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LIVE REPORT

Japanese

毛皮のマリーズ Restoration Tour 2010

2010.05.21 @下北沢SHELTER

Writer 花塚 寿美礼

4月にメジャー・ファースト・アルバム『毛皮のマリーズ』をリリースした毛皮のマリーズ。このアルバムはイマイチ元気のない音楽業界への挑戦状ともとれる歴史に残る1枚だと思う。
そしてメジャー後初のワンマンライブにして札幌、大阪、名古屋、福岡、仙台、ファイナルには恵比寿リキッドルームという全国ツアー初日。
オープン前のライヴハウス脇には入場を待ちわびる人々の長蛇の列。そう、この日の下北沢シェルターの看板には堂々と“THANK YOU SOLD OUT”の文字が輝く。

パンパンのフロアに客電が落ちたのは開演時間を15分ほど過ぎたころ。一発目に披露されたのは「COW GIRL」! 待ちくたびれた観客たちを一気に熱気の渦へと変貌させる。志磨(Vo&Gt)が「welcome下北。あなたの毛皮のマリーズです」と挨拶し、ジャケットに赤いマフラー、左腕に赤い腕章を合わせた衣装に対して客席からは「応援団みたい!」という声が。それに志磨が「誰が団長やねん! メジャー初のMCを失いました」と笑わせたり、今の彼には余裕すら伺える。そしてアコギを手にして演奏し始めた「サンデーモーニング」にオーディエンスは体を揺らす。
ここでのMCで志磨は「音楽ってそもそも何かのためにならないし、なくてもお腹は空くし。曲はできるんだけど、歌詞は悩むよね~。音楽ってなんやろな~って思ってたら最近わかった。我々はすごい幸せだから歌う。今回のアルバムはあなたのためよ。音楽は誰かから誰かのためにある」と言葉を紡ぐ志磨から、一瞬たりとも目が離せなかった。
そしてヒロT(Ba)の新たな魅力が爆発する楽曲「すてきなモリー」へ。ヒロTのキュートなヴォーカルに客席からは「かわいいー!」という声援とともに、手拍子が巻き起こる。続いて放たれたインディー時代の名曲「ビューティフル」。ついに来たか! と言わんばかりに、会場のテンションは最高潮に達する!

アンコールの最後にはアルバムでも最後に収録されている「晩年」。今のマリーズ表すかのような情念のこもった歌詞にオーディエンスも真剣に聴き入っていた。

とあるインタビューで志磨自身が「今回、たくさんの媒体さんに取材をしてもらったんですが、みんな僕らの後ろにある何かを見てる気がして…。曲の話とかしてないんですよ」と言っていたのを思い出した。今日の毛皮のマリーズを見て、本当にそうだと思った。
私たちはマリーズ越しに音楽のあるべき姿、音楽業界の未来を見ているのかもしれない。 この手のロックが一部の人だけに愛される存在ではなく、全国民が夢中になるような音楽になることを。
最後に志磨が「東京ドームで会いましょう。毛皮のマリーズでした。全国ツアーに行ってきまーす」と言った。もちろんこのツアーのファイナルが東京ドームで行われるわけではない。でも彼はここのステージで、それだけ大きな存在のバンドになることを誓った。この日は、これから世界中にマリーズ旋風を巻き起こすための始まりの日。そんな門出に立ち会えて良かった。

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