Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

INTERVIEW

Japanese

パスピエ

2016年08月号掲載

いいね!

Member:大胡田 なつき(Vo) 成田 ハネダ(Key)

Interviewer:秦 理絵

-なるほど。武道館で集大成を見せたパスピエにとって、2016年はどういうモチベーションでバンドを動かしているんですか?

成田:改めて今年は自己紹介をしなきゃいけないと思ってるんです。今までやってきたこと、これからやりたいことをガッと凝縮して見せていきたいなと思ってるんですね。でもパスピエはそれを1曲でドンッと見せることが最善とされるバンドじゃなくて。それで今年は結構短いスパンで『ヨアケマエ』(2016年4月リリースの5thシングル)と『永すぎた春 / ハイパーリアリスト』のシングル2枚を出したんです。アウトプットするひとつひとつに自分たちの意志みたいなものをまぶしているつもりですね。

大胡田:私は今年に入ってからはずっと作り続けるというか、常に進んでいる感じがあります。去年は武道館というわかりやすい目標があったんですけど、今年はどこにっていうわけではなくとも、ずっと前に進んでる感じはしてますね。

-やっぱり武道館が終わって集大成を見せて、ひと区切りをつけたとしても、当然がそれがバンドとしてのゴールではないですもんね。

成田:本当はもっと集大成でひと区切りみたいな感じになると思ってたんですけどね。"今までやってきたことは間違ってなかったんだ"って終わってくれるかと思ったんですけど。"これ、まだ全然1歩目だったんだな"って武道館公演が終わって、そう思いました。

-山の高いところまで登って来たつもりが、まだ裾野だったみたいな(笑)。

成田:むしろ背負うものが増えたなという感じですかね。これまで支えてくれたファンがいて、1公演だけのために東京に集まってくれた人がいて、あれだけの人を目視できるっていうのは、僕らにとってはすごい経験だったんです。あの場所に集まってくれた人たちはきっとこれからの作品にも期待してくれてるんだろうなっていうのは思いました。

-バンドの新たな自己紹介という意味では、2016年の第1弾として4月にリリースされたシングル表題曲「ヨアケマエ」が、まずパスピエらしさが詰まった1曲だったなと。

成田:あの曲をひと言で言うと、"何かを予感させたい"ということだったんです。武道館公演を終えて、初の音源だったので。それまでの過去をある種、踏襲した楽曲にしたかったんだと思います。これから取り組んでいきたいことも入れてるんですけど、その配分が過去寄りなんですよね。「ヨアケマエ」に関しては一発目ドーンっていうのではなくて、"2016年のパスピエ、何かあるぞ!"っていう予感を嗅ぎ取ってほしくて。だから"ヨアケマエ"というタイトルにしたし、そのときのアーティスト写真では幕を被っていたんです。

-それに続く今作が『永すぎた春 / ハイパーリアリスト』です。まずTrack.1「永すぎた春」はパスピエの和テイストが今まで以上に強くて、リズムにインパクトがある曲ですね。

成田:やっぱり今はもう曲の作られ方が出尽くしてしまった中で、ジャンルとしてのカテゴライズのされ方、取捨選択のされ方が結構明確になってきたなと思うんです。バンドが演奏するうえでライヴで映えるビートとか、求められる曲調が限定されてるというか。そういう中で何か逸脱する方法はないかなと思って作ったのがこの曲ですね。だから、今までパスピエはアッパーなBPMの曲が多かったんですけど、今年のテーマとしてはBPMが遅くてもアッパーになる作り方は何だろうなっていうこと。そういう中で僕らが新しい音楽のノリ方を提示できたらいいなと思って作りました。

-「永すぎた春」のBPMはいくつですか?

成田:130ぐらいです。

-これまでのシングルは170ぐらい?

成田:170の後半とか180ぐらいも多いですね。

-テンポは速くないけど、ちゃんと身体を動かせる高揚感のある曲ですよね。

成田:そこが出てくればいいなと思いました。バンドとして自分たちが、そのときそのときで果たすべき役割があると思ってるんです。今は下の世代もどんどん出てきてて、新しいバンドがデビューするときに発する爆発みたいなものがアッパーな曲を生むと思うんです。僕らもそういう時期を経てきたからこそ、今やるべきことは別にあるだろうなと感じているので、これからはそういうのもパスピエで伝えられたらいいなと思います。

-こういう曲調で歌うというのはヴォーカルとしても違う感覚ですか?

大胡田:そんなに違いは感じないんですけど。言葉が詰まってないぶん、歌詞は大事になってくるなと思ったんです。勢いだけではいけないので言葉の選び方には注意しました。

-文学的で古風な言葉の使い方が印象的ですね。

大胡田:音源が和っぽくて、ちょっと"不思議オリエンタル"みたいな感じなので、歌詞はそこに引っ張られた部分があったと思います。

-和テイストはパスピエの代名詞でもあるけど、メンバーみんな好きなんですか?

大胡田:そうですね。私は大好きです。

成田:僕もニュー・ウェーヴが大好きなので、レトロ・フューチャー感は好きですね。"ニュー・ウェーヴ"って、当時やりたいことがやれない中で頑張ってやりたいこをやるにはどうすればいいだろう?という衝突があって生まれたもので。でも今はその当時、手に入れたかったものが簡単に手に入っちゃうんです。そういう人たちがニュー・ウェーヴをやろうとすると、もう古いものに遡っていくしかないんですよね。