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INTERVIEW

Japanese

毛皮のマリーズ

2010年04月号掲載

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Member:志磨遼平(Vo)

Interviewer:佐々木 健治


-音楽はその手段?

そうなんですよ。僕はさっきも言ったように文字が好きなんですけど、ライヴ感という意味では、全く音楽に敵わないじゃないですか。ノートなりパソコンなりに文字を書いて、それを印刷して日にちが開いてから読まれるわけじゃないですか。ライヴで書いてそれをライヴで読むって言うことはないわけですから。僕はよくライヴ中に話が長くなるんですけど、即興詩と言うか・・・今ももしかしたらそんな感じなのかもしれないですけど(笑)。生演奏したりだとか、思ったことを口にするって言う。僕は楽器すら持たないで、とにかくただそこに立って声を出すって言う変な仕事をしているので。僕は五体を使ってすることなら、何でもいいんですよ。向いているなら、肉体労働でもいいだろうし、スポーツかもしれないし。いろいろ試した中で、一番ピッタリくるのが音楽だった。だから、音楽から始まった音楽活動ではないのかもしれないですね。ちょっと何と言うか、屈折した欲求と言うか。

-なるほど。

そう。それが、憑き物が落ちたみたいに一気になくなって。

-自分がどうなるかという興味が?

そこに全く興味が湧かなくなったんですよね。そうすると、不思議なもので僕と毛皮のマリーズを囲む状況というのが、一気に変わりまして。因果なもので、欲しい欲しい、くださいくださいって言うのは、ダメで。欲しがっているうちは、欲しいものは手に入らないって言いますけれど、それはホンマで。そこからはもうポンポンポンと。メジャーにしろ、皆さんの期待や認知度も大きくなって、急によくなったんですよね。

-そういう変化は、本作にどういう風に出ていると思います?

そうですね。まず、人の為に音楽をやるようになったんですよね。何と言うか、ロックンロールというものから、皆さんへ・・・だいぶイタイ発言やな、今の(笑)。ロックンロールという文化がありますよね。まだ続いていますよね。60年くらいの歴史を持つ文化に僕は心酔して青春を過ごし、自己投影して、ロックンロールそのものになりたいとすら思って、挫折を経験しているわけです。で、それを僕はロックンロールの限界と捉えていて。ロックンロールからしたら大きなお世話でしょうけど、僕はそう捉えていて。実際、そうなんですよ。

-それは、どういうこと?自分がロックンロールそのものになりたいって話だよね?

そうです。アイ・アム・ロックンロールということですね。20いくつの奴が何を分かったようなことをと言われるかもしれないですけど、こればっかりは分かったんだから、しょうがないんですよ。ホラでも大それたことでもなくて。昔、何かのインタビューで面白い分析をされたことがあって、毛皮のマリーズの歩みは、ロックンロールの歴史を地でやっているだけで、本気で世界を救えるんじゃないかと信じている。愛と平和があればね。本当にロックンロールで世界がよくなるんじゃないかという幻想が打ち砕かれて、そこからまた這い上がってきたり、別の武器を手にしたりね。それをよくもまあ地でやっているよねと言われたことがあって。それは面白いと思って。それを僕は身を持って体験しまして。

-その幻想が打ち砕かれたところが、ロックンロールの限界ということ?

そうです、そうです。僕は本当にロックンロールは完全無欠なものだと本当に信じていたんですよ。だけど、あまりそうではないらしいと。やはり人間の限界にはロックンロールにはいかないわけですよ。やはり、生理現象ではなくて、文化、嗜みなんですよね。明日死ぬような人が曲を書かないわけですから。それを僕は生命維持装置のように大騒ぎしていた。じゃあ、諦めた男が何をまだ居残っているのかと言うと、ロックンロールはただの音楽なんですよ。音楽の一つのジャンル。皆、ロックンロールにいろんな意味を持たせるじゃないですか。「それ、めっちゃロックンロールしてるやん」みたいな動詞的に使われたりするじゃないですか。だけど、あくまで一つのジャンルでしかなくて、それ以上でもそれ以下でもない。そんなことより、僕達は生きていると。そんなことはどうだっていいと。とりあえず、我々は明日がある。未来があると。ロックンロールがなくたって、たくさんあるわけですよ。生活がある、守るものがある、愛するものがある。楽しいこと、ご飯、ホビーたくさんある。我々は生きていて、忙しいんだよ、こっちはと(笑)。やることがいっぱいあるんだよと。トラックの積載量で言えば、もの凄く膨大な量を載せられると言うか。何でもいいんですけど、様々な出来事や事件、逆にめでたいこともありますけど、そんなことは本当にちょっとしたことなんですよね。いいことも悪いことも小さなことなんですよ。人間って言うのは、もっとこうあるべき姿があるわけで、それを考えていると寝る間もないというか。