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INTERVIEW

Japanese

戸渡陽太

2016年06月号掲載

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-ああ、なるほど。人に聴かせるつもりで作ったものではなかった?

矛盾してるけど......でも最近は、解明していったものを届けやすくするために、歌詞の細かいニュアンスを気にしたり、"こっちの方が伝わるかな"とか考えたりしますね。最近の作曲活動では"人"が見えてきたなと、自分で感じます。

-まず最初に言葉がある音楽だと想像できたんですが、今の歌詞も比喩や情景描写はあまりないですね。

そうですね。でも「Sydney」(Track.2)は、歌詞のプロデュースにいしわたり淳治さんをお招きして作ったんですけど、"形容詞とかが少なくて情景が浮かびにくいから、そこを意識して書いた方がいい"って指摘されたんですね。それで"たしかに"と思って。だからこの曲はわりと情景が浮かびやすい言葉が多いかもしれません。いしわたりさんいわく、音楽理論同様、歌詞の世界にも理論みたいなものがあって。例えばAメロに"カーテン"とか誰もが想像できるものを入れて、Bメロには"埃にまみれた窓"とか"形を変えて流れて消える雲たち"とか、"ちょっとずつ自分の心情を足していって、サビで全然関係ないことを歌うのが面白いんだよね"と言われたんです。この曲ではサビで一番言いたいことを書いています。

-"止まらない諸行無常の世の中の中で/僕らの愛に終わりはないと信じてたいんだよ"というライン?

要するに、"ビルド・アンド・クラッシュ"――世の中って作り上げても壊れていくことばかりで、それが"諸行無常"っていうことで。でも、全部"諸行無常か?"っていうと、そうじゃないものも信じたい――この曲では恋愛のことを歌ってるんですが、そうやって廃れないものが愛なのかな?ってことをサビで歌いたかったんです。

-作詞に関して新たなチャレンジだったんですね。

4回ぐらいやり直してるんです。もとの詞があったんですけど、それを全部"書き換えろ"っていうところから始まり、完成してレコーディングしたんですが、サウンドのアレンジも二転三転して。最後に"ドラムを録ろう"って、茂木欣一さん(東京スカパラダイスオーケストラ/※戸渡の所属するレーベルの先輩でもある)さんに叩いていただいたんですけど、茂木さんのドラムが、音だけでレコーディング中に泣きそうになるぐらいすごくて。それで、パワー・バランスがドラムに引っ張られて、他が華奢に感じられてしまったのでギターも歌も録り直してようやく完成したんです。そういう過程があったからこそいい作品になったなと思いますね。

-すごい労作ですね。また歌詞の話に戻るんですが、戸渡さんの歌詞には"愛"って言葉がいろんな意味で出てきますね。

そうですね。飢えてるのかもしれないです(笑)。

-(笑)結構ストレートに出てくるじゃないですか? 「SOS」(Track.3)では、"届かなかったはずの自分が発したSOSが、風に乗って自分の知らないところで愛に変わる"と歌っています。このイメージは?

自分の"切ない"とか"悲しい"っていう感情を歌っているので、僕の作曲活動の中では、SOSを発してることが多いかもしれないなと思うんですよ。でも、それが曲となってCDとなって、自分の知らないところでそれを買ってくださる人がいる。そういうのっていいなっていうか、そういうのが僕の中での"風"で、拠りどころになってるって嬉しいなという曲なんです。

-でもサウンド・プロダクションの効果か重くは聞こえない。

今回は深沼元昭さん(PLAGUES/Mellowhead/GHEEE)さんに加えて、高桑圭さん(Curly Giraffe)やmabanuaさん(Ovall)もプロデューサーとして参加してくださったんですけど、細かなサウンドの気配りがすごいなと思って。本当に気づかないぐらいの細かな違いで聴きやすくなる、飽きない、そういうレシピがあることを知りましたね。

-弾き語りのスタイルから、自分のサウンド、言ってしまえばジャンルですけど、そこに至るまではどういう試行錯誤がありました?

僕は楽曲の骨組みしか作ってないので、音源に関してはプロデューサーさんたちが作った音の方が強いと思うんです。でも、僕のイメージというか特徴のようなものはあって――僕はNusrat Fateh Ali Khanとか、Maryam Hassanとか、そういうワールド・ミュージックを聴くのが大好きなんです。そういうところからサウンドを引っ張ってきてもらってるのかな?と思うときはあります。

-Curly Giraffeこと高桑圭さんプロデュースのTrack.4「Nobody Cares」は、彼らしいオルタナ・カントリー・テイストで。

この曲、すごく好きで。"どういう感じで作っていったんですか?"って圭さんに聞いたら、"楽曲を聴いたときにギターのリバーヴの音が鳴ったんだよね"って。そこからどんどん広がってああなっていったらしいです。圭さんは、"外側から作ってもいい曲にならないから、やっぱり骨組みを今のスタイルのまま作り続ける方がいいよ"と言ってくれました。