インストやジャズという形容詞をいったん無視して聴いてみると、演奏のダイナミズムやシャレの効いたタイトル、そこから連鎖的に広がるイメージに思わず楽しくなってしまうのが本作の強みだろう。ラウド/ヘヴィ・ロック・バンド顔負けの重く速いタイトル曲「サイコブレイク」、ベース・ラインとギター・カッティングにウルフルズの名曲を思い出してしまった「Hang New's High」、ブラジリアン・ミュージックの中でもポピュラーな楽曲に近いイメージの「Rodrigo de Izu」、the band apartのアコースティックが好きな人にも訴求しそうな「エウロパ」、PHONO TONESとのスプリット所収の「シエノとレイン20形」、ぐっとチルアウトなボサノヴァ調の「Port Ellen」まで、迫力と洒脱を行き来する全10曲が楽しめる。
メンバーが全員50歳を迎える今年。彼らが鳴らすのはフラットなスタンスが現れた比較的ドライなサウンドのロックンロールやカントリー/ブルースだった。アフロビートな「Eeyo」のサウンドに現役感を見つけ歓喜し、続く「DIE OR JUMP」で竹安堅一のハード・ドライヴィンなギターとマンチェ・ビート(どちらかというとTHE ROLLING STONES由来かも)のセンスにニヤニヤ、臆面もなく"ロックンロールバンド"と題した曲の60年代R&R的なスウィートさに半泣きになり、今感じていることに向き合い続ける孤独のアンセム「いましか」に泣き、風通しのいいカントリー風の「見晴らしのいい場所」で深呼吸。ヘヴィな作品並みの深度がありつつ印象は軽快。フラカンは未だ変化の途上にいる。
Track.6「Good Morning This New World」において、その陽気なマーチング・バンド風のサウンドと裏腹に歌われるのは、"楽しい未来の事しか考えない"、しかし"貧しい未来の事しか考えられない"という、決して楽観視できない"今"の姿。だが、続くラスト・トラック「無敵の人」で"頑張ってる人は それだけで未来だ"――つまり、未来を作り生きるために"頑張れ!"と、重くストレートな次世代へのエールを送る現在のフラカンは、26年というキャリアに溺れることなく、受け継がれてきたもの、そして受け継ぐべきものを見据えている。過去から今、そして未来へ――この大いなる時の流れを見つめる眼差しは、実は誰よりも貪欲に未来を求め、夢をおかわりし続けてきたフラカンだからこそ持ち得たものであることは間違いない。