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INTERVIEW

Japanese

wash?

2016年09月号掲載

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Member:奥村 大(Vo/Gt) 河崎 雅光(Ba)

Interviewer:山口 智男

a flood of circle、クリープハイプなどのプロデュースでも知られる奥村大(Vo/Gt)が2002年に始めた3人組、wash?。彼らが昨年5月にリリースしたアルバム『PURE CURE SURE』を引っ提げ、約半年に渡って行ったツアーは、11月2日にwash?史上最大規模のワンマン公演で大団円を迎えた。そこから10ヶ月、彼らがリリースする8thアルバム『SPLASH』は、これまでどおり90'sオルタナをバックボーンとしながらも前作とはまた雰囲気の違う作品になっている。そんな新作について、奥村と河崎雅光(Ba)がメール・インタビューに答えてくれた。

-前作『PURE CURE SURE』(2015年リリースの7thアルバム)リリース後のツアーは、wash?史上最大のものとなり、ツアー・ファイナルの会場キャパもこれまでで一番大きいものでした。前回のツアーでは、どんな手応えを感じ、どんな成果を残せたと考えていますか?

奥村:ツアーでは初めて行く場所、初めて会う人、初めて見る人、そういうときにしか得られない一目惚れのような感覚と、いつもの場所の自分の背中を信頼してあずけられる感じが交差して飽きなかったです。飽きないっていうか貪欲になりました。初めましての人が結構多かったから、敵を味方にするっていうか、無関心に分け入って最後にはお互い熱狂を分かち合うあの感じが、どの場所でもそれぞれのやり方でできたってのは確実に3人の自信になったと思います。ツアー・ファイナルは、ずっとwash?を応援してくれてる人たちへの恩返し。"おめでとうみんな。あんたが自分のことのように応援してるバンドがズルもドーピングもせずにここまで来られたよ。全部あんたの行動言動の積み重ねが成し遂げたことだよ"っていう嘘偽りない感謝の宴です。あんな幸せな空間をいつかまた味わいたいけど、あればっかになったらきっとwash?はすぐダメになる(笑)。

河崎:愛を感じたし、それに応えたいと思いました。そして身体がひと回り大きくなりまた。

-前作のツアーがファイナルを迎えるころには、新作のアイディアはすでにあったそうですが、今回の『SPLASH』はいつごろからどんなふうに形にしていったんでしょうか?

奥村:曲作りはいつもしているんですけど、俺はとにかく飽きっぽいからどんどん新しいものに惹かれちゃうんですよ。だからいつもどおり俺か河崎がネタを持ってきて、3人でセッションして育っていった曲が生き残っていくんです。2票入らないと却下されるので、水面下では必死です。俺だけが気に入ってる曲を無理矢理推して入れることもあるけど、今回はそれはないです。

河崎:1月からストイックに3人で作りました。ANDY'S STUDIO(※下北沢のリハーサル&レコーディング・スタジオ)にたくさん予約して。

-ミッドテンポの演奏がじわじわと熱を帯びていくTrack.1「シーソー」からガツンとした印象の曲が並び、聴き応えのあるアルバムになったと思います。作り始めたときにはすでにアルバムの全体像や、こんな作品にしたいという方向性は決まっていたのでしょうか?

奥村:最初に作風やコンセプトを考えるとだいたい失敗するので、何曲か出揃ってからなら多少は考えることもありますが。そういうところで言えば、今回は"歌うアルバム"になるかもねって話はよく3人でしてた気がします。

河崎:わくわくドキドキしたい。これはいつも一緒。

-ライヴで一度も披露していない曲だけでアルバムを作るのは、今回初めてだそうですね。それは何か考えがあってのことですか? それとも偶然? 観客の反応をライヴで確かめたわけではないという意味で、今回のアルバムは、それを買った人がどう反応するのかいつもより楽しみなのでは?

奥村:そのへんはたぶん河崎のアイディアですね。俺は曲ができた時点でライヴでやりたくなるので。河崎や杉山(高規/Dr)は、ちゃんとやりどきの戦略を錬れるんですよ。今回は特に曲作りに集中したかったので、そのあたりはふたりに任せました。いいバランスなのではと思います。

河崎:偶然であり、必然。ワクワクしてます。

-前作が、誰彼構わずケンカを売っているような苛立ちに満ちた作品だったことを考えると、今回はポップ且つストレートなロックンロールを追求した作品になっていると感じました。聴きようによってはパンク・ロックっぽいとも言えるんじゃないかと思うのですが、ご自身ではどんな作品になったと?

奥村:語弊を恐れず言えば、俺自身は自分がやってるものは常にパンクもしくはパンク的背景があると思っています。そういう音楽に影響を受けてきたし、逆に言えば音楽のそういうところに惹かれてきた。俺の腹の中にはいつでも理不尽に対する怒りややるせなさはあるけれど、それをいつも表に出すような人間ではない。どうしようもない悲しみにさえも、またはどうしようもないからこそそこにユーモアは潜んでるって体感としてわかってもいます。怒っていても笑っていることはあるし、微笑んでいても怒ってはいるだろうし、受け手にとってのストレートかどうかは俺には判断できませんが、俺ら3人の今のモードに対して真摯に向き合っているという意味ではストレートだと思います。でもストレートというのはあまり好きな評価ではないです(笑)。シンプルだけど、ストレートではいけない。俺らはいつもそんな感じです

-ストレートな印象の中でも曲ごとに変化をつけていますが、ギターをかき鳴らすイントロから一転、テンポを落とすTrack.4「baby baby」はwash?流のバラードと言ってもよいのでは? こういう曲は、wash?の中だと珍しいものなのでしょうか? 今回、「baby baby」を収録した意図は?

奥村:良い曲だし、俺は好きだけどふたりはどうかな? と思ったら意外なほど気に入ってくれたので入れました。

河崎:歪みだけがwash?じゃないよと。

-今回、新しいことを試した、あるいはこれはwash?にとって新しいタイプの曲だという手応えがある曲はありますか?

奥村:自分ではあまりわからないですけど、「シーソー」と「baby baby」は珍しいかもしれないですね。今回、全体的にドラムの鳴り方をかなり追求しました。俺の中にある音でも、どうやったらそうなるのかわからないところをエンジニアの池田(洋/hmc ※下北沢のレコーディング・スタジオ)君とテックで入ってくれた安部川"minzoku"右亮(※猫騙アシュラシンドロームのドラマー)が深いニュアンスまで理解して助けてくれました。ふたりがいなかったらここまで踏み込んだ作品にはできなかったと思います。

河崎:全曲、手応えしかありません。