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THE FLAMING LIPS (20)
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2014年のフジロックが特に新作のないタイミングで過去の名曲オンパレードだったので、もう落ち着いてしまうのか? と思った矢先に新鮮な音像が届いた。トレンドに合わせたわけじゃないだろうが、ドラムもギターもうっすらリップス流のミニマルで、でも十八番のメランコリックでノスタルジックなサイケデリアが多幸感とも違う穏やかな心地に誘う。なんでもタイトルはポーランド語で、意味は"若き人の目"とのこと。Wayne Coyne(Gt/Vo)は"オクシィ・ムロディ"という発音に麻薬的なものを感じてつけたらしいが、まさに悪影響のないドラッギー・サウンド、半覚醒状態で聴くと最高に気持ちいいトータル・アルバムだ。一概にエレクトロと言えない手作り感、切なくてキュートで思わず泣けてくるTrack.4のようなメロディは彼らにしか作れないだろう。(石角 友香)
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ストレートに"恐れ"とタイトルされた全編シームレスに続くひとつの詩のような、ひとつの曲のようなアルバムだ。恐怖から逃れることはできるのか?愛するほどに傷つくのか?でも結局、自分の手に負えないものからの支配と破壊の欲求によって人は跳躍できるのではないか。そんな自問に似た真摯な歌が、静かな熱気を湛えたバンド・アンサンブルとエレクトロが感覚を増幅させるサウンドとともに淡々と紡がれていく。コラージュ/ミュージック・コンクレート的な手法も、ノイズ・ギターも必要とあらば同じ俎上に乗せつつ、決して過剰にならないサウンドスケープは、聴感上はロック的ではないけれど、このエモーションはインストのカット・アップでは決して味わえないTHE FLAMING LIPSというバンド作品の強みだ。(石角 友香)
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SUMMER SONIC での母体から登場するパフォーマンスは、『Embryonic』=胎性と名付けられた本作に繋がっていたのか。ただ、エンターテイメント性溢れるステージを目撃した直後だけに、この新作『Embryonic』のモードには驚かされる。自分達がマジカルなポップ・バンドである前に、先鋭的なロック・バンドであると示すようなプリミティヴなオルタナティヴ・サウンドとアンビエント・テイストのバラードが交錯する。眩暈がするようなポップ・ワールドではなく、遥か彼方で瞬く光をやっと発見するような空気感が全体を覆う。初めて聴いた時は戸惑うかもしれないが、聴き通せば本作がポジティヴで美しい作品だと分かるはずだ。僕は、映画『2001年宇宙の旅』を思い起こしてしまった。(佐々木 健治)