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INTERVIEW

Japanese

Ulon × 篠塚将行(それでも世界が続くなら)

2021年05月号掲載

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Ulon:イブキナリサワ(Gt/Vo) スズキリョウヘイ(Gt) マエジマハヤト(Ba) うえのまりん(Dr)
それでも世界が続くなら:篠塚 将行(Vo/Discord Gt)
インタビュアー:吉羽 さおり

-うえのさんの勘も同じような感じですか。

うえの:私はバンドを始めるまでは、例えば、BUMP OF CHICKENとか有名なバンドしか知らなかったんです。ライヴハウスにも行ったことがなかったし、正直バンドするようになってからも全然いいと思うバンドを観たことがなくて。でも、それせかを初めて観たとき、すごい衝撃を受けて、かっこいいな、一緒にやりたいなって思いました。

イブキ:プロデュースしてほしいというより、一緒に音楽をやりたいなって思ったんですよね。

マエジマ:憧れみたいな感じだよね。

篠塚:そう言われると照れますね。

-それが2年前くらいの出来事ですね? 今回は1stアルバムということでまずどういうところからスタートしたんですか。初期段階から、篠塚さんも関わっている感じですか。

篠塚:そうですね。アルバムを作るために曲を作ることは、やめようというのはありました。例えば戦略的なCDの出し方だったり、タイミングを優先して作ったりすると、このバンドは良くないだろうなというのは感じましたね。あくまで芸術的な観点で、いいものが生まれたら、それがアルバムになったらいいなと思っていたんです。例えば、1曲目の「生きる意味なんて」という曲は、まりんちゃんが失踪したことがあって。そのとき、まりんちゃんを待つためにドラム抜きで、3人でライヴをしていた時期があったんですよね。それならアコギの弾き語りでもいいと思うんですけど(笑)。3人だけで結構な本数をやっていたよね?

マエジマ:2ヶ月くらいやってましたかね。

-観た人は驚きますね、ドラムのいないバンドなのかなと。

篠塚:これはバンドなのかなんなのかって、初見の人は意味がわからなかったと思いますね。イブキはライヴ中に、"俺はまりんちゃんを待ってる"ってことを言うんですけど、観ている人は誰のことなんだろうって思っていただろうし。

イブキ:はははは(笑)。

篠塚:でも、僕はすごく感動してたんですよね。そのときにまりんちゃんのために作った曲がこの「生きる意味なんて」で、生きる意味なんてなくてもいいんだよっていう曲で。まりんちゃんは迷ってるかもしれないけど、バンドやろうやって待ってたと思うんですよね。

-そういうドラマがあったんですね。まりんさんも風の便りでじゃないですが、3人でステージに立っているというのは知っていたんですか。

うえの:みんなすごく心配してくれていたんですよね。連絡もないし、もしかしたら死んじゃったんじゃないかとか......。

マエジマ:ひとり暮らしだったから本当に心配だったんですよ。

篠塚:僕も話を聞いていたので、"まりんちゃんがいない間はサポートとか入れてやるの?"って聞いたら、イブキは絶対入れないですと。"うちのドラムはまりんちゃんだけなので"って言うんですよね。この子たちは、音楽じゃなくて、この4人でバンドがやりたいんだなって感じたし。それぞれお互いのことが好きで、音楽を良くしようというのがないわけじゃないですけど、それは優先順位としては2番目なんです。1番は、この4人が一緒にいて楽しい時間を過ごす、青春を送れるかどうかというか(笑)。友達でいられなくなっちゃうんだったら、音楽やめてもいいっていうスタンスだと思うんです。

-そういう思いだからこそ、歌には真摯な思いが綴られていて、歌の対象も"みんな"でなく"あなた"なんでしょうね。あなたに聴いてほしいし、あなたを笑わせたい、そういうのがまっすぐに伝わる音楽だなって思います。

イブキ:今回のアルバムで歌う意味が変わったのはあると思います。今までは自分のことばかり歌っていたんです。そうじゃなくて、誰かに歌いたいなって考えたんですよね。歌詞を見てみると、これは俺自身も言ってほしい歌だなとも思うし。

篠塚:アルバムは、ひとつひとつにそういう物語があって。物語というか、4人が過ごした時間が、イブキの目線で曲になっている感じです。たぶんこういう言葉を使うと誤解があるかもしれないですけど、Ulonって友情ですよね(笑)。

Ulon一同:はははは(笑)。

マエジマ:漫画だね(笑)。

"週刊少年ジャンプ"みたいな世界だ。

篠塚:そう、"ONE PIECE"みたいなバンドなので(笑)。きっと、音楽を通して失われた人生みたいなものが取り戻せた4人だと思うんです。うまくいかなかったこととか、うまくいかない人間関係とか。社会との手の繋ぎ方が今でも苦手なメンバーもいるので。音楽が唯一自分を表せて、社会と手を繋ぐ方法になり得るというか。結果的に、4人は音楽を通して仲良くなっているので。そういう意味では、このアルバムが売れる売れない以前に、4人にとっては一生大事な作品になると思んですよね。

-でも、そういう作品の背景を差っ引いて聴いても、かっこいい音楽だなって思うんですよ。だからこそ、「世界の終わり」のMVも言語の違う国のバンド、アーティストであるTRAVISのFran(Healy/Vo/Gt)がMVを観て、"この曲もビデオも好き、なんていうバンド?"ってSNSで発信したわけですよね。そういう言葉、言語を超えた魅力がちゃんと音になっていて、惹きつける強さがあるなと思いますよ。

イブキ:嬉しいです。あの「世界の終わり」という曲は、コロナ禍でライヴができなくなって、曲も書けなくなった時期があったんですけど。それで、"名曲を作りたくて身動きが取れなくなった"と始まるんです。

篠塚:ライヴもできなければ、曲もできなくなって。久々に曲を書こうとなったとき、一生懸命になりすぎて、"やるならいい曲が書きたい。じゃあいい曲ってなんだっけ?"と考えていて、みんなでいろいろ話して、"いい曲書かなくてもよくない?"ってなったんですよね。"いい曲書けないなら、いい曲書けないって曲を作ればいいじゃない"という話をして。気づいたら、あの曲ができてたんですよね。

イブキ:溢れ出てました。

-そういう赤裸々な苦しい思いをも、気持ちのいいギターのカッティングとグルーヴィなサウンドに乗せて歌っていると。

スズキ:あのギターの感じは練習しましたね。苦労したんですけど、ある種"スタイル"が生まれた曲でもありました。

うえの:ドラムも、もともと私は16分のビートが好きで、そういうノリの曲もやりたかったんです。でも、なかなかそういう曲ができなくて。しのさんが入って、自由にやらせてもらえるような感じになって、これはきたぞと(笑)。

篠塚:それが異色な曲になりましたね。シティ・ポップとも違うし。

-ソウルフルでロックでもあり。どこか懐かしさも感じるような雰囲気もあり。

篠塚:また、パンク・ロックも感じて。皮肉なことに、名曲が書きたくなったけど、それが書けないという曲が、TRAVISのような世界的なアーティストにいいと言われる、名曲として扱われるのは不思議ですよね。

イブキ:TRAVISの件は、まりんちゃんが一番嬉しそうだったよね。

うえの:もともとTRAVISの大ファンなんです。TRAVISのMVも全部好きで、「Sing」という曲でパイ投げをしていて、Ulonでも、それがやりたくて(笑)。「世界の終わり」のMVはTRAVISにインスピレーションを受けたものだったから、できあがったMVもTRAVISに観てもらいたかったんです。

篠塚:大好きなバンドだし、そういうリスペクトがあったから、完成したMVをTRAVISには送っておこうねっていうので、律儀にこんなビデオになりましたよって送ったんですよね。それを気づいてくれたのかわからないですけど、Franがリツイートしてくれて。

うえの:あれは、嬉しかった。

マエジマ:でも、あのリツイートをしてくれたのが、MVの解禁日よりずっと前だったんですよね(笑)。

-だいぶフライングでお披露目になってしまったんですね(笑)。

うえの:でも、TRAVISとか自分が好きなバンドに出会えていなかったら、こうして自分は間違いなくバンドをやっていなかったので。本当に嬉しかったですね。

イブキ:まりんちゃんとの出会いは面白くて。俺がネットでメンバーを探しているときに連絡が来て、じゃあ御茶ノ水で会いましょうってなって、喫茶店か何かで話をしたんですけど。まりんちゃんはそのときたしかOLだったんですよね。

うえの:契約社員をしてました。

イブキ:聞いたらすごい大きな会社だったから、バンドやっても大丈夫なのかとか、そんな大きな会社なのに、なんで契約社員のままなのかって聞いたら、"私はいつかバンドをやる人間だから、いつでも辞められる準備のために契約社員なんだ"って、まだバンドもやってないのに言っていたんです。この人ヤバいってなって(笑)。

篠塚:最初、リョウヘイとは女の子のメンバーはやめておこうねって話だったらしいんですよ。でも、いろんな候補に出会ったけど、一番パンク・ロックだったのが彼女だったということで。そのあと、まだイブキがリーダー体制の頃にスタジオでケンカしたらしくて、まりんちゃんが帰っちゃったらしいんです。イブキとリョウヘイは、きっともう次のスタジオには来ないだろうなと思ったらしいんですけど。まりんちゃんは次のスタジオに来て、しかも仕事を辞めて来たと。なぜか、バンドじゃなく、仕事を辞めて来たらしくて。

-それは、そのくらいみんなも腹をくくれということだったんですね。

うえの:はい(笑)。

イブキ:そういうぶつかり合いもあって、今は本当に良かったと思ってます。もうそういうのは嫌だけど(笑)。

-4人ともバックボーンが違うのに、大人になってこれだけ仲良くなれる、そういう相手に出会えるというのもすごいことですよね。その4人での1stアルバムに、"ReBirth"というタイトルを付けたのはどういう思いがあったのでしょう。

イブキ:この"ReBirth"という綴りを考えたのは、まりんちゃんだったんですけど。もととなった"Reverse"の、ひっくり返すという意味合いが俺は気に入っていて。これまでの人生では、いろんなものを取りこぼしてきたんですけど、俺はUlonでそれを取り返せると思っているんです。ここから始めるとか、いろんな意味もあるけど、ひっくり返すという意味がすごく気に入って、且つ字面もかっこいいというのがあったので(笑)。このタイトルになりました。

-いろんな人に聴いてほしいし、また今言ったような思いを抱く人とか、届くべきところに届いてほしいアルバムですね。

イブキ:これは、レコーディングのときにしのさんと話していたんですけど、最近思うのは"みんな"っていうワードが多いなと。でも、みんなって言われても、俺はそのみんなには入っていないタイプで。

-そこからはみ出してしまったと感じる?

イブキ:だから、そういう人に聴いてほしいなと思うんです。もちろんいろんな人に聴いてほしいですけど。

篠塚:聴いた人がどんなバンドか決めていいと思うんです。明るいと思ったら明るいし、暗いと思ったら暗いし、踊れると思ったらそうだし。芸術的だと思えばそうだし。さっきも言ったような、友情がいいよねっていう見方もあるかもしれない。このパッケージには何も貼られてないんですよね。どんな人にも聴いてほしいし、音楽が好きな人には一度は聴いてほしいなと思います。

スズキ:僕は「生きる意味なんて」も好きですけど、「バースデイ」という曲がめちゃめちゃ好きなんです。"誰も泣かないで/君は笑っていて"って歌う曲なんですけど。自分もUlonの曲、イブキの歌詞に救われているから。聴いてくれる人それぞれで、様々な意見あると思うんですけど。それぞれが抱え込んでいる部分が、このアルバムで少しでも楽になってくれたらなとか、いろんなことを感じてくれたらなって思います。普段はこういうこと言わないので、今すごく恥ずかしいですけど......。

イブキ:嬉しいなぁ。

一同:素晴らしい!(※拍手)