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INTERVIEW

Japanese

アーバンギャルド

 

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Member:浜崎 容子(Vo) 松永 天馬(Vo) おおくぼけい(Key)

Interviewer:杉江 由紀

-それでいて、アーバンギャルドの場合は常に先鋭的なスタンスで進んできた反面、昭和の古き良き文化を重んじてきたところがある点も大きな特徴かと思います。

松永:音楽的な面では80年代のテクノ・ポップやニュー・ウェーヴがとても好きですし、昭和の時代や古今に書かれた小説しかり、自分はいろいろなものからの影響を受けているところが大きいので、そうしたものを様々なかたちでコラージュしながら新しいものを作っているところがたしかにありますね。これをひとつのスタイルだと定義すると、今の若い世代っていうのはデジタル・ネイティヴで最初からネットに触れているだけに、年代的な地層みたいなものに対する理解はあんまりないような気がするんですよ。これは老害的な悪口ではなく、客観的にそういう傾向があるなと思うんです。

おおくぼ:カセットがレコードより前だと思ってる子とかいるもんね。

松永:僕なんかは、兄の影響で最初に筋肉少女帯や有頂天を聴くようになって、そこからさかのぼって80年代のYMO(YELLOW MAGIC ORCHESTRA)を知り、さらにその先にあるYMOの細野晴臣さんがやっていたはっぴいえんどにも辿りついたんですね。地面を掘り進んでいって、昔の化石に辿りつくみたいな音楽の聴き方をしていたわけです。ところが、今は興味のあるバンド名をYouTubeで検索したら、80年代でも2000年代でも時代を問わずにダーッと関連動画が一気に表示されるじゃないですか。そういう影響もあるのか、この間もアーバンギャルドの若いファンの人から"アーバンギャルドは平成レトロで好き♡"って言われてドキッとしました(苦笑)。

-平成はもはやレトロなのですね......。

松永:そうらしいんですよ。平成といっても30年間ありますから、90年代に入ったところからY2Kと呼ばれた2000年前後あたりをレトロとするのかなと思っていたら、なんと2010年あたりも平成レトロに入るらしいんですよ。それどころか、バブリーなものまで平成レトロと勘違いされているところもあるので、バブルは昭和の時代でほぼ終わっているということも意外と知られてないみたいです。

-ところで今作には新曲「いちご黒書」のMVも収録されておりますが、この曲からはある種のノスタルジーや、アーバンギャルドの"ぶれない"部分を濃厚に感じることができました。15周年の節目を飾るのに相応しい曲になっている印象です。

浜崎:この「いちご黒書」は歌が"リストカット"から始まるんですよ。メジャーで出す曲なのにこの詞で大丈夫かな? と思ったんですけど、一応大丈夫でした。これも昔だったら何か言われてたかもしれないですよね。

-それだけリスカという言葉が今では一般化している、ということなのでしょうか。

松永:それはあるかもしれないですね。

浜崎:メンヘラっていう言葉も、表立って使い出したのはアーバンギャルドがかなり先駆けだった気がします。

松永:我々が活動を始めた2007年段階だと歌で使っている人たちはいなかったですね。

浜崎:私も最初、意味を知らなくて"メンヘラって何?"って天馬に聞いたら"あなたのことですよ"って返されたことがありました(笑)。

松永:メンヘラと言えば、2007年に「女の子戦争」のMVを撮ったときはクライマックスのシーンを神宮橋で撮ったんですよ。あのころ、神宮橋というのはバンギャの集う場所だったから、現場でエキストラを募ってロリータ服を着たバンギャの子たちに"メンヘラーに人権を!!"って書いた横断幕を持って歩いてもらったんですよね。あれなんかは全編が2007年の空気感でできてるMVですよ。まず、知らない人には、神宮橋がどういう場所だったかってところから説明しないとわかってもらえないでしょうけど(笑)、最近"アスカノ"("明日、私は誰かのカノジョ")っていうマンガを読んだら、そのへんのことが詳しく書いてありました。cali≠gariが実名で載ったりしてましたね。

-時代性という面では「水玉病」のMVも象徴的です。

松永:「水玉病」は2008年の作品だったんですけど、あのMVは最後が秋葉原の歩行者天国で撮ってますからね。その半年後に加藤智大がトラックで突っ込んで事件を起こし、秋葉原の歩行者天国はいったんなくなっちゃうんです。しばらくして歩行者天国は再開されましたけど、あの以前のようなカオスな状態はなくなっちゃいました。かつての秋葉原にと言えば、涼宮ハルヒとか初音ミクのコスプレをしたオジサンが普通に歩いてる、結構異様な街だったじゃないですか。

おおくぼ:人で賑わってるわりにはメシ食うところがない、みたいなね(笑)。

松永:そう! あのカオスさはもう今の秋葉原にはないですね。

浜崎:ちょっと前に久しぶりに秋葉原に行ったら、すごくきれいになっちゃってたなぁ。

松永:ほんと、今回の『URBANGARDE VIDEOSICK ~アーバンギャルド15周年オールタイムベスト・映像篇~』には、そういう意味から言っても、10年前とか15年前にはあった失われし東京の光景も収められているので、そこも非常にエモいです。

浜崎:まさに平成レトロだね!

-ここはアーバンギャルドの描いてきた平成レトロの世界を、ぜひオーディオ・コメンタリー共々たっぷりとお楽しみいただきたいところですね。

おおくぼ:3時間しゃべり倒してますので、よろしくお願いします(笑)。

-なお、来たる3月31日には中野サンプラザにて"15周年記念公演 アーバンギャルドのディストピア2023 SOTSUGYO SHIKI"と題されたワンマン・ライヴも予定されております。こちらもアーバンギャルドにとって大切な節目となりそうですね。

松永:これまた、失われゆく場所 中野サンプラザでのライヴですからね。10周年のときにも中野サンプラザではやりました("アーバンギャルドのディストピア2018「KEKKON SHIKI」")が、2023年7月に閉館すると聞いて"絶対にまたやるべきだ!"となりました。日程としても3月31日だったので、今回はタイトルを"SOTSUGYO SHIKI"としたわけです。みなさんのラストサンプラザは、ぜひアーバンギャルドにしませんか? と僕としてはご提案させていただきたいです。

浜崎:二度と中野サンプラザではやれないと思うと寂しい気持ちも湧いてきますが、同時に頑張んなきゃと思いますね。みんなのラストサンプラザをアーバンギャルドのライヴでしっかり飾りたいです。

松永:10周年のとき、浜崎さんは最後に"また戻ってきます"って堂々と言ってましたからね。あの発言を回収しましょう。

浜崎:私はそう言った記憶はないんだけど(笑)、今回のライヴを発表したときにお客さんたちから"有言実行ですね"ってすごい言われました。

松永:10周年のときはわりと過去を振り返る内容でしたけど、今回は前回よりも攻めた内容になっていくと思うので、そこも期待していただきたいところです。

おおくぼ:おそらく15年の集大成ではなく、今のアーバンギャルド、そしてこれからのアーバンギャルドの指標となるようなライヴになるんじゃないかと思います。

浜崎:衣装も攻めてるんですよ。攻めすぎて天馬からちょっと反対されてます(笑)。

松永:さすがにアレは攻めすぎてるんで、ちょっと調整しないとねぇ。

浜崎:でも、最終の調整は私がしちゃうよ(笑)。