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INTERVIEW

Japanese

少年がミルク

2018年03月号掲載

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-それはどこかで、張り詰めていなきゃいけない、怒りで満ちてないといけないと自分に課してしまっていたところもあるのでは?

だいぶあったと思います。ライヴでは、アイドルと一緒に対バンとかをすることが多くて、こう言うのはおこがましいですけど、やっぱり一緒にはなれないというか(笑)。ただただ、かわいく楽しくやっちゃうのは違うなと思う気持ちが、勝手に強まっちゃって。全然違うものにしなきゃなっていう。社長いわく、もともと全然違うんだから、気にしないでいいよって言うんですけど。気になるんですよ。

-そこで、パンク精神が出てきちゃう(笑)。

そう(笑)。ただ、それも実は私の創作意欲に繋がっているんですよね。なかなか女性シンガーだけでは自立できないところがたくさんあって。なんとかアイドルと一緒にライヴをするとか──そういう時代がまさか来るとは思ってなかったんですけど。そういう今の状況だからこそ、生まれる言葉もいっぱいありましたね。これは全然、悪い意味ではないんですけど。

-女性のソロのシンガーはやはり難しさがある。

あまり集客がないとか、もしくはあまりライヴをしないとか、そういう難しさがあると思いますね。私は今はまだ積み重ねている段階で、アイドルとのライヴとか、いろんな現場を経験するなかで、いろいろ見えてきたし。強くなりました。

-アイドルのようなグループがたくさん出る現場でも、自分の歌を必要としてくれる人がいることがわかった。

そうですね。ずっと半信半疑でやっていたんです。"絶対聴きたくないでしょ!"みたいな。それはそれで楽しかったんですけどね(笑)。そういう現場が一番強いし。でも、本当に聴いてくれる人が、少しずつ確実に現れてくれて。1月末にキネマ倶楽部でワンマン(2018年1月28日に開催した無料ライヴ"少年がミルクワンマンLIVE")をしたんです。やっぱりちょっと難しかったなと感じたのが、今までは、そういう反骨精神みたいなもので自分を支えてステージに立っていたんですけど。純粋に私の音楽を聴きたいと思って来てくれる人がいて、バンド・セットで、自分でも好きな雰囲気の場所で、というのが用意されちゃっていたのに、少し戸惑っちゃって。

-もう反骨心だけではできない状況ですからね。

そこで新たな試練が生まれましたね。自分では"ちょっと失敗したな"くらいに思っていて。社長とかスタッフは"いいライヴだったよ"と言ってくれたんですけど、自分の中では迷いがずっとあって。"こんな私、つまらなくない? 大丈夫?"みたいな感じと、でもやっぱり嬉しいし、ひとりひとりのために歌っていいんだっていう純粋な気持ちが、ずっとグルグルしていて。でも面白かったです。自分はまだまだなんだなと思いましたけどね。また1年後とかに、きちんと企画して、あの場所でやりたいです。

-そんな先でいいんですか?

いいんです(笑)。それまでは積み上げをしていって。1年後には堂々と歌っていられたらいいなと思って。それくらいまだ自分に自信がないんですかね。歌唱力とかも、ジムにいって身体を鍛えるとか、自分なりにやっているんですけど、特に先生がいるわけではないので。この先もしばらく、自分と向き合ってやっていかないとだし。それは、アーティストのキャラクター的にもそうだと思うし。そのなかでは、だいぶ強くなったのかな。

-そう思います。ジム通いをして、きちんと伝えよう、表現しようと努力しているのは、曲のイメージからは想像がつかないかもしれない。

いいんですかね。


ちょうど良くならないもどかしさみたいなのが面白いし、それを自分が楽しめるようになってる


-いいと思いますよ。今回のアルバムは、もっと見せよう、もっと知ってもらおうっていうベクトルになっていると思うんです。今の話も、「ERROR」に繋がるなって思いましたよ。この曲は、書き方こそパンクですけども、目の前に見える人を大事にした曲になっている。

それはアルバムだからこそできるなと思って。いいですよね、この曲が最後っていうのが。最後で良かった(笑)。

-これまでの3作を聴いてきた人は、少年がミルクにひとりの人間としての何かを感じると思うんですよね。"音楽じゃ世界は変わらない"と歌いながらも、"そうじゃない"という想いも確実に入っていて。今までだったら、"変わらないよ"で終わっていたと思うんですよね。

そうなんです。でも、悩みましたけどね、書いていて。音楽じゃ世界は変わらないけど、"私が変えるんだ"とかは絶対に違うし。それはもっと立派な人たちが歌っているので。"じゃあ、自分の良さってなんだろう"ということとちゃんと向き合ったんですかね。その、ちょうど良くならないもどかしさみたいなのが面白いし。全然よくわからないことを歌っているのに、ライヴで踊ってくれる人がいる。そのエラーが起きていることも面白いし。それを自分が楽しめるように、"(世界は)ちゃんとできてるんだよ"っていうことは、伝えたかったんですかね。

-そのエラーが起こっていることに、以前だったら"なんで伝わらないんだ"って怒っていたところを、"音楽っていうのはそういうものなんだな"っていう着地をしているのが、大きな違いだなと。

着地してますね。それが諦めじゃなく、でもただのハッピーな前向きさでもなく、ここに辿り着けたのは良かったですね。これで締めくくれるっていうことは、いいアルバムになったんじゃないかなと思います。