ライヴハウス・シーンで注目を集め始めている北浦和の4人組、"アナバン"ことANABANTFULLSが結成から3年、満を持してリリースする初の全国流通盤となるアルバム。"グルーヴィ・ロック・バンド"と自ら掲げるとおり、いわゆる踊れるロックが彼らの身上。しかし、そこに加えた汗と涙、センス・オブ・ユーモア、そしてこれは不世出のヴォーカリスト、安田コウヘイによるところが大きいと思うのだが、ロック・バンドに不可欠なワイルドな魅力が彼らの存在を際立たせている。「Girls On Fire」(Track.2)のどこか歌謡曲っぽいメロディや、「Samba hokki」(Track.7)のサンバのリズムといった変化球もお手の物。ダンス・ビートに頼らず、胸に迫る歌メロで勝負した「ターンブルー」(Track.3)も聴きどころだ。
軽快で、リラックスしたギターのカッティングと気持ち良く身体を揺らすようなビート&コーラスの「Party All Night」でスタートし、19歳の現在のリアルな心境を綴った伸びやかなポップ・チューン「19」や、アコースティックからパンキッシュな曲、Akari Dritschlerによる内なるエモーションを自由に解き放っていくヴォーカルが冴える「Caught Up in Time」など幅広い曲が揃う。メジャー初アルバムの今作は、高校生の頃から5人で育んできたキャッチーでポップなロック・サウンドを、さらに一歩推し進めて繊細なアレンジを施し、今の想いをエヴァーグリーンなメロディとサウンドで包み込んでいる。メンバー全員が20歳になる2020年。その記念碑的な美しくまばゆいアルバムだ。
a flood of circle、クリープハイプなどのプロデュースや、様々なアーティストのサポート・ギタリストとしても活躍している奥村大(Vo/Gt)が2002年に結成した轟音オルタナ・ロック・バンド、wash?。彼らが前作から1年4ヶ月ぶりにリリースする8thアルバムは、誰彼構わずケンカを売っていたような前作から一転、奥村いわく"歌うアルバム"となった。パワー・ポップのTrack.3「ガールフレンド」を始め、やるせないムードも漂わせながら、シンプルなロックンロールの数々が持ち前のポップなメロディの魅力をアピール。Track.4「baby baby」はwash?流のバラードと言ってみたい。そして、ラストのTrack.7「ナイトミュージック」では、心機一転、前に進んでいこうというエネルギーをリスナーと共有する。