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バンドハラスメントMUSIC VIDEO
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一時はあわや解散か? という事態にまで陥っていたという彼らがこのたび心機一転を図り制作に臨んだという、このシングルが具現化した意味はあまりにも大きい。そして、その表題曲がTVアニメ"ちはやふる3"のEDとして起用されたことも、バンドハラスメントの認知度をここから上げていくという意味では、重要な出来事だと言えるだろう。2020年は勝負を賭ける! と明言するだけあって実際に今作の充実度はなかなかのもの。卓越したポップ・センスを発揮したダンス・ロック・チューン「Fifty」、約2年半前にリリースされた名曲をリビルドした「大人になるために(2020 ver.)」も、すこぶる垢抜けた仕上がりだ。混迷の時を経ながらも、前進することを選んだ彼らの成長っぷりがここからは感じられる。(杉江 由紀)
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平成生まれの4人が、平成が終わろうとしている今ここに、ひとつの金字塔を打ち立ててみせた。始動から3年が経ち、ひとつのロック・バンドとしてはもちろんのこと、ライヴ・バンドとしてもその腕を磨き続けてきた彼らにとって、今作はあらゆる意味での"ここまで"を集約した作品になっているのではないかと思う。現状フェスなどでも演奏する機会が多い、代表曲の「Sally」や「君と野獣」で聴ける上質なギター・ロックはもちろん、元来ラウド・バンドとしての下地を持っていたという、彼らの根っこが明るみに出ている「ANIMAL ZONE」のプリミティヴさも、個人的には非常に興味深く感じる。また、純粋に感動を誘う名曲「光線」も必聴だが......その最後の最後には彼らの遊び心がひとさじ加えられている点も実に面白い!(杉江 由紀)
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若さとは恐ろしい。ここに詰まった音を聴いていて感じるのは、ある種の畏怖だ。こんなにもまっすぐで、こんなにも切れ味鋭く、こんなにも奔放に自らの表現欲求に駆られた結果を、音源としてパッケージしてしまえるという事実。それはやはり、20代前半という若さこそがなせる業のような気がしてならないのだ。今作においては残酷なほどに社会性を帯びた「鯉、鳴く」と、瑞々しい恋心が疾走する「Sally」がツートップ状態で作品全体を牽引しているものの、メロウで物語性の強い「モノ」や、ライヴ・テイクからの「サヨナラをした僕等は2度と逢えないから」も、なかなかに興味深い。時に自らの恋愛をも生贄にしながら、バンドハラスメントが描き出そうとする音楽世界は切実なほどのピュアネスに満ちている。(杉江 由紀)
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1stミニ・アルバム『エンドロール』の最終曲「9月4日」に繋がるニュー・シングル『解剖傑作』。表題曲はソングライター、斉本佳朗(Dr)の恋愛体験から生まれた曲で、手紙という形で、今は別々の道を歩んでいる女性への想いを綴っている。過去の恋愛に対して、男性はひとつひとつフォルダを増やしていき、女性はどんどん上書きをしていくというが、まさにそうなんだなと思う内容だ。僕自身は前に進んでいると言いつつも、変わりゆく相手へのジェラシーもあって、皮肉っぽい語り口で書かれた歌詞。井深(Vo)の歌は、その様々な感情がこんがらがったやるせない心を吐き出すように、勢いのある高音や繊細なエモーションを表現する。思い出という美しいセンチメンタルを瞬間パッケージしている。(吉羽 さおり)
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瑞々しく、切なく、そして少しだけ痛々しい青春の残り香がここには確かに息づいている。音楽的に大別すれば、作詞作曲を手掛ける斉本の冴えたセンスが活きた「君がいて」や、ヴォーカリスト 井深のクリアなハイトーンが刺さってくる「大人になるために」など、平均年齢21歳の彼らが奏でる楽曲たちはギター・ロックの範疇に入るものが多いと言えるのだろう。だがしかし、今作の中には訳あってアラビア語の歌詞を交えたという"陰キャ"の立場から"陽キャ"への憧憬を具現化したパーティー・チューン「アリバイパリナイ」や、ギタリスト ワタさんの弾くとても20代とは思えないようないぶし銀フレーズが光る「サヨナラをした僕等は2度と逢えないから」など、一筋縄ではいかない面白さを感じさせる面も含まれている。熟成の味わいとは明らかに違う、若さという名の可能性が迸る1枚だ。(杉江 由紀)