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LIVE REPORT

Japanese

sora tob sakana

Skream! マガジン 2019年12月号掲載

2019.11.23 @harevutai

Writer 宮﨑 大樹

今、様々なアートやカルチャーを発信する街へと変貌を遂げつつある池袋。結成12年目のロック・バンドと10代のガールズ・グループという、歳が離れ、形態も異なる2組のツーマン・ライヴには、この池袋という場所は相応しい土地だったのかもしれない。

2019年11月23日、sora tob sakanaの対バン・イベント"sora tob sakana presents. ~月面の扉 vol.9~"が、池袋にオープンしたばかりのライヴ劇場、harevutaiにて行われた。今宵sora tob sakanaが"月面の扉"を開いて出会うのは、数々のアニメのタイアップ曲を手掛けるロック・バンド、岸田教団&THE明星ロケッツ。sora tob sakanaから見れば、彼らは同じレーベルの先輩ということになる――とは言っても、この日、汗だくになってパフォーマンスをした岸田教団&THE明星ロケッツがライヴへと臨む姿勢は、"先輩の威厳を示そう"といった先輩然としたものではなく、まるで我が子の運動会でいいところを見せようと、親子競技で奮闘する保護者のようであったことは自他共に認めるところであろう。

"岸田教団&THE明星ロケッツです! 楽しい夜にしましょう、よろしく!!"と、ichigo(Vo)のひと言を合図に、TVアニメ"ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン"OPテーマ「天鏡のアルデラミン」からライヴがスタート。様子見なし、初っ端からバンドの生み出す熱波のようなエネルギーがフロアを吹きつけていく。これを受けて、バンドのファンはもちろんのこと、sora tob sakanaのファンも、見る見るうちにシンガロングに参加していく様は実に爽快だ。はやぴ~の攻撃的でエッジの効いたギターと、ichigoの力強くも艶やかな歌声が、このバンドの持つ大きな魅力であるのはもはや言うまでもない。しかしながら、岸田の躍動感のあるベースと、みっちゃんのパワフルでいて隙のないドラム、そして、サポート・メンバーのT-tsuがカラッとしたサウンドでかき鳴らす安定感のあるリズム・ギター、これらが三位一体となったリズムの土台があまりにも頼もしく感じられた。

ichigoは"ざっとオサカナ(sora tob sakana)ちゃんたちの倍(の年齢)です。いつもは他のやつらに比べて爪あとを残して帰ってこようみたいな気持ちが、俺たちにあるわけじゃん? でもね、今日は違うの。ここを最高潮に温めて、温めて、温めて、オサカナちゃんに渡そう、みたいな。マジ全力だから!"と、普段とは違う気持ちでこの日を迎えたことを明かす。そんなichigoの言葉に応えるように、グっと温度の高まったフロアへ向けて、岸田が"僕らがいつもやっているアニソンではなく、僕らのホーム・グラウンドである東方(東方Project)でもなく、ただ久しぶりにやりてぇなという気持ちになった曲をやります"と、「セブンスワールド」をぶつけていく。「Literalworld」、「暁を映して」と立て続けに攻め曲を並べたあとに届けたのは、エモーショナルなロック・バラード「11月」。その場の雰囲気を一転させ、多彩な引き出しでオーディエンスを魅了した彼らには貫録のようなものを感じた。

この日のイベントを"運動会"に喩えた岸田は、"優勝はこのあと(sora tob sakana)でいいから。準優勝でいいですよ"と笑いを誘う。そうしてMC巧者っぷりも見せつけたバンドは、ここから一気にゴール・ラインへ向かって駆け抜けていき、ichigoが"ありがとう準優勝!"と高らかに声を響かせた。大歓声の中、岸田が"俺たちにはまだ必殺の時間が残っております"とsora tob sakanaをステージに招き、特別な一夜に相応しいコラボレーションとして「星空ロジック」を披露。sora tob sakanaのメンバーが両手を振り上げて、ロック・バンドのノリで客席を煽る珍しい光景を見せる。これに呼応した両者のファンの一体感が最高潮となった景色は、この日のハイライトのひとつと言えるだろう。最後は全員で一斉にジャンプをしてスペシャルなコラボを締めくくると、大きな拍手が送られた。

暫しのインターバルのあと、お馴染みのSE「whale song」に乗せて4Kの大型LEDに映し出されたのは、宙を優雅に泳ぐ鯨と小さな魚たち。美麗な映像にうっとりとさせられるとともに、このharevutaiというライヴ劇場が、sora tob sakanaの持つ世界観をより増幅することができる、恰好の場所だということに気づかされる。そして、これからsora tob sakanaが見せてくれるであろう、数多の幻想的で美しい世界たちを想像し、期待に胸を膨らませた。

そんななか登場したsora tob sakanaが披露したのは、TVアニメ"ハイスコアガール"第1期のオープニング・テーマに起用された「New Stranger」。数多くのアニメとタイアップした実績を持つ岸田教団&THE明星ロケッツと対バンする1曲目を飾るには、うってつけの1曲だった。曲の表情とリンクするように映し出された鮮やかな色彩の中で、跳ねるように舞うsora tob sakanaの3人。フロアを温め、最高の舞台に仕上げて彼女たちにバトンを繋いだ岸田教団&THE明星ロケッツが発したエネルギーに触発されたかのように、彼女たちの歌声は、いつもよりも熱を帯びていたように思う。こうやって対バンのたびに何かを吸収して、新たな表現や成長した姿を見せてくれるのが"月面の扉"の醍醐味と言えるだろう。続く「夜間飛行」では、星や宇宙空間、都会の夜景を空撮した映像などが映し出されていく。彼女たちの音源を聴いて浮かぶ情景がそのまま再現されたような映像と、ライヴならではの生感のある歌唱、そして、時にキレ良く、時にしなやかに舞うダンスが相まって生まれた極上のパフォーマンス。その惹きつける力、引力のようなものは、その場でメモを執る筆者の身体が自然と動いてしまうほどだ。観客にもその作用が働いたことはもちろん言うまでもなく、それはこの曲で発生したシンガロングや、間奏のダンス・パートで上がった歓声の大きさが物語っていた。

中盤で、最新シングルから「パレードがはじまる」、10月に配信された「流星の行方」と、新曲を続けたあとに届けられたのは、新体制では初お披露目となる「アルファルド」。スクリーン中央に映し出されたステンドガラスの中央に眩い光が差し込む画は、優しく神秘的な曲と、彼女たちのイノセントな歌声を際立たせる。それはまるで神話の1ページを切り取ったかのような、美しく、神々しい光景に感じられた。余韻の残るなかでのMCを挟み、ライヴは終幕へ向けて進んでいく。sora tob sakanaの王道である、ノスタルジックで、情感たっぷりの「秘密」を披露すると、続けて最新シングル表題曲「flash」のイントロが流れた。エモーショナルで疾走感のあるバンド・サウンドとレトロなゲーム音楽の融合、そして3人が紡ぎ出す感情を揺さぶるメロディと胸を締めつける歌詞が、この曲の魅力だと言える。加えて、ステージで見せた「flash」での、しなやかな動きでひらりひらりと舞い踊る様からは、柔らかに、優しく包まれるような感覚を覚え、音源を聴いているときとはまた違う、新たな曲の魅力を発見することができた。

岸田教団&THE明星ロケッツの作り上げた燃え滾るような空間、sora tob sakanaの幻想的な世界観を堪能することができたこの一夜を締めくくるべく、最後に披露されたのは「ささやかな祝祭」。今夜の成功を祝うような、幸福感のあるサウンドが会場を温かく包み込んでいく。すると、舞台袖からは、ichigoと岸田が姿を見せ、再びのコラボレーションへ。歌でのコラボだけなく、ダンスにも参加し会場を沸かせた。

最高の準優勝を飾った岸田教団&THE明星ロケッツの持つパワーや熱量を身体で感じ、sora tob sakanaはこれからどんな進化を遂げるのか。その答えは、12月7日にMomを迎え、10回目の節目として行われる"sora tob sakana presents. ~月面の扉 vol.10~"で、明らかになるかもしれない。


[Setlist]
■岸田教団&THE明星ロケッツ
1. 天鏡のアルデラミン
2. ストライク・ザ・ブラッド
3. セブンスワールド
4. Literalworld
5. 暁を映して
6. 11月
7. ストレイ
8. Reboot:RAVEN
9. GATE~それは暁のように~
10. 星空ロジック

■sora tob sakana
SE. whale song
1. New Stranger
2. 夜間飛行
3. タイムマシンにさよなら
4. パレードがはじまる
5. 流星の行方
6. アルファルド
7. 秘密
8. flash
9. ささやかな祝祭

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