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INTERVIEW

Japanese

cinema staff

2019年06月号掲載

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Member:飯田 瑞規(Vo/Gt) 辻 友貴(Gt) 三島 想平(Ba) 久野 洋平(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

-ピアノのみで始まるというcinema staffにとって斬新なアレンジを提案されて、三島さんの心境は?

三島:やっぱり最初はびっくりしましたね。僕はそもそもピアノが弾けないから、シングルの表題曲をピアノのみで始める勇気も発想もなかった。大丈夫かな? と思ったけど、野村さんにその背中を押してもらった感じですね。結果的にはいいチャレンジの機会を貰ったなと思っています。サビはどしゃーん! としてて、結構猛烈な空気になってるし。そういうのも新しいアレンジャーさんにもたらしてもらったものだな、と感じてます。

-野村さんはtacicaのサポート・ギタリストを務めていたり、ハルカトミユキ、関取 花さん、私立恵比寿中学など、様々なアーティストのアレンジャーとしても活躍したりしているので、ロックの要素とポップスの要素を繋ぐ架け橋的存在とお見受けします。野村さんの提案で新しいことにチャレンジすることを楽しむ、ということですね。

三島:そうですね。僕らはセルフ・プロデュースで制作ができるバンドだから、これまでプロデュースしてくださった江口(亮)さんや亀田(誠治)さん同様、新しい視点を貰うため、視野を広げてもらうために野村さんに入っていただいているので、どんどん乗っかっていきました。そのなかでも「Name of Love」はプロデュースしてもらった感がこれまでで一番強いかもしれないですね。

久野:前にライヴで同期を入れて演奏したとき、"俺らには同期合わないね"という話になったこともあって、「Name of Love」でピアノを大々的に入れると決めたタイミングで、それならちゃんとライヴで生でピアノを演奏しようということになったんです。そのために、休止中飯田はずっとピアノを練習していて。

飯田:休止に入って"今の俺がcinema staffのためにやれることはこれだけだ。これが数ヶ月後絶対に大切になってくる"と思って、3ヶ月ずっとピアノを触ってたし、スタジオでようやくバンドで合わせたんです。なんとかツアーに間に合いました(笑)。

久野:ということは、今後"ピアノの曲をライヴでやれるんだ"という話になってくるじゃないですか。そういう面においても「Name of Love」はバンドにとってすごく意味のあるものだし、これから実際に演奏を重ねていけば、もっと自分たちのものになっていく感覚があると思う。やっぱりプロデューサーの入った制作は、自分の"いい"とプロデューサーの"いい"が戦うことなので、そういう面では苦しいところもあったんですけど、それを乗り越えると面白いことが多いですね。

-辻さんは、ギタリストの先輩との制作はいかがでしたか?

辻:ギターも自分じゃ出ないフレーズだし、コードの使い方もめちゃくちゃ細かく整備してもらって。しんどかったのは、音楽理論上では気持ちのいい音の鳴りを、自分の感覚が掴めなかったという現実を突きつけられたことですね(苦笑)。自分的には気持ちいい音を乗せているつもりが、"いや、音が当たってるよ"と言われて、その"当たってる"がわからなくて。

-cinema staffは主人公4人が集まったような音作りが面白さでもあるけれど、「Name of Love」は4人とピアノでひとつの大きな主人公を作るサウンドスケープというか。キャリアを重ねたうえでの大胆なチャレンジは、バンドにとっても財産になりますよね。

辻:野村さんがcinema staffのやり方を理解してくれたうえで提案してくれていることはわかっていたので、だからこそ挑戦できたものだと思いますね。

久野:うん。俺らの強みや持ち味を、「Name of Love」の制作を通してわかりやすく教えてもらった感覚もあるよね。

-「Name of Love」があるから、「OCEAN」や「さらば楽園よ」のようなcinema staff節全開の曲も映えますしね。もちろんその逆も然り。

久野:最初は"「Name of Love」と「OCEAN」という対極の曲が並んで大丈夫なのかな?"と思ったんですけど、4曲並べたらそれぞれが良く聴こえたなと実感して。

飯田:「OCEAN」も「さらば楽園よ」も野村さんが音を整理してくださったので、普段ならバッキングでジャカジャカ埋めるところも埋めないことによって、アルペジオが際立ったりもして。整理してくださったぶん、フレーズが見えるようにもなってると思います。

-「OCEAN」は音的にもどこを切り取ってもcinema staffですし、歌詞の言い回しも三島さん色が全開だなと思ったので、"進撃の巨人"に振り切って寄せた制作というのは、なかなか意外でした。

飯田:"進撃の巨人"は壁の中の世界で暮らしている人たちのお話だから、みんな"外の世界には海というものがあるらしい"と夢を見ている――「OCEAN」はまさにそれを歌っている曲で。でも題材は"進撃の巨人"であっても、壁を乗り越えて新しい世界に行きたいと思うことは、普通に暮らしていてもありますよね。巨人や壁みたいに非現実的なものを扱っているのに、テーマは日常的。それが"進撃の巨人"のいいところでもあるなぁと。

三島:「great escape」を出したあとに、いろんな人から"先のストーリーを知らされてたんですか?"と言われたんです。全然そんなことはなくて、なんなら欲しいくらいで(笑)。今アニメで放送されている話はひとつの区切りを迎える場面でもあるので、そういうところを任せてもらえたのはむちゃくちゃ嬉しいことなんです。それが「OCEAN」や「Name of Love」に入っているし、作中の"あの壁を越えたら海があるんだって"という描写と、僕が昔から"海"について曲を書いてきたことが帰結するのは、すごくありがたいなと。使い古してきた"海"を使えたのは、"進撃の巨人"のおかげでもありますね。

-昔の三島さんにとって"海"は"理想"や"憧れ"の象徴だったけれど、「OCEAN」では意味合いもだいぶ変わってきてますよね。

三島:昔より余裕が見えますね。さすがに海にも散々行きましたんで(笑)。昔とは違う接し方ができていると思います。