっぶりの関 将典のベース含めソロ・パートも盛り込むソウルフルな同曲だが、内田怜央のヴォーカルは繊細というのもユニーク。一方、全体としてはこれまでよりファンク以外の要素が強まり、新たなミクスチャー感を堪能できるように。益田英知(Dr)が作詞に参加したハイビートでスタイリッシュなロック・チューン「Rafflesia」や、ムーディに振り切った「WATAGUMO」など、新たな武器も携え、洗練された印象を与える。彼らを追ううえで重要作となりそうな1枚。

僕とターヘルアナトミア

KUDANZ

僕とターヘルアナトミア

“歌集”と名付けられた、KUDANZのニュー・アルバムが到着。“ターヘルアナトミア”とは解体新書の原著のことで、今作のタイトルには“たくさんの出来事やいろんな気持ちを1曲ずつ紐解いてみんなに聴いてもらう”という意味が込められているという。そこに宿るのはササキゲンの人生の結晶と言って良いほどの強固なスケール感。やわらかくも激しさを内包した音、光と影、暗闇と陽だまりの狭間を行き来する言葉のコントラストは、どこまでも広がる樹海に迷い込んだような感覚にすら陥らせる。時間と言う概念もなくなるほど、それこそ肉体というものも意味をなさないのではないか……という精神世界。情熱と研ぎ澄まされた集中力が刻むドラマティックな3人の音色と歌は、心の奥深くまで清く響いてゆく。

programs

KUDANZ

programs

幻想的なコーラスと夜の森の中を彷彿させる音が溶け合うイントロを聴いた瞬間に、音の中に引きずり込まれた。昨年8月に1stシングル『無神論』をリリースしたKUDANZから2枚目のシングルが到着。7分近くあるタイトル曲は煌びやかさと力強さを帯びた壮大なロック・バラード。ササキゲンのヴォーカルもその威力を増し、優しく包み込むように響き渡るかと思えば、時にこちらを飲み込んでしまうような勢力を持つ。サウンドもひとつひとつが鮮やかに滲み、心の隙間を突き刺すように埋め尽くす。『無神論』とは逆ベクトルと言ってもいい、同じバンドなのか疑うほどの振り幅。いい意味で驚きが隠せなかった。軽快なリズムの中に切ないコードが舞う「ワンダフルワールド」は、彼らならではの応援歌。冬を美しく彩る全3曲。

無神論

KUDANZ

無神論

言葉の持つ力、それは時に国すらひっくり返すことがある。KUDANZのフロントマン、ササキゲンの繰り出す言葉も、人の急所を鋭く突き刺すようなパワーがある。出荷枚数1000枚限定の1stシングル『無神論』には、今にも暴れだしそうで泣き出しそうな3曲のササクレ立ったギター・ロックが収録されている。ササキの言葉に触発された音像の切迫感は、腹を括ったと言わんばかりの覚悟がある。世の中に対する違和感に対し、音楽で真っ向勝負を挑んでいるようだ。素朴でありながら過剰。純粋すぎるくらいの憂いと情熱。僅かに存在する希望へ思いを馳せ、もがくように歌を歌い、音を放つ。スマートではないかもしれない。だが、満身創痍ながらも突き進み続けるその姿は、どこまでも美しい。信頼出来る優しい音だ。

Natural Magick

KULA SHAKER

Natural Magick

今作は、再結成時に参加できなかったオリジナル・メンバー Jay Darlington(Org/Key)の、実に25年ぶりの復帰作ということで話題となっているが、注目したいのはなんと言ってもそのエネルギッシュなサウンドだ。ライヴ・パフォーマンスを意識したキャッチーな踊れるサウンド、ボリウッドのノリとサイケ・ロックのグルーヴ感、アーティスティックでユーモアのあるスパイス的要素、シンプルにやりたいことが凝縮されたコンパクトな仕上がり、そのすべてが絶妙に調和している。青春時代を一緒に過ごして、人生と音楽経験を共に積み上げてきたメンバーたちが、その再会を喜び合うように共鳴し作り上げられたサウンド。感動すら覚える、この祝福されたサウンドはぜひライヴでも体感すべきだろう。

1st Congregational Church Of Eternal Love And Free Hugs

KULA SHAKER

1st Congregational Church Of Eternal Love And Free Hugs

独特の美学を持ったサウンドで、熱狂的なファンの多いKULA SHAKER。その活動はマイ・ペースではあるが、それだけに、ひとつひとつの作品が彼らのターニング・ポイントとも言えるような重要性があるのではないかと思う。前作『K 2.0』はデビュー作から20年という節目でもあって、初期の冒険心溢れるサウンドを進化させたような、文字通りデビュー作の"2.0"なつくりだったが、今作は世の中の変化やメンバーそれぞれの変化/進化を反映した、彼らの"今"を表現するアルバムとなった。神話に基づく壮大なテーマがパーソナルな感情と結びつき、サイケデリック・ロックの浮遊感と肉体的なアナログ・サウンドの高揚感に溢れている。KULA SHAKERという不思議な魅力を持ったバンドの再評価にも繋がるだろう。

K 2.0

KULA SHAKER

K 2.0

デビューから20年、そして再結成から10年という記念すべき年にリリースする5作目のアルバム。前作から実に6年ぶりではあるけれど、ブレみたいなものはこれっぽっちも感じられない。すなわちインド音楽からの影響を始めとする東洋の神秘と60~70年代のブリティッシュ・ロックへの憧れを、そのまま反映させたサイケデリック且つグルーヴィなロック・サウンドはここでも健在。円熟味で勝負するこのアルバムを、"衝撃"と語られることが多い最初の2枚と比べるのは野暮ってものだろう。トラッド・フォークやウェスタンの影響を、エキゾチシズムのひとつとして取り入れているあたりはまさにKULA SHAKER。ファンキーなTrack.10「Get Right Get Ready」からロック・バンドとしての芯の太さが感じられる。

K〜15周年記念エディション

KULA SHAKER

K〜15周年記念エディション

BULRやPULP、SUEDE等が相次いで再結成、活動 を再開しブリット・ポップ・ムーブメントが再燃される中、KULA SHAKERの強烈なデビュー作がリマスタリング、そして未発表曲を含めた豪華版としてリリースされた。95年当時異彩な魅力を放っていたKULA SHAKERの作品を改めて聴き直すと、彼らが独自の方向性を持っていたバンドだと言うことがわかる。そのグルーヴィで肉体的なサウンドは今聴いても錆び付いていない。EPとベストでしか聴けなかった「Hush」が収録されているのも嬉しいところ。限定BOXに収録されているライヴ音源は当時の熱気がしっかりとパッケージングされている。

Pilgrim's Progress

KULA SHAKER

Pilgrim's Progress

再結成を果たし『Strangefolk』を2007年にリリースしたKULA SHAKER。3年ぶりとなる今作は、ベルギーに建てられたスタジオでレコーディングを行い、その土地の空気に多いに影響を受けたという。自身の中にある物語を高純度で濾過したような、時代性を超越したこのアルバムは、ある意味、仙人的なストーリー・テラーによる美しい物語集と言えるかもしれない。インド趣味が後退し、西洋のスタンダードなロックのフォーマットに重心が移ったことにより、その物語性の高さはよりストレートに浮かび上がっている。このピュアな妄想癖と様式美の塊のようなアルバムは、ある意味KULA SHAKERらしいとも言える。時代とかけ離れたストーリー・テラーは変質的に捉えられがちだが、このアルバムは、素直に美しい。

Smoke Ring For My Halo

Kurt Vile

Smoke Ring For My Halo

フィラデルフィア出身の若きシンガー・ソング・ライターKurt Vileの4thアルバムが日本初上陸。SONIC YOUTH、ANIMAL COLLECTIVE、DEERHUNTERなどが絶賛しているという情報を受け、期待はしていたが、いやはや予想以上の秀作だ。何よりも、作品はもとより、Kurt Vileというアーティストがあまりに素晴らしい。水溶性のLeonard Cohenとでも言おうか、滲み浮かび上がってくる哀愁と心地よい退屈。こんなにも穏やかなのに、決して気怠いわけではなく、徐々に押し寄せてくる潮騒のようなエモーショナルに、心は歓喜の悲鳴を上げそうになる。そして、それだけに収まらない楽しさもある。爽やかでフレッシュな、収穫したての果物のような瑞々しさに心は踊り、やがて、その心地よさはあなたの体を満たし、その心に充足の時をもたらすだろう。

iSH

Kyoka

iSH

東京とベルリンを拠点に活動する日本人女性アーティストKyoka。今作は坂本龍一とのコラボが話題となったALVA NOTOなどが率いるドイツのレーベルであるRaster-Notonから今年2月に発売された12インチ・レコードの国内盤CDEPとなり限定300枚プレスという大変希少な一品。その楽曲は無機質なノイズ、どこかポップなシンセ音、そしてサンプリングされた声が予測不能に混在する強烈なミニマル・ビート。カオスという形容が似合うも聴き苦しさは一切なく、むしろ何度でもリピートしたくなるような妖艶さに満ちている。もはやカテゴリやジャンルさえ飛び越え別次元にまで到達した正真正銘のアドヴァンスド(進歩を遂げた)・ダンス・ミュージックに、脳まで痺れること間違いなし。

Love To Be Lost

KYTE

Love To Be Lost

過去にはその世界観にポストSIGUR RÓSなんてキャッチ・コピーが躍ったが、それとは一線を画したオリジナリティ溢れる美意識を確立した......そんな想いをより強固にしてくれる約2年振り4枚目の新作である。ここ日本では世界に先駆けいち早く火がつき、熱いファン・ベースを築き上げているUK叙情派、KYTE。本作のトピックはメンバー脱退で3ピースとなったことが伝えられるが、なにより初のUSレコーディングで制作された影響は大きい。持ち前の壮大でイマジネーション豊かなサウンドをより拡げるよう海を渡ったのか、彼の地の空気を吸ったエレクトロニクスとブレシー・ヴォイスの妙味はダイナミックかつシネマティックに美しい。最早、孤高の威厳までも漂う印象を受ける。プロデューサーはLOS CAMPESINOS!やBLONDE REDHEADを手掛けたJohn Goodmanson。