Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

INTERVIEW

Japanese

"SENSOR Vol.2" 座談会

 

いいね!

7月7日、WOMB、duo MUSIC EXCHANGE、clubasiaの3会場にて、エレクトロニック・ミュージック・イベント"SENSOR Vol.2"が開催される。"SENSOR"は、世界のダンス・ミュージックを牽引しているUSのレーベル Ultra Recordsと日本人としては初めて契約を結んだCARTOONと、生身の人間とバーチャル・ヒューマンの"デジタルツインズ"アーティストとして話題を集めているYELLOCKのふたりが、"日本人アーティストを中心にした1万人規模のエレクトロニック・ミュージック・フェスティバル"を誕生させるべく立ち上げたイベント。今年1月に開催された"SENSOR vol.1"では、エレクトロニック・ミュージック・シーンで活躍するアーティストはもちろんのこと、ロック、ポップス、ヒップホップなど、ジャンルの垣根を飛び越えた様々なアーティストが出演し、大盛況で幕を下ろした。今回 Skream!では"SENSOR Vol.2"の開催を記念し、イベントのレジデントDJであるCARTOON+YELLOCK のふたりと、"Vol.2"に出演するASH&Dhalsim(ASH DA HERO)の座談会を実施。"SENSOR"の始まりから、イベントが掲げている"「REMIX」&「TECHNOLOGY」"というテーマについて、イベントに先駆けて発表されたASH DA HEROのリミックス楽曲「Judgement (CARTOON + YELLOCK REMIX)」のことや、テクノロジーがもたらすエンターテイメント界の未来まで、話の内容は多岐にわたりながらも、両者が強く、深く呼応し合う60分となった。

CARTOON+YELLOCK:CARTOON YELLOCK
ASH DA HERO:ASH(Vo) Dhalsim(DJ)
Interviewer:山口 哲生 Photographer:Yukiya Kanda


もっとみんなで一緒になってやっていったら、世界に打っていけるんじゃないかって思ったんです(CARTOON)


-今日は7月7日に開催される"SENSOR Vol.2"を記念した座談会なのですが、CARTOONさんとYELLOCKさんは、ASHさんとDhalsimさんともともと面識があったんですか?

YELLOCK:前回の"SENSOR vol.1"のときに、WOMBの席で紹介していただいて。すごかったんですよ。"俺らがASH DA HEROだ!"みたいな感じで。

ASH&Dhalsim:いやいやいやいや(笑)!

ASH:おかしい、おかしい(笑)!

YELLOCK:"あ、お世話になってます!"みたいな(笑)。そのときにASHさんたちが"もともとクラブ・シーンが好きで"と話していて、ファースト・タッチだったんですけどすごく盛り上がって。

ASH:僕らとしては、とあるルートから"こういう面白いイベントがある"というのを聞いたんですよ。そもそも僕とDhalsimはふたりでクラブに遊びに行ったりとか、僕としてはライヴハウスもそうなんですけど、クラブで遊んで育った人間でもあって。だから同じエリアで、同じ時間に様々なハコで同時に開催するとか、そういうイベントってあんまりなくね? って。

Dhalsim:ロック・バンド界隈だとサーキット・イベントはよくあるけど、クラブ・シーンではほぼないんですよ。

ASH:ないよね? 面白そうだから行ってみようと思って。同郷で友達でもある呂布(カルマ)君も出てたから、余計に観に行こうって。そのときにおふたりにご挨拶させてもらった感じでしたね。

-Dhalsimさんも、そのときがおふたりとは初対面で。

Dhalsim:そうです。

ASH:"俺らがASH DA HEROだ!"って(笑)。

YELLOCK:もう飲んで、飲んで。飲みっぷりもすごくて。

ASH:あのとき飲んでましたね(笑)。

CARTOON:だからクラブっぽい出会いではあったんですよ。改まって"初めまして"というよりは、遊びに来ていただいて、楽しいよ! っていうところから始まって。

ASH:そうですね。"最高っす! 俺らも出たいっす! こいつDJで、俺はラップできるんで!"っていう。

YELLOCK:そこでだいぶできあがっていたので、今回の話もすごくしやすかったです。

-Dhalsimさんは、"vol.1"に遊びに行ったときにどんな感覚がありました?

Dhalsim:さっきもちょっと話しましたけど、クラブでサーキットって本当に珍しいし、イベント自体にミクスチャー感があったんですよ。そういうところで自分たちとも親和性があるなと思って。

ASH:そうそう。出ているアーティストが、呂布君とかもいるし、DÉ DÉ MOUSEさんとか、もう本当にオールジャンルだったから、"何か始まってんぞ、渋谷で!"みたいな感覚だった。

YELLOCK:嬉しいですね。

Dhalsim:だから、すごいイベントが始まったなぁっていうのは感じましたね。このイベント、ここからどんどんデカくなっていくんだろうなって思いました。

-では本題にいきましょう。まずは"SENSOR"というイベントを立ち上げた経緯や理由を、CARTOONさんとYELLOCK さんからお聞きできればと思います。

CARTOON:僕はハウスとかテック・ハウスDJをやっていて。WOMBでもレギュラーでやっていたりとか、なくなってしまいましたけど、(SOUND MUSEUM)VISIONで"EDGE HOUSE"というパーティーをやっていたりしました。彼(YELLOCK)は"06S"というパーティーでドラムンベースDJをやっているんですけど。"SENSOR"としては、1万人規模のフェスを目指そうという目標があって。僕らがキッズの頃には、WOMBがやっていた"WOMB ADVENTURE"とか、石野卓球さんがやっていた"WIRE"とか、日本のアーティストとかクラブ・シーンが中心になったフェスがあったんですけど、今は海外から来たフェスや、そこに出るのも海外のDJがほとんどで。僕らも"ULTRA JAPAN"に出させてもらったんですけど、日本人のスロットは早いところだけみたいなことが結構多くて。それは嬉しくもあり、でも打破したいという気持ちもあるんですよ。

-なるほど。

CARTOON:ただ、やっぱりエレクトロニック・ミュージック・アーティストというか、DJだけで、本当に今の日本のシーンで1万人に達することができるのか、と。僕らもずっとやって来てはいるけど、そこはなかなか厳しいなとも思っていて。でも昔は、僕もDJしてましたけど、恵比寿のみるくとかで、ロックもハウスもダブもヒップホップも関係なくごちゃ混ぜで盛り上がっていたのも知っているので、それをまた日本でもできたら、もっと全体のファンが増えていくんじゃないかなと思って。それで日本のアーティストや、ゆくゆくは海外のアーティストともやっていきたいと考えているんですけど、コラボレーションしていくことでそこを目指せるんじゃないかなと思って、YELLOCKに声を掛けて一緒に始めたのが"SENSOR"というパーティーですね。

YELLOCK:ASH DA HEROのふたりを前にして言うのもなんですけど、僕もバンド出身なのでなんとなくイメージがつくんですよ。バンドだったら、最初は小さいライヴハウスから始まって、動員が増えていくとZeppとかホールを借りるようになって、最終的にはドームとかいろいろあると思うんですけど、ダンス・ミュージックの界隈って、ナイトクラブかビッグ・フェスのどちらかっていう。極端なんですよね。その間のフェーズを作っていかないと難しいなと思って。"ULTRA JAPAN"も言ってしまえば海外のブランドですし、日本発信でやっているダンス・ミュージックのイベントとなると、さっき(CARTOONが)話していたものも、もう10年以上前のものなので。それを自分たちでやるためにはどうすればいいのかというところでやっているし、他のジャンルのみなさんにも、自分たちはこういう思いでやっているのでぜひ参加してほしい、ということで巻き込ませていただいている感じですね。

-そういった思いがある中で、"「REMIX」&「TECHNOLOGY」"というテーマを設けた理由というのは?

YELLOCK:ロック・バンドの場合だったら、音源は1度RECしたもの、もしくはライヴ・バージョンみたいな感じですけど、僕らの場合は1度作ったものを分解して、バラバラにしたデータを使っていいですよっていうやり方、まぁリミックスですよね。それをいろんなジャンルの人に、いろんなふうに渡して、いろんなように遊んでもらって、いろんなところでかかるっていうカルチャーがあるんですけど。それはロックとか、もっと言うと70年代とか80年代とか、昔のカタログでやったらすごく面白いんじゃないかというところからスタートしていたんですけど、今は海外ではもうロックでもポップスでも普通にやっていて。コラボもどんどん盛んになっているし、そういうことを日本でもやっていこうというところからですね、"REMIX"に関しては。

-"TECHNOLOGY"に関してはいかがでしょうか。

YELLOCK:ダンス・ミュージックというもの自体が、今はもうMacBook 1台で作れるようになりましたけど、機材の進化と共に音が変わっていく系譜があって。それはイコール、テクノロジーでもあるので、そこは切っても切れないものとしてあるんですよね。それもあって、バーチャル・リアリティの表現とか、NFTみたいな考え方とかも自然とくっついてきていて。だから、そこにこだわっているというよりは、必然的にそうなったという感じですね。

ASH:そこの最先端というか先駆け的なことを、ふたりを中心に"SENSOR"というイベントがやろうとしているのは、すごく納得できることとしてあって。僕らが遊びに行かせてもらったときに、"あのモニター、ヤバくない? 音と連動してるぞ。あんなの日本のイベントで見ねぇよな?"みたいなことを、実際に直で食らってるんですよ。リミックスの文化の話も、本当に間違いないというか。正直、ロック・シーンとかポップスのシーンって、そこらへんのアンテナ、それこそセンサーがめちゃくちゃ弱いと思うんですよ。僕らはミクスチャー・バンドでもあるから、そういうところにどんどん反応していきたいってめちゃくちゃ思ってるので、今の話はすごく納得できますね。

CARTOON:あと、僕はinterfmの"sensor -NightOut in TOKYO-"という番組でMCをしているんですけど、それを始めたのはコロナ禍がきっかけだったんですよ。もしコロナが来ていなかったら、僕はベースをホーチミンに移すことになってたんです。オランダのエージェントがついて、バルセロナとホーチミンを行き来して、日本には自分のDJのギャラとエアーが出たら戻ってくる、という体制にするのが全部決まっていたけど、コロナでその話が全部なくなっちゃったんですよね。それでどうしようかなと思っているときに、"せっかく日本にいるのであれば、海外の音楽や新しい音楽を紹介する番組をやってみたらどう?"ってinterfm(※当時InterFM897)が声を掛けてくれて。それからDJの音楽だけじゃなく、日本の音楽もたくさん聴くようになりました。もちろんASH DA HEROもそうですし、"vol.1"に出てくれた人たちの楽曲とか、番組にもゲストに出てもらったりして。そのときに改めて思ったのが、日本ってめちゃくちゃいい音楽がいっぱいあるんだなってすごく感じたんですよ。

-なるほど。

CARTOON:僕はずっと海外志向で、今はUltra Recordsと契約して、もっと作品を出していきたいなと思って海外に拠点を移すところまでしてましたけど、改めて日本に戻ったら、いいラップを書いている人もいるし、ロック・バンドもめちゃくちゃ面白いし、もちろんエレクトロ・ミュージックもDJも面白い。そういう人たちがもっと一緒になってやっていったら、世界に打っていけるんじゃないかって思ったんです。

-日本の音楽の面白さを、コロナがあったことで知ることができたと。

CARTOON:やっぱり丁寧なんですよね、日本の音楽って。サウンド感はUKとかUSとかいろいろあるけど、作り方の丁寧さは、歌詞もそうだし、転調する感じもなかなかないし。そのへんの面白さと、僕らのエレクトロニック・ミュージックの音作りの大胆さみたいなものが一緒になったら、もっともっといろんな世界の人たちが、"日本の音楽面白いね"ってなるんじゃないかなって。

ASH:それはたしかにありますね。だし、そういうムーヴが、国内のリスナーに対しても新しい刺激を与えるのかなって。それこそさっきCARTOONさんが話していた"WIRE"とか、僕は超好きだったんですよ。でも当時は会場に行けなくて、スペシャ(スペースシャワーTV)だかMTVだかでやっているのを観て、"こんな大人数でエレクトロ・ミュージックで踊り散らかすとかヤバくね!?"って思ってたんですけど。あのイベントも国内外問わずいろんなアーティストが出ていたから、あそこで!!!(CHK CHK CHK)を知って、"超ヤベぇ、これバンドなの?"とか。そのへんが自分の音楽的素養の根幹のひとつになっているし、自分がそのときに受けた衝撃を、回り回って今は発信する側になれるかもしれないって。あのとき"WIRE"とかから受けた衝撃の、今はその立ち上げみたいなところにいて、これはマジでジョインさせてほしいって思いました。