DISC REVIEW
タ
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東京カランコロン
noon/moon
カランコロン初の2枚組アルバム。タイトル通り昼と夜ともとれるし、建前と本音とも、ポップともアヴァンギャルドともとれるが、いずれも最終的にポップスと言える域に消化。"ワンマ んツアー"で会場一体になり録音したコーラスをベースにした「noon」、「カラフルカラフル」に素直に感動したり、改めて中毒性の高い「スパイス」のメロに感服するDISC1。『noon』のTrack.1とリリック的には同じ構造を持ちつつ、思っきり遊び心を注入したDISC2の始まり「moon」にニヤニヤし、80sフレイヴァーでミニマル・ファンクな「ロボコミュ(SZKロボットMIX)」や、在日ファンクホーンズがハードボイルドに曲を彩る「じゃがいも殺人事件」などトータル14曲。ほぼ同じ歌詞ながらアレンジで心象の変化を描くふたつの「ハロー」も大きな意味を持つ。
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東京カランコロン
スパイス
カランコロンのニュー・シングルはアニメ"食戟のソーマ"エンディング・テーマとしても話題、なんだけれどこれはぜひ、きっちりフルで聴くべし! イントロから単音且つ複雑なギター・フレーズがヴィヴィッドに彩り、モータウン調のビートは軽快、でもアレンジは相当凝っていて、当然、演奏スキルも容赦なく高い。テンポじゃなくて構成要素はジェットコースター級のポップ・ナンバーに仕上がっている。和テイストを感じるサビのメロディと歌詞の絡みも中毒性満点で、切ない歌詞の内容も切なすぎず、フックとして残るさじ加減もいい。そしてカップリングは"キテレツ大百科"でおなじみの「お料理行進曲」を2015年のカランコロン流、おもちゃ箱をひっくり返したような遊び心でアレンジ。聴いてお腹が空くナイスなカバーだ。
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東京カランコロン
きらめき☆ドラマティック
2012年8月にメジャー・デビューしたばかりの男女ツイン・ヴォーカルの5人組バンド。前作の“ナツ盤”に続き、第2弾の今作は“フユ盤”。リード曲の作詞はリリー・フランキーだというから驚きだ。ピコピコとテレビ・ゲームを思い出すような電子音と昭和歌謡曲的なレトロなメロディと60年代洋楽ロックにも負けないキャッチーなキーボード。1つ1つをとれば、どれもポップでキャッチー、そして馴染みのあるサウンドである。決して新しく聴こえるものではないだろう。だが、3つ合わさった時の衝撃ときたら、どう表現しようかと何度も書いては消して、を繰り返している。まさに、筆舌尽くしがたいというやつだ。絶妙なバランスでブレンドされた3つの個性とツイン・ヴォーカルのハーモニーが織りなす冬曲たちは今冬必聴である。
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東京カランコロン
少女ジャンプ
2009年に結成し、その直後楽曲がロッキング・オン主催のRO69JACKのコンピレーション・アルバムに収録されるなど、注目を集める東京カランコロンの1stシングルがこちら。スピッツやLOST IN TIME等を手掛ける竹内 修をプロデューサーに迎えて制作された今作は、彼ら独自のポップな感覚と女の子の視点から描かれた歌詞がとても印象的なアップテンポなポップ・チューン。カップリングの「ぽっかりsweet」はまるでDEERHOOFを彷彿とさせる不思議なバランス感覚を持ったマジカルなナンバー。カラフルな音楽性と急速な曲展開、それがまるで計算され尽くされたかのような世界感。今後さらに注目を集めていくだろう。ボーナス・トラックとして収録されている46分にも及ぶライヴ音源も必聴。
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V.A.
New Action! Compilation Vol.1
毎月最終月曜日に新宿MARZで開催されているロック・パーティ『New Action!』から放たれた今作はロックンロールもヒップホップもエレクトロも含んだ全15曲。東京カランコロン、THEラブ人間を始めこれから注目を集めるであろうアーティストの代表曲や新曲も収録されたお得な一枚だ。同時期に発売になった"freethrow"のコンピと同じくジャンルやレーベルではなくパーティーから生まれた事に意味があるのだろう。いち早く話題のバンドを楽しめる事もポイントだがアルバムとして聴いても流れがあってしっくりと聴き通せる。ロック・パーティーに行った時の発見や驚きをこのコンピからも見つけることが出来るはずだ。
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東京ゴッドファーザーズ
BANDIDOS
ロック、フォーク、アイリッシュ、ブルース、ジプシーなど多種多様なサウンドを鳴らす、なんでもありのアコースティック・トラッド楽団、東京ゴッドファーザーズ。アコギ、ウッド・ベース、カホン、ピアニカ、エレキ・ギターという特殊な編成で、愛と平和と哀愁と、ちょっぴりのセンチメンタルを唄う彼らの1stミニ・アルバムは、世界のルーツ・ミュージックを基盤にした、老若男女誰もが楽しめるような1枚。笹井陽のノスタルジックな歌声が胸に沁み、多彩なアコースティック・サウンドが滑らかに耳に入ってくる。紅一点メンバー、ぼぶサチコがリード・ヴォーカルをとった「コーヒールンバ」もアルバムにいい味を出している。これが、生粋のガレージ畑で活動していたメンバーによる作品だなんて、本当に驚きだ。
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東京初期衝動
pink
2022年発売の1stミニ・アルバム『らぶ・あげいん』以来のCDリリースとなる、東京初期衝動の最新EP。岡崎京子のイラストに載せた"pink"のタイトルだけで、サブカル野郎をドキッとさせる今作。しーなちゃん(Vo/Gt)のリアルな息遣いで始まる失恋ソング「untitled」から、先行リリースされた「恋セヨ乙女」、「はないちもんめ」を含む5曲を収録した今作は、全曲が失恋ソング&さよならソング。乾いたバンド・サウンドに感傷的且つ感情的なヴォーカルで女子の本音を歌う楽曲たちに、コンセプチュアルな作品性とこれまでとの印象の違いを感じたが。ラストの「メンチカツ」がバカすぎて、なんだかホッとした。豊かな表現やサウンドのこだわり、作品の統合性からバンドの充実っぷりも感じる1枚。
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東京初期衝動
らぶ・あげいん
初の6曲入りミニ・アルバムは、前作『えんど・おぶ・ざ・わーるど』の延長線上に位置する作風と言えるかもしれない。すでにMV公開済みの「ボーイフレンド」では銀杏BOYZのサポート・ギタリストを務める山本幹宗をサウンド・プロデュースに起用。歌詞とメロディは美しく磨き抜かれ、トキョショキ史上最も爽快なポップス・ナンバーに仕上がっている。さらに「俺流サニーデイ・サービス」においては本家の曽我部恵一(Vo/Gt)をコーラスで迎え、こちらも良質なポップ曲。そして、「梅毒」は今のご時世に警鐘を鳴らすように、トゲトゲしいパンク・サウンドでユーモアたっぷりにメッセージを投げつけている。「ボーイズ・デイ・ドリーム~ドッカーンver.~」はバンド・アレンジに生まれ変わっており、これもライヴで聴いてみたい。
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東京初期衝動
えんど・おぶ・ざ・わーるど
"アイツらを黙らせろ僕が僕である為に"と、バンドの決意表明のように高らかに打ち上げるストレートなロック・ナンバー「腐革命前夜」を皮切りに、底抜けにキュートなポップ・ソングや歪んだガレージ・パンク、淡いミディアム・ナンバーまでをも呑み込んでゆく東京初期衝動の2ndアルバム。前作『SWEET 17 MONSTERS』から約2年3ヶ月ぶりとなる今作は、銀杏BOYZに強いリスペクトを掲げて爆走する彼女たちが、決して単なる勢いや衝動だけでは語れないバンドであることを証明するような1枚になった。聖なるサウンドに乗せて、"2021年もすこし大変な時だったネ"と語り掛ける「クリスマス」など、アルバムの節々でふいに垣間見られるしーなちゃん(Vo/Gt)の優しさにぐっときてしまう。
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東京初期衝動
Second Kill Virgin
昨年新ベーシスト あさかが加入した東京初期衝動の新体制初ED。異なる方向に振り切った全3曲は、ライヴハウス直系のインディー・ロックから売れ線のJ-POPまで、実は東京初期衝動が多面的なポテンシャルを秘めたバンドであると感じさせる1枚。打ち寄せる波の音をSEに弾ける夏のパーティー・チューン「さまらぶ♥」、ベースの低音が別れの痛みをやわらかく包む仄暗いバラード「blue moon」、銀杏BOYZ直系の疾走する青春パンク「春」と、まったく違う方向へと振り切っている。ラヴ・ソングのようでもありメンバー脱退の悲しみを断ち切る歌にも聞こえる「春」は、"あなたと見る景色が変わったって/僕はそれでも歌いつづけるだろう"と、バンドの新たな決意が滲む歌詞も印象的。ここから彼女たちの第2章が幕を開ける。
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OKAMOTO'S
VXV
CDデビュー5周年を迎え、1月に5thアルバムをリリースしたばかりのOKAMOTO'Sによる"5.5th"アルバムは5組のアーティストとのコラボレーション作品。RIP SLYMEとはAEROSMITH & RUN-D.M.Cばりのオールド・スクールな王道ヒップホップとハード・ロック・サウンドの融合を聴かせ、スカパラとは大編成イケイケ音楽部隊と化し、Wilson PickettばりにシャウトするROYとはクロさ全開で渡り合う。タイトルと曲調から"民生愛"がビンビン感じられる「答えはMaybe」と、いずれもOKAMOTO'Sならではの、この企画を実現できる実力と各アーティストへの敬意を感じさせる内容。中でもラストの黒猫チェルシーとのデュエット「Family Song」が出色で、2組の友情を感じさせる感動的な楽曲となっている。
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東京スカパラダイスオーケストラ
欲望
EGO-WRAPPIN'の中納良恵とハナレグミが参加した東京スカパラダイスオーケストラ通算17枚目のアルバム。ヨーロッパ・ツアーの合間を縫って1週間という短期間でレコーディングされたというエピソードからも分かるとおり、衝動がそのまま切り取られてパッケージされている。Track.1の「黄昏を遊ぶ猫」を聴いた瞬間から、顔面に熱風を吹きかけられたような熱さと勢いに呑み込まれそうになる。もちろんそこには長くに渡って音楽シーンを牽引してきた彼らだからこその楽曲の深みと質の高さがしっかり存在しているのだが、それよりも音楽への歓喜の叫びが聴こえてきそうな作品に仕上がっているのが印象的だ。誰よりも音楽を楽しみ、音楽への欲を追求する、衰え知らずの攻めの姿勢は、最高にロックなのではないだろうか。
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東京スカパラダイスオーケストラ
Walkin'
約2年ぶり通算16枚目となるニュー・アルバム。ピアニストの上原ひろみ、サックス・プレイヤーの菊地成孔、Manu Chaoといった面々との豪華コラボ曲も収録し、中でも中納良恵(EGO-WRAPPIN')が参加した「縦書きの雨」はしっとりとしたミディアム・チューンでお互いの良さを最大限に生かした都会的な大人のスカに仕上がっている。スカパラ節が炸裂したアッパーな展開も痛快だが、こういった沁みるサウンドも素晴らしい。アルバム・タイトルが示すとおり、一歩一歩確実に踏みしめてきた今までの彼らの歩みと、これからも自分たちらしい速さで歩んで行く意思を感じる。デビュー23年目、また新たな想いのもとに鳴らされる音はとてつもなく新鮮で煌びやか。
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東京スカパラダイスオーケストラ
World Ska Symphony
スカという枠組みをさらに押し広げながら独自のスタイルを確立して20年間君臨するスカパラ。多彩なスタイルと方法論で、大衆性と独自の音楽性を両立する彼らの面目躍如とも言えるポップなアルバムだ。洗練されていながら、ダイナミズムに満ちたその音楽性はもちろんだが、スカパラほどメジャー・フィールドに対して戦略的なバンドはそういない。それはスカパラのようなバンドが未だに現れないという事実が物語っている。例えば多様なコラボ(今作では奥田民生、Crystal Key、斉藤和義が参加)をとっても、とてつもなく意識的で戦略的だからこそ、その高い音楽性をキープできるのだろう。「Won't You Fight For Happy People?」スカパラはファイティング・ポーズをとり続けている。
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東京スカパラダイスオーケストラ
流星とバラード
東京スカパラダイスオーケストラが20周年を迎える今年、まず放つのがこのシングル。何と、「美しく燃える森」以来となる奥田民生との2度目のコラボレーションである。都会的で洗練されたスカパラの音に合わせて、奥田民生もこれまであまり見せたことのない大人っぽい歌声が印象的でグッと歌に引き込まれてしまう。少し切なさが滲むこのシングルは、奥田民生の新たな一面を垣間見させるとともに、スタイリッシュな雰囲気を生み出すスカパラのアレンジ、演奏能力の高さを示すシングルとなっている。スピード感はありながらも、それがこれまでの歌モノと違うのは、熱を抑えたスタイリッシュなナンバーであること。スカパラ20 周年がどういう一年になるのか、早速楽しみになる一曲だ。
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東京スカパラダイスオーケストラ
KinouKyouAshita
スカパラデビュー20周年!記念碑的な今回の4曲入りニュー・シングル。タイトル・ナンバー「KinouKyouAshita」ではFISHMANS の茂木欣一がリード・ヴォーカルを務め、作曲にも参加している。メジャーコードながらもどこか哀愁が漂うメロディと、ダブの手法に乗っ取って強調されているベースのグルーヴが印象的なナンバーだ。「Give Me Back Ball」はスカパラらしいアッパーなナンバーで、曲中盤ではキーボードのソロが炸裂している。そしてシャンソンの名曲、エディット・ピアフ「愛の讃歌」のカヴァーでは、スカパラならではの工夫を凝らしたアレンジがそこかしこに加えられており、正にお見事!な出来栄えだ。更にラストは、「トーキョースカメドレー」のライヴ音源が収録されている。
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当真 伊都子
ドリームタイム
CORNELIUSとのコラボレーションや映像作家としても知られるアーティスト高木正勝の多くの作品でメイン・ヴォーカルを務める当真伊都子の初のソロ作品。4歳から弾き始めたというピアノはまるでドビュッシーを思わせる響きでとても印象的。また高木正勝作品でも欠かせない一つの要素となっている彼女の歌声は美しく心地いい。限りなくプライベートに近い環境でシンプルに作られたという今作はとてもパーソナルでぬくもりがある。儚くセンチメンタルな響きを持ちながらも、広大な世界が見えてくるような不思議な浮遊感と清涼 感が漂う。今作の素朴な作りも素晴らしいが、彼女のその素敵な声で作り込まれたポップなアルバムも聴いてみたくなってきた。
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透明雑誌
透明雑誌FOREVER
Johnny Rottenよろしく“E・M・I~”と叫んだかはわからないが、この度、台湾発の4人組オルタナ・バンド透明雑誌がついにメジャー契約。本作は記念すべきデビュー・シングルとなる。2010年に母国で発表した1stアルバム『我們的靈魂樂』で繰り広げたWEEZERやPIXIESを彷彿とした90’sオルタナティヴ・ラヴァーっぷり、そしてNUMBER GIRLへのピュアすぎる回答がここ日本の早耳リスナーの間で話題となったのは記憶に新しいが、憧憬感と青春性の刹那、その姿勢はメジャーに移行しようが1ミリもブレておらず、数々の激しくも繊細なギター・メロディが胸を打つ。とりわけオープニング・ナンバー「透明雑誌FOREVER」は永遠のギター小僧に贈るアンセムだ! まだまだ未開拓であろうアジア・ロック・シーン全体を盛り上げるという意義もある1枚だろう。
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透明図鑑
空に沈める
アーティストのサポートや、クラシックのコンサートなど、キーボーディストとして幅広く活躍をする透明図鑑が、照井順政(siraph)との共作で完成させたソロ・アーティスト初作品となる"0th"シングル。本作には、変則的なリズムと継ぎはぎのような歌唱、楽器のように用いた吐息で個性が光る「毒煌々」、なんとも不気味なインタールード「まだらエラー」、無機質的で美しい音世界が広がる「誰も知らない」の3曲が収められている。本人いわく"感覚だけで書いた"という本作だが、そこには彼女がプレイヤーとして携わってきたクラシック、現代音楽、ポップス、ポスト・ロックなど、様々な音楽的エッセンスが自然と反映され、クオリティと独創性が非常に高い。夜をテーマにする1st作品が今から楽しみだ。
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ときめき☆ジャンボジャンボ
ECLAT
『ECLAT』、すなわち“輝かしい歓呼”。ときめき☆ジャンボジャンボの描く世界は、まさに喝采そのものだ。「祝福のパレード」で幕を開けると、多幸感がとめどなく溢れ疾走する。大胆で繊細なキラメキが情感豊かに空間を膨らませていく。彼らの創り出す世界は、驚くほどにドラマチックでノスタルジックなのだ。変則的で軽やかプログレッシヴ・ロックと、無邪気に跳ね回るポップ・サウンドが共存する世界。彼らにとっては、声も楽器と同じく音としての表現の一手段なのであろう。誤解を恐れなければ、彼らの奔放で貪欲なサウンドには、YESの「Heart Of Sunrise」を聴いた時の衝撃を感じた。音と音の繋ぎがするりと手を抜けて予想を裏切り、圧倒的な求心力を持って世界をユートピアへと変えてしまうのだ。音が消えた後残されている煌き。その余韻に浸る心地よさったらない。
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トクマルシューゴ
ポート・エントロピー
2004年にニューヨークのインディ・レーベルからデビューして以来、世界中で賞賛を集めるソロ・アーティスト、トクマルシューゴ。作詞作曲、演奏からミックスまで全てを一人で行うマルチな天才が放つ4枚目のフル・アルバム。たった一人で、まるで大所帯バンドのようなマジカルなポップ・ワールドを構築し、切なくも煌きに満ちたサウンド・トリップを生み出す。そのおもちゃ箱のようなポップなサウンド・メイキングと夜や都会の死角の一瞬を切り取る詩的な歌詞が調和すると、殺伐としていた、誰もが素通りしてしまうような景色が輝き始める。ここで紡がれる物語には、誰一人として登場人物がいない。目の前の景色とトクマルシューゴだけの世界。東京という都会を徘徊する一つの視点が描き出した、全く新しい物語。
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とけた電球
WONDER by WONDER
前作からレコーディングに参加していた横山航大(Ba)が正式加入して1年強経過。バンドの風通しの良さが1曲目の「トライアングル」からして窺える。各々の個性が爆発しているのに互いが互いを邪魔していない。絶妙なバランスの中、4人とものびのびと演奏しているのだ。歌モノの王道を行くポップ・センスとブラック・ミュージックに通ずるダンサブルなリズム感という両翼を広げたような「未来」と「DRAMA」があり、生身のサウンドで丁寧にドラマを描くバラード「焦がれる」があり。君は僕のもの......ではなく"僕が君のものになったら"と歌うヘタレなディスコ・ポップ「恋の美学」で締め。どこを取っても音がみずみずしく心と身体が自然に動く。これはライヴが楽しいだろうなぁ。
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とけた電球
STAY REMEMBER
中毒性の高いライヴで注目を集める"クラスにひとりはいそう"な男子3人組、とけた電球が新体制として初めてリリースする1st EP。"このままではいけない"とわかっていたのに変われなかった悔しさが滲む「覚えてないや」、ツイてなかった1日の終わりにそっと手を差し伸べてくれるようなスロー・ナンバー「日々のかけら」など、タイトルのとおり"記憶"にまつわる全5曲を収録している。メンバー全員が制作に関わり、丁寧に紡がれた優しく語り掛けるような歌詞と、岩瀬賢明(Vo/Gt)の透き通った歌声の相性は抜群。マンドリンクラブで出会ったという彼ららしいリズミカルなメロディや、キーボードがいいアクセントになっている。グルーヴ感も心地よく、リピートして聴きたい1枚。
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トゲナシトゲアリ
棘ナシ
東映アニメーション×agehasprings×ユニバーサルミュージック、3社合同の大型プロジェクトとして発足したTVアニメ"ガールズバンドクライ"。本プロジェクト発のガールズ・バンド、トゲナシトゲアリの2ndアルバムがすごい。ボカロ楽曲を思わせる膨大な言葉数とメロディの乱高下に、楽器隊のテクニカルなフレーズと、シーン屈指の難度を誇りつつ聴き手の胸に刺す楽曲の数々は、極上のエモーショナル・ロック・ナンバーばかりなのだ。アニメの挿入歌を中心に構成された本作は、アニメを視聴してから聴くことで様々なシーンが思い起こされ、より没入感を増して堪能できるはずだ。今年のシーンを代表する1枚として太鼓判を押したい。
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トゲナシトゲアリ
運命に賭けたい論理
東映アニメーションによる完全新作オリジナル・アニメ"ガールズバンドクライ"。同作の劇中に登場する5人編成のガールズ・バンド、トゲナシトゲアリが5thシングル『運命に賭けたい論理』をリリースした。アニメと連動するリアル・バンドは今やそう珍しくないが、本プロジェクト最大の特徴は、バンドを先に走らせて知名度を上げた状態からアニメが始まるという点。本作の音楽プロデューサーを務める玉井健二(agehasprings)が"極めて稀有な逸材"と太鼓判を押す理名(Vo)の力強いヴォーカルは本シングルでも遺憾なく発揮されている。彼女たちの"最新型"を存分に堪能することができる1枚。
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トップハムハット狂
Jewelry Fish
ネット発のラッパーとして活動するトップハムハット狂による、四季をテーマにしたコンセプトEP第3弾。朗らかな"春"の気配に淡い憂鬱を滲ませた『Sakuraful Palette』、"秋"の夜長に怪しげな狂騒が溶け合う『Watery Autumoon』に続き、夏編となる今作は、瑞々しく煌めく空と海のブルーに強い前進の意志が刻まれる。活動休止中のFAKE TYPE.の相棒、DYES IWASAKIと再び手を組んだ真骨頂のエレクトリック・スウィング「Mister Jewel Box」、17歳のトラックメイカー SASUKEを迎えたスタイリッシュな「Stress Fish」など、色鮮やかな風景を描く全6曲。時にトリッキーに、時にメロディアスに、独特のフローによって生み出される中毒性は唯一無二だ。
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トビウオ
魚夫の利
横浜発の5人組ピアノ・ロック・バンド、トビウオがライヴ会場限定で発売する2nd EP。ギターのタッピングと煌めくピアノ&ストリングスで冒頭から壮大な景色を作ってみせるTrack.1「Gravity Days」、ヒップホップ調のTrack.2「バイタルサイン」、エッジの効いたサウンドで空気を塗り替えるTrack.3「アンリミテッドヒロイン」、ライヴでの光景が目に浮かぶようなポップ・ソングのTrack.4「Hello Hello」――と多彩な全4曲。言ってしまえばそれらの色はバラバラではあるが、そこからは、自分たちの進化を信じてやまないバンドの前のめりな気持ちが窺える。広く世界を見渡しながら、大海を謳歌するための第一歩と言える作品。
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富田美憂
Violet Bullet
今年11月にアーティスト活動5周年を迎える声優 富田美憂が、2ndアルバム『Violet Bullet』をリリースした。約3年2ヶ月ぶりのオリジナル・フル・アルバムである本作には、神秘的なピアノのイントロから一転、スリリングな展開を見せるリード・トラック「Ever Changing Violet」をはじめ、ライヴで盛り上がり必至のコミカルなポップ・チューン「Sweet Sweet Sweat」や、自身が作詞を手掛けたギター・ロック仕立ての「Stellar」等、彼女の芯の強さや攻めの姿勢を表現した全10曲を収録。また、ヴィジュアル面でも声優ユニット Kleissisで富田が担当するメンバー・カラーでもある"紫"が前面に押し出されており、まさに彼女の軌跡が詰まった1枚となっている。
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豊永利行
C"LR"OWN
ゴージャスなホーン・セクションを迎えた華やかな表題曲「C"LR"OWN」で幕を開ける、豊永利行のメジャー1stミニ・アルバム『C"LR"OWN』。アニメ"デュラララ!!"のゲーム作品のタイアップ曲となった「Reason...」や「Day you laugh」など、今作ではアニメの世界観に寄り添うアダルトなサウンドでシンガー・ソングライターとしての新境地を開いた。大切な人と重ねる年月の愛おしさを綴ったラヴ・バラード「Valentine season」を始め、すべての働く人にエールを送る「メッセージ」、押しの弱い男の情けない夜をコミカルに歌った「僕の☆☆計画」など、曲ごとに表情を変えるバラエティ豊かな楽曲は、さすが役者出身のミュージシャンらしい表現力。
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トライアンパサンディ
パラノイアン"X"
トライアンパサンディはもともとキャリアを重ねたメンバーで結成されているだけあって、これまでの作品はきれいに"デジタル×ロック"を遂行していたように思う。だが今作は音楽を愛する心が爆発する、ティーンネイジャーさながらのフレッシュな空気がとめどなく湧き出るようだ。各楽器の肉感と遊び心のあるアイディア満載のシーケンスや打ち込みの音色が化学反応を起こし、そのテクニカルなサウンドを統率するのがG-YUNcoSANDYの歌である。過去最高に堂々と感情的に歌う彼女の歌がサウンドともよく調和することで、より一層バンドのグルーヴが生まれている。これまでにはなかったシンプルなバンド・サウンドやポスト・ロック風のリズムを取り入れたものなど、バンドのやりたいことやメンバーの感情に忠実な楽曲が揃った。
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トライアンパサンディ
Reflection"A"
ベーシストのRyo-Heyがサウンド・アレンジャーに転身し、新メンバーのMASAMUが加入したばかりのトライアンパサンディが、初作品から約1年4ヶ月振りの新作をリリース。前作で示した電子音×生楽器がせめぎ合うサウンドスケープは更にシンクロ率を上げ、G-YUNcoSUNDYの描く景色はより喜怒哀楽が豊かになった。ヴォーカルをバック・アップする許容力のあるアンサンブル――この進化は、初期衝動が詰まった前作からの1年4ヶ月間で、バンドとしての結束を強めたことを如実に投影していると言っていい。Track.4はまさしくバンドの結成から現在までの喜びを描いたもので、その真摯で遊び心溢れる純粋な音色に胸を打たれた。バンド初の全国ツアーも8月からスタート。トラパの快進撃はここからだ。
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トライアンパサンディ
PLANET of the TRIAMPERSAND
元GOLLBETTYのG-YUNcoSANDY率いる紅一点ロック・バンド、トライアンパサンディ。昨年12月に開催された下北沢SHELTERでの初ワンマンも大盛況だった彼女たちのデビュー作が完成した。バンド名は▲+&(トライアングル+アンパサンド)=I&YOU&MUSICなど“素敵な三角関係”という意味がこめられているとのことで、このアルバムもその名にふさわしいキャッチーでパワフルなグッド・ミュージックの結晶体。ポップ・ロックをベースにデジタル・サウンドやシンセが散りばめられたアンサンブルは遊び心に溢れており、曲によって様々な表情を見せるG-YUNcoSANDYの歌声は泳ぐようにメロディを辿る。思いのままに解き放たれてゆく5人の音色は実に痛快だ。
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虎の子ラミー
DRIP OF RAMMY
至極痛快なり。始動から10年目での満を持した初フル・アルバムにおいて、彼女たちはその類まれなるケダモノぶりをフルに発揮しているのだ。ノークリックで録ったという激烈な「限界突破(2023ver.)」、パクチーに対するヘイトをファンキーに綴った「ゲゲゲのパクチー(2023ver.)」、BMI 25以上の民たちから熱い共感を得るに違いない「バイバイポムニィ~デブよ大志を抱け~」、失恋女子への応援歌「くだらない男に捨てられたくらいで落ち込まないで」、奇想天外な斬新トリッキー・チューン「異世界転生バンドマン」、バンドのリアルを歌った「虎の娘、名はラミー」。そして、彼女たちのこれまでを描いた「歩み」と、これからを託した「パレードはつづく」。全編聴きどころしかない1枚かと!
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虎の子ラミー
予期せぬ事態と必然の園
新たなベーシストを迎えて新体制となった4人組ガールズ・バンドの2年ぶりの新作。バンドマンとして生きていく楽しさも厳しさも同居した1枚で、ファンキーなアレンジに乗せて盛り上がる前代未聞のパクチーdisパーティー・ソング「ゲゲゲのパクチー」から、内面の葛藤を曝け出す「Who are you?」、「1110」まで、曲ごとの感情の浮き沈みが激しく、虎の子と言いながらこれでもかと人間臭さが出ている。特筆すべきは、マザー・ヤナギ(Vo/Key)の歌唱力の高さと、演奏が感情の起伏に寄り添ったアレンジになっていること。20代前半でキャリアも浅いバンドながら、堂々たる貫禄を感じてしまうのはそんなところからだ。ラストの「太陽はまた昇る」は、すべてが報われるような清々しい気持ちにさせてくれる。
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鶯籠
FLY HIGHER AGAIN
東京 鶯谷発のライヴ・アイドル、鶯籠のメジャー・デビュー・シングル。表題曲「FLY HIGHER AGAIN」は、作編曲をRENO(ex-ViViD)、ドラムのアレンジを淳士(ex-SIAM SHADE/BULL ZEICHEN 88)、ベースのアレンジをIKUO(BULL ZEICHEN 88/Rayflower)が務めている。錚々たるメンバーによる、アグレッシヴでテクニカルなアナログ・サウンドと、そこへ乗せてキャッチーなメロディを歌い上げる5人の歌声は、一聴の価値ありだ。しかも、作詞は船橋市非公認ご当地キャラ、ふなっしーが担当しているというから驚き。メジャー・シーンに羽ばたいていく鶯籠を歌った力強い歌詞は、あのキャラクターとのいい意味でのギャップも楽しめる。
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戸渡陽太
I wanna be 戸渡陽太
少年性を残したハスキー・ヴォイスがまず他にない個性として耳に飛び込み、そこで歌われる自分と世界との間に起こる軋みや、その中で見つけていく希望のかけらにハッとする。中でも希望への手掛かりを見つけるような「Beautiful Day」で始まることが象徴的だ。サウンド・プロデュースに深沼元昭(PLAGUES/Mellowhead/GHEEE)、高桑圭(Curly Giraffe)、mabanua(Ovall)、阿部芙蓉美を迎え、彼らのオルタナティヴな感性も相まって、テン年代の新たなシンガー・ソングライターとしての音像を作り出している。透明感とサイケデリアを感じる「Nobody Cares」、ジプシー音楽的な「青い人達」、阿部芙蓉美書き下ろしの「グッデイ」の"ここにいる"ような弾き語り一発録りなど、様々な角度から戸渡の核心が見えてくる12曲。
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戸渡陽太
孤独な原色たち
福岡を拠点に活動を続けるシンガー・ソングライターの2ndミニ・アルバム。力強いバンド・アンサンブルで固めた「世界は時々美しい」、クールに熱くなるスウィング調の「探せ」、ダンサンブルなビートが噛み合った「Y」など、未だ試行錯誤中といった感じのアレンジが楽しめるのも、揺るぎないヴォーカル・スタイルがあるからこそ。同時に、ともすれば一本調子に聴こえがちな武骨な歌声をどう活かしていくのか探っているようにも聴こえる。"だから今変わろうとしてる僕の心を誰か見てよ"と速射砲のような言葉とギターで歌う真骨頂「ギシンアンキ」が剥きだしの戸渡陽太を感じられて興味深い。観るたびに成長しているライヴをぜひ体験して欲しいアーティストだ。
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戸渡陽太
プリズムの起点
福岡在住22歳のシンガー・ソングライターのデビュー作。いきなり飛び出すアコギのストロークとまくし立てるハスキーボイスに圧倒されたまま曲を聴き進めると、"まあ落着きなよ"とばかり流麗なフィンガーピッキングから羽ばたくような展開を聴かせる「SHIKISAI」に心奪われる。「SOS」では自信に満ちた歌声で、かのファンク番長と真っ向勝負。壮大なバラード「ゼンマイ仕掛けの世界」、親しみやすいフォーク兄ちゃんふうのシャッフル曲「ホントの事」と、たった5曲の中に目一杯のパーソナリティを詰め込んでいる。これからどんな方向性に絞っていくのか、文字通り"プリズムの起点"となっている作品だ。個人的には冒頭の「マネキン」で鈍く光るアングラ感を強く推したい。
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堂島孝平
A.C.E.2
2012年はコンスタントなリリースとライヴ活動、初恋の嵐のゲスト・ヴォーカルとして参加するなど、例年にも増し精力的な活動を繰り広げた堂島孝平。その勢いを示すように届けられた新作『A.C.E.2』は、前作『A.C.E.』から10ヶ月というインターバルでリリースされる。“A Crazy Ensemble”の頭文字を取って名付けられたこのプロジェクトは、様々なユーモアとアイディアを詰め込んだ宝箱のようだ。極力音を削ぎ落としたアレンジと、キャッチーで人懐こいメロディが煌びやかに響く。日常のとあるワン・シーンをピンポイントでフォーカスする歌詞は、ありふれた風景に魔法をかけるようにファンタジック。これぞポップ・ソングでしか生み出せない力ではないだろうか。
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ドシードシー
デイライトライトの旅の途中
"新人アーティスト"ドシードシーが満を持して完成させた1stミニ・アルバム。自分の気持ちを歌うことが多かった彼が初めてリスナーの背中を押したいと考えながら作った"ギリギリの応援ソング"という新曲「サーチライト」(Track.1)に加え、以前からのファンにはお馴染みの曲もリアレンジして収録。エモいギター・ロック、EDM、ピアノ・ロック、ピアノ・バラードなど、バンド・サウンドを基調としながら多彩なアレンジを楽しませ、全5曲を貫いている生々しい歌声が温もりとともにドシードシーらしさを印象づけている。中途半端に上手いシンガーの歌にうんざりさせられることが多い今の時代、この人間臭さと存在感は貴重と言えるかも。
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