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LIVE REPORT

Japanese

HOWL BE QUIET

Skream! マガジン 2016年10月号掲載

2016.09.11 @LIQUIDROOM ebisu

Writer 沖 さやこ

HOWL BE QUIETがメジャー・デビューを発表し、「MONSTER WORLD」のMVを公開したのは2015年11月。その直後、彼らにまつわる記事には"バンドを捨てた"、"アイドルを目指す"などの見出しが躍ったが、2016年9月11日の恵比寿LIQUIDROOMのステージに立っていた彼らは、筆者が最後に彼らのライヴを観た1年9ヶ月前と同じように、自分たちの音楽を心から信じ、この4人で奏でる音楽を愛していた。あのときと変わったことと言えば、それらの強度が高まり音楽を鳴らすうえでの方法論が増えたこと。そして衣装がグレード・アップしたこと。さらに4人の個性がプレイや音にも反映されてきたこと、というところだろうか。一見すると今の彼らはポップ・センスが眩しく煌びやかなバンドだろう。だがその輝きや煌めきの奥を追いかけてみると、そこにあるのはむき出しになった鋭い牙であり、零れ落ちた大粒の涙であり、頬を伝う涙の跡でもあり、大切な人に向けられる純粋な愛でもある。だからこそ、彼らの放つ輝きは色とりどりの鮮やかさを持っているのだ。
 
開演前のBGMは"インディ・ジョーンズ"などの映画のテーマ・ソング。ロード・ムービー風の「Wake We Up」のMVになぞらえた小粋な演出は、テーマ・パークや遊園地のアトラクションに乗るために列を作って待つ、あのわくわく感と似ていた。そのBGMが徐々にボリュームを増していくと、フロアからクラップが湧き始める。ステージ前に張られた白い紗幕の向こうから「Wake We Up」が放たれるとともに大きく竹縄航太(Vo/Gt/Pf)のシルエットが映し出され、一気に幕が落ちると観客は満面の笑みで大きな歓声を上げた。竹縄はハンドマイク、黒木健志はギターの合間にキーボードを弾き、橋本佳紀はシンセ・ベースで音を鳴らす場面もあり、4人全員が自分たちの音楽で存分に遊んでいるようだ。曲によって音源が持つ世界観を損なわないように同期音も取り入れ、岩野亨(Dr)はリズム・パッドを操る。「Daily Darling」はハンドマイクで自由奔放に歌う竹縄も間奏でしっかりピアノ・ソロを決め、「孤独の発明」では竹縄もギターを弾き、曲間にインタールードを挟むなど自分たちが持っているものをフル稼働させていく姿が頼もしい。音が止まると筆者の近くにいた女の子から、思わず口から零れたであろう"かっこいい......"というつぶやきが聞こえてきた。HOWL BE QUIETは以前から自分たちの音楽に絶対的な自信を持っているし、さらなる高みをも目指している。堂々としている人は総じて華があるものだ。
 
柔らかく壮大な「PERFECT LOSER」はLEDによる背景の照明にも現代感があり、バンドの持つ雰囲気ともよく似合っていた。黒木のギターと竹縄のピアノという異なるウワモノがお互いを高め合う音色も美しい。黒木はギターを弾くときもピアノを弾くときも、ヴォーカルとの絶妙な間合いを取ってくる。必要なときは前に出て、竹縄のピアノを立たせるときは華麗にセンターから外れ、必要あらばそっと寄り添う。その間合いから生まれる空気感に、彼らの体温が宿るのだ。橋本のベースは素直で邪念がないし、岩野のドラムは細かいところまで神経が行き届いている。4つの異なる色が1曲の音を作り出す光景に見とれた。続く「千年孤独の賜物」は、指先まで気迫を鋭く尖らせた竹縄の鍵盤さばきはもちろん、4人の刺すような集中力が空間を支配する。曲ごとにまったく違う表情を見せていく彼らが次に届けたのは「Merry」。初期曲を大切に奏でていく4人を見ていて、彼らは自分たちの過去にも大きな敬意と愛を持っていることを感じた。曲が持っている当時の彼らの気持ちと、現在演奏している彼らの気持ちが重なり、とても激情的である。HOWL BE QUIETは過去も現在も未来も全部根こそぎ抱えて、常に新しい場所へと向かい走り続けている――このバンドは歴史を重ねれば重ねるほど輝きを増すバンドだと確信した。アウトロのラスト一音まで気持ちの通った演奏に、フロアは陶酔し圧倒され、若干の放心状態。だが彼らはそれを誤解して(?)か、MCで"(フロアと自分たちの間に)距離がある"、"みんな敵に見える!"と発言。音楽に純粋がゆえに自分たちがどう見えているのか無自覚なところも彼らのチャーミングな部分だろう。涙の成分から生まれたような感傷性を持つ「バトルナイフ」から、「救難戦争」でさらにディープなサウンドスケープに。竹縄航太といういち個人を強烈に印象づけるも、そこに少しずつ黒木、橋本、岩野が自分の色を足していくことで、ひとりでは出せない光が生まれていた。こういうことができるのはロック・バンドの特権だ。やはりHOWL BE QUIETは"ロック・バンド"を守っていた時代よりも断然ロック・バンドである。「ライブオアライブ」はギターのアレンジも大きなアクセントで、ドラムの躍動感も心地いい。力強い演奏で高揚させると、竹縄の弾き語りで「レジスタンス」が始まる。センチメンタルなメロディを救い出すような煌びやかなシンセ音によるハウル流EDMナンバーを、竹縄はしなやかに身体を動かしながら歌う。竹縄のきらきらと輝く強い眼差しには、何も迷いがなかった。
 
アンコールはまず竹縄がひとりでステージに登場し、"俺のこと一生忘れさせなくしようと思って作った曲です"と言い、12月にシングルとしてリリースされる新曲「サネカズラ」を披露した。竹縄のパーソナルな部分が全面に出たバラードを、今の彼らがバンドでどうアレンジするのかも注目だ。"僕らと一緒に戦ってくれたら、僕らの音楽をそばに置いてくれたらなと思うので、これからもHOWL BE QUIETと仲良くしてやってください"、"つらかったり不安だったり、怖かったり――いろんな毎日の中で戦い抜くあなたたちの歌です"と竹縄が言い、ラストはメジャー・デビュー・シングルの表題曲「MONSTER WORLD」。この闘志剥き出しの歌詞も、このポップで抜けのいいサウンドも、デビュー時よりも瑞々しく逞しく響いていた。未来を歌い続けている彼らは、これから我々と共にどんなどんでん返しを起こすつもりなのだろうか。彼らとの未来に恋をせざるを得ない。

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