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LIVE REPORT

Japanese

フラワーカンパニーズ

Skream! マガジン 2013年05月号掲載

2013.04.21 @日比谷野外大音楽堂

Writer 天野 史彬

日比谷野外大音楽堂にて行われた、フラワーカンパニーズのワンマン・ツアー“ハッピーエンド2012-2013”の追加公演。これは、アルバム『ハッピーエンド』のリリース・ツアーのファイナルであり、2012年から現在にかけてのフラカン――もっと言うと、「震災後」のフラカンが歩んだ道のり、そこから生まれた変化、そういったものすべてがバンドの中でどのように消化されたのか、それを確認する格好の場でもあった。


4月も後半に差し掛かろうとしているのに、この日はまるで冬のような寒さだった。なんとか朝から降っていた雨は午前中に止んだものの、春の野外ライヴには似つかわしくない季候である。しかし、それもフラカンらしいと言えば、フラカンらしい。1曲目、「なれのはて」からライヴはスタートした。24年間のバンド活動の末に今、野音のステージに立っている自分たちを肯定するかのような、皮肉るかのような、そんな選曲である。演奏が始まると、寒さが和らいでいく。気温が変化したからではない。その演奏に、自ずと身体が動くからだ。“ロック”よりも、“ロックンロール”という言葉が似合う、しなやかで、それでいて強靭な演奏。序盤から、「SO LIFE」や「人生GOES ON」といった『ハッピーエンド』収録曲のあまりの訴求力の強さに驚かされた。去年12月に行ったシングル『ビューティフルドリーマー』についてのインタヴュー時、鈴木圭介とグレートマエカワのふたりはこのツアーにおける『ハッピーエンド』収録曲の浸透度の速さを語っていたが、これらの楽曲がライヴ現場で響いた時のスケール感の大きさ、説得力の強さは、筆者の予想を遥かに超えていた。「人生は続いていく」――この圧倒的な事実を伝えるこれらの楽曲は、もはや“アンセム”と言っても過言ではないほどの訴求力を持って、この日の野音に響いていた。


中盤、「ロックンロール」からの「吐きたくなるほど愛されたい」。そしてスキマスイッチの常田真太郎を迎えて演奏された「エンドロール」からの「東京タワー」。このふたつの流れは間違いなく、この日のハイライトだった。『ハッピーエンド』という、震災後の無力感や混乱を色濃く反映したアルバムの中で、すがるかのように、祈るかのようにロックンロールへの思いを歌った「ロックンロール」と、無力感と絶望感を噛み締めるように綴った「エンドロール」。アルバムを象徴するこの2曲は、未だ薄れることのない生々しさとリアリティを持って響き、その上で鳴らされた「吐きたくなるほど~」や「東京タワー」といったフラカン・クラシックは、更なる普遍的な輝きを放っていた。未だ何も解決していないし、私たちの中にある無力感も絶望感も消えはしないだろう。だが、私たちは生き延びて、日々は続く。この先も私たちは無様に“愛されたい”と願い、東京タワーに憧れる。そんな私たちのカッコ悪い未来を、この日のフラカンは抱きしめ、肯定しているようだった。


ライヴは、最後「脳内百景」、「NUDO CORE ROCK’N’ROLL」、「チェスト」、「YES,FUTURE」といった爆発ナンバー連発で本編を終了。2度目のアンコールで代表曲「深夜高速」を演奏する前、鈴木はこう言った。「この曲はずっと歌ってきたし、これからも歌っていくと思います」。少なくとも、『ハッピーエンド』というアルバムの中に、<生きててよかった>と叫べる鈴木はいなかったと、筆者は思っている。あのアルバムの中で鈴木は、“生きていてよかったのだろうか?”と、そんな問いを繰り返していたと。ただ、それでも私たちは生き延びた。もう一度、<生きててよかった>と思える夜を探してもいいだろうと、この日の「深夜高速」は伝えているようだった。そして、最後の最後は「サヨナラBABY」。「またやるから、また来てよ」と、グレート。曲に合わせて手を挙げるオーディエンスは、バンドに対して「またね」と手を振っているようだった。そう、また会おう。きっと、私たちの無様でカッコ悪い日々は、この先も続くのだ。

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