インストやジャズという形容詞をいったん無視して聴いてみると、演奏のダイナミズムやシャレの効いたタイトル、そこから連鎖的に広がるイメージに思わず楽しくなってしまうのが本作の強みだろう。ラウド/ヘヴィ・ロック・バンド顔負けの重く速いタイトル曲「サイコブレイク」、ベース・ラインとギター・カッティングにウルフルズの名曲を思い出してしまった「Hang New's High」、ブラジリアン・ミュージックの中でもポピュラーな楽曲に近いイメージの「Rodrigo de Izu」、the band apartのアコースティックが好きな人にも訴求しそうな「エウロパ」、PHONO TONESとのスプリット所収の「シエノとレイン20形」、ぐっとチルアウトなボサノヴァ調の「Port Ellen」まで、迫力と洒脱を行き来する全10曲が楽しめる。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONの伊地知潔とDr.DOWNERの猪股ヨウスケの名前が前に立ちがちだが、このバンドの肝はまるでヴォーカルのように変幻自在で時にカオティックな宮下広輔のペダル・スティールだろう。そこに絡む飯塚純のエレピもエモい。いわゆるインスト・ジャム・バンドともサーフ・ロックとも違う、横浜という都市に近い海の文化を背景に持つオルタナティヴなクルーズ・ロック。どの曲もユニークだが、「Autumn Sword Fish Dance」のジャズと祭りばやしとレゲエがコングロマリット状態なアレンジ、テンション高めでハードボイルドだけどそこがむしろ笑える「石川町ファイヤー」、元cutman-boocheのウリョン(Vo)参加の歌ものナンバーなど、音楽の楽しさ満載。ユルすぎない夏のお供に。
京都発4ピース・インストゥルメンタル・バンドの3枚目。2012年5月に2ndアルバム『novel』を発表しFUJI ROCK FESTIVAL 2012への出演も果たした彼ら。その充実ぶりが窺える約1年という短いタームでの発表となる新作は、ジャケットから受けるアンビエントな“静”の印象とは真逆の、血肉沸き踊るような躍動感に満ちた“動”の作品。「intro」に続き放たれる「rossa」の導火線を駆け上がる炎のようなピアノの連打に導かれて爆発する情熱的な旋律に早くも興奮させられる。激しくも妖しい「buzz」は都会のデカダンスを連想させる映画のようなスケール感。さらに「life feat. YeYe」ではゲスト・ヴォーカルのYeYeによる英詞の歌が感動的だ。同じくゲストの山本哲(Nabowa)が弾く優しい調べに心穏やかになる「holiday」から、そっと目を閉じるような「lamp」まで、インストながらもあまりにも人間味豊かなアルバム。