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INTERVIEW

Japanese

戸渡陽太

2016年06月号掲載

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-「Nobody Cares」のどんな部分が好きなんですか?

フォークでありつつ、日本っぽくないサウンドで、北欧の世界が見えるというか。ブルガリアン・ミュージックがすごく好きなんですが、ああいう感じの、圭さんしか思い浮かばないようなコーラス・ワークを提案してくださって、それが反映されてるところも好きですね。それと、詞も好きなんですよ。"心配してます"って言いながら心配してなかったり、右側の人の意見に従ったり、左側の人の意見に従ったりしつつ、結局自分の意見は何もなかったりとか。そういうことって誰しもあると思うんです。そしてそういう自分もいるけど、誰も気にせず世界は回っていくという状態を歌っています。

-"孤独なんだけど自由"とも、"自由なんだけど孤独"ともとれる内容ですね。でもこのサウンドに乗ると別にネガティヴでもポジティヴでもない印象になって。

そういう感じです。"無"じゃないけど、いろんな状況の瞬間にいる感じ。

-ああ、だからフラットに"誰も気にしてないよ"っていうニュアンスに着地してるのかも。そして、2作目のEP『孤独な原色たち』(2015年リリース)にも収録された「ギシンアンキ」(Track.5)は、音も言葉もすごい勢いで押し寄せてきますよね。これだけギターがパーカッシヴだと他の楽器があまり必要ないように感じて。実際にはどうなんですか?

アレンジ的には、ギターのリフを支えるような周りの音が最低限入ってる感じですね。

-この曲は高校生のころに作られたとか。"愛なんて僕は信じない"とうそぶきながら、愛したいし愛されたいと感情そのものが引き裂かれているような歌で。作った当時と変わったことはありますか?

作って気づいたこともあるんですけど、歌い続けていく中で自分が変わったものがある気はします。作った当時は"叫び"だったんですけど――最後に"愛ってやつを信じたい"って歌詞があるんですけど、今はそれを信じてるんで。信じてる状況でそう歌って、そういうマインドがある中で伝えると、きっと伝わり方が違うんじゃないかなって思いますね。大人になった、じゃないですけど(笑)、そういう自分が10代の"叫びの歌"を歌うことに意味があるんじゃないかと思います。

-最初は歌うことで吐き出していたのが、今は歌うことが楽しいんじゃないのかな?と思ったんですが。

そうですね。でも、そうなったのは結構最近なんですよ。"楽しくなってきた"ニュアンスは今作の色にもすごく表れてるような気がするんです。EPの2作、『プリズムの起点』(2014年リリース)と『孤独な原色たち』は、ベクトルが内側だったんですね。でも今回の作品は外側に向いてて、初めて"届けよう"っていう覚悟を持てている。それはライヴでも顕著に表れていて......前まではただ言葉を作って、メロディを歌うって感じだったんです。しかもベクトルもこう、自分との戦いのようなものを見てもらう感じだったんですけど、最近はそうじゃなくて、言葉の情景を歌うことで"届けよう"っていう気持ちというか。ライヴをやっていると"伝わってる"ってわかる日があるし、逆に"あ、伝わってない"って日もあるんですけど、そういうふうにライヴが変化してきた感じがあって、最近、歌を歌うのが楽しいです。

-曲を作り始めたきっかけは根本的に何か言いたいことがあったからだと思うんですが、今はどうですか? 真ん中にあるものというのは。

今でも自分探しのためでもあると思ってるんですけど、なんかこう誰かの拠りどころになれればいいなと思っています。僕も、僕の周りもいわゆるレールからドロップアウトした人なので、そういう人の拠りどころというか。

-高校生の早い段階で将来を左右されるのは、ちょっと珍しい経験かもしれないですね。

世間からみれば"ドロップアウト"ですけど、僕の中では全然ドロップアウトじゃないと思ってて。例えば、高校生のときにみんなが"大学行った方がいい"って言うから、"俺も大学行こうかな"という人が多いと思うんですね。でもそうじゃなくて、自分が本当にやりたいことがあれば高校を卒業してバイトしながらやればいいし、大学に行ったって仕方ないと思ってたんで、僕は音楽をやることを決めたんです。風当たりは意外と強い気がするんですけど、間違ってないと思うし、信じて突き進んでる人の方が美しい瞬間にたくさん出会えるような気がしていて。このアルバムにも"美しい瞬間"があると思うし、そういうものを詰め込んだ作品なんです。

-今、20代のバンドがメインの音楽シーンに、シンガー・ソングライターとして出ていくというのもひとつの挑戦ですね。

また音楽を始めたころの話に戻っちゃうんですけど、バンドのブッキングに自分からどんどん出るようにしていて。バンドも好きだし、"バンドに対してひとりで勝つにはどうしたらいいんだろう?"ということを考えながらずっとそれにトライしてて。そういう中に、ひとりで出てひとりで全部持っていくみたいなことをやるのが好きなんで(笑)、挑戦でもあるし、楽しいですね。