BiSHの12ヶ月連続リリース第9弾シングル。表題曲「UP to ME」は、国立科学博物館 特別展"毒"のタイアップ・ソングということで、歪んだ歌とサウンドで毒をまき散らすような印象を受ける仕上がりに。もがき続け、足掻き続けながら前へ前へと進んでいく意志を感じさせる言葉の節々が、彼女たちがこれまで歩んできた道を想起させる。カップリングの「YOUTH」は、メンバーのセントチヒロ・チッチが作詞だけでなく作曲まで手掛けた王道のメロコア・ナンバー。"スピーカーの中生きている/僕等の命たち"という歌詞は、解散を控えた彼女たちが歌うからこそグッと来るものがある。チッチの中にある熱さ、優しさを、隣で一緒に歩いてきたメンバーがそれぞれの個性を発揮しつつ歌う様もエモーショナルだ。
ケースにヒビ割れの特殊加工を施した"破壊盤"でも話題の、メジャー4thアルバム。"GOiNG TO DESTRUCTiON"のタイトルにも表れている通り、本作のキーワードは"破壊"。ひと言で"破壊"と言っても、迷いや焦燥感に立ち向かって内外の壁を壊して進んでいく意志だったり、新たな創造のための破壊だったり、様々な解釈で捉えられた"破壊"が本作に潜んでいるように思えてならない。BiSH節全開の「CAN WE STiLL BE??」から始まり、アユニ・Dが作詞した、人肌のような温かみを持つ「STAR」で締めくくるまで、全14曲の重厚な1枚に仕上がった。メンバーの個性を生かしたソロ活動も増え、たくさんの刺激を貰ってアーティストとして成長をしていった個々の表現力にも注目。
当初はシングルのリリースを予定していたが、コロナ禍による現状を見据えて新たに曲を制作したというメジャー3.5thアルバム。壮大なストリングスで幕を開ける「LETTERS」は、そんな現状をメンバーと共に耐え忍んでいる清掃員(※BiSHファン)に向けて"あなたいるこの世界守りたいと叫ぶ"とストレートに想いを綴ったまさに手紙のような1曲に。「I'm waiting for my dawn」では、暗い話題の多い日々の夜明けをじっと待ちわびている心を歌った歌詞と、メンバーの歌唱をじっくりと受け取ってほしい。東京スカパラダイスオーケストラのホーン隊を招いた「ロケンロー」では、スカパラとの化学反応と彼女たちの新境地を堪能することができる。こんな時代だからこそ生まれた、こんな時代に必要な1枚。
タイトルの"CARROTS and STiCKS"は日本語で"飴と鞭"の意。本作では、第1の先行配信EP『STiCKS』の持つ凶悪さと、第2の先行配信EP『CARROTS』の持つ爽快さを1枚に収めることで、アルバムの中に赤と青のような強いコントラストが生まれ、BiSHの持つ二面性を見事に表現している。この1枚を聴くことで、清掃員(※BiSHファン)の中でも意見が分かれる"BiSHらしさとは何か"という核心に近づくことができるかも。さらに、ライヴの新たな定番となることを予感させる曲や、どことなく1stアルバム時代の匂いを感じさせる曲など、EP収録曲以外にも粒ぞろいの新曲が揃う。ボーナス・ディスクには2018年のシングル曲などが収録されており、今の彼女たちのすべてが詰まった作品と言える。
全12ヶ所の全国ツアー"BiSH pUBLic imAGE LiMiTEd TOUR"から、5月の横浜アリーナ公演[BiSH "TO THE END"]までの舞台裏に完全密着したドキュメンタリー作品。ライヴ前後の楽屋や打ち上げといった場で覗かせる、ステージやオフィシャルな場での表情とはまた違った面が見られるのは、ファンにとって嬉しいところだろう。それも垣間見えるのは、いわゆる普通の女の子に戻る瞬間というより、悩み、葛藤したり、メンバーを慮ったり、時に真っ向からぶつかる、それぞれが徹頭徹尾BiSHである姿。とにかく真面目、でもって全然器用じゃないし、それを言い訳にしない。そんな彼女たちの在り方が記録されている。BiSHの歌が持つ肯定感や、ある種のパンクイズム的なものの説得力は、彼女たち自身によるものだとわかる内容だろう。
2018年1月から全国12ヶ所で開催した"BiSH pUBLic imAGE LiMiTEd TOUR"を経て、5月22日、自身最大規模となる横浜アリーナでのワンマン[BiSH "TO THE END"]を行ったBiSH。チケットは即日完売し1万2,000人の観客と迎えた大舞台は、BiSHが立たなければならない舞台であり、通過点のひとつだったという。今回は、生バンドの演奏を取り入れたり、アリーナ会場ならではの舞台セットや舞台装置を用いたりすることはせず、6人だけでステージを作り上げた。アンコール含め、全22曲。全力で走り、会場をしっかりと掌握しつつ、また観客の圧倒的な熱量と化学変化を起こしながら、ソリッドで、リアルで、現在のBiSHの等身大をぶつけるステージとなった。新たな始まりへの余韻とイントロを感じさせる濃厚な一夜が収録されている。
『Life is beautiful / HiDE the BLUE』の発売日同日にゲリラ・リリースされた2曲入りシングル。攻めに攻めたタイトル、曲調、歌詞に、型破りなパフォーマンスを続けてきた初期BiSHの姿を思い出す人も多いのでは。だが当時と違うのは、彼女たちのヴォーカルが、必死に食らいつくというより堂々としていること。ダーク且つヘヴィでシンフォニックな楽曲でありながら爽快感が生まれているところに、BiSHのポップ・アイコンとしての才も垣間見る。変拍子や難易度の高いフレーズが多数組み込まれたポスト・ロック的アプローチのカップリングは、サウンド的にも新機軸。声を素材的に使う場面もあれば、妖艶にメロディをなぞるシーンもある。単なるイロモノ盤で終わらせないところにプロデュース・チームの手腕が光る。
前作『PAiNT it BLACK』から3ヶ月というインターバルでリリースされる、タイアップ曲2曲が収録された両A面シングル。「HiDE the BLUE」は、若者ならではの葛藤や悩み、青春が綴られた、ストリングスも鮮やかなロック・ナンバー。歌詞の内容やタイトル性など、「PAiNT it BLACK」と双子的存在の楽曲とも言える。「Life is beautiful」は、"愛してるよダーリン"や"幸せ感じたいの"という慈しみに満ちた言葉も印象的なミディアム・ナンバー。切なく温かい空気感のなかで、普段は見せない素朴で柔らかい表情を見せる6人のヴォーカルが際立つ。淡々としつつも叙情的なギターのリフレインも楽曲の大きなアクセントだ。タイアップ作品とのコラボ効果で、BiSHの持つ清純性を楽しめる。
元EMPiREメンバーにより結成されたExWHYZの1stアルバム。本作では、ライヴのSEに使用される「xYZ」から繋がる「D.Y.D」(いずれもyahyelのMiru ShinodaとKento Yamadaによるプロデュース)で、ExWHYZとはなんたるかをまずは見せつける。そこからEDMの「STAY WITH Me」でブチ上げたり、アシッド・ハウスの「Obsession」で攻めたり、バラードの「あいしてる」を挟んだりと、とにかく隙がない。全体的に大人びたメンバーの歌唱も聴きどころだ。ダンス・ミュージックをさらに特化していった本作からは、EMPiREからの進化も、ExWHYZとしての新生も同時に感じさせる。全A面アルバムと言っても過言ではない名盤だ。
ヘイトを撒き散らす四つ打ち高速チューン「I don't care」、ちょっと抜けているけど明るさがある、そんな憎めない人間性が出た「Hey!Hey!」、パリピ精神が顔を覗かせる「FLY! SiNG! CRY! TRY! SMiLE!」など、作詞者の個性が表れるカラフルな本作。その一方で「To continue」では"続けること"への決意を滲ませ、本作のタイトルと初MV曲でもある大切な1曲「アカルイミライ」にもリンクする「RiNG to the BRiGHT FUTURE」では、出会いと別れ、そしてその先を歌うシリアスな面も。音楽的には、ストリングスの効いたエモいロック・ナンバー「Chase your back」や、軽快なギター・リフから幕を開ける爽やかなポップス「Haggling」といったアルバムならではのジャンルの幅も持たせている多彩な作品だ。
今年2021年1月4日に自身最大規模の東京国際フォーラムホールAにて開催されたワンマン・ライヴの映像作品。本公演の最大のポイントは、なんと言っても、持ち曲である全39曲をノンストップで駆け抜けるセットリストだろう。タイトル通り、まさに"BREAKS THROUGH the LiMiT"="限界突破"をして、現在進行形で殻を破っていく姿には胸が熱くなるし、フラフラになりながらも久しぶりにエージェント(※ファン)に会えた喜びを爆発させて笑顔を絶やさないあたりには、リスペクトさえ感じさせる。気迫のパフォーマンス、ダンス・ミュージックとロックの融合、スタイリッシュなステージ演出、現在地点のEMPiREをすべて詰め込んだファン必携の作品であり、入門編としても強く推奨したい1枚。
サビのラップで新たな扉を開いた「Have it my way」と、EDM調ながらも幻想的な情景の浮かぶ「WE ARE THE WORLD」、そして今のEMPiREのモードを反映させたように"さらなる高みを目指して/追う旅 行くさ!"とエモーショナルに歌い上げる「A journey」という、トリプル・リード・トラックを収めた2ndフル・アルバムが完成した。2019年のリリース作品では、エレクトロ、ダンス・ミュージック、ロックが融合した、ひとつの音楽の形を見いだした印象のある彼女たち。本作は、あえてその延長線には限定せず、"和"を感じさせる「きっと君と」や、キラキラしたサウンド感の「曲がりくねった道の」など、随所にチャレンジの姿勢が窺える意欲作だ。