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INTERVIEW

Japanese

アーバンギャルド

 

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Member:浜崎 容子(Vo) 松永 天馬(Vo) おおくぼけい(Key)

Interviewer:杉江 由紀

-「さよならサブカルチャー」では、リアルな大爆破シーンを背にしてメンバーのみなさんが悠然と闊歩する、というインパクトの大きい映像も観ることができますね。

松永:昔の五社英雄監督が撮った映画を観てると、実際に車を衝突させて爆発させたりしてますからね。"極妻"("極道の妻たち")とかで。

浜崎:さすがに今またああいう"身体を張った撮影をやるぞ"って言われたら絶対イヤなんですけど(笑)、アーバンギャルドがリアルな映像の迫力を追求してきたことには意味があると思います。最近の"あぁ、これCGを使ってるんだな"っていうMVを観ちゃうと、どうしても興醒めしてしまう自分がいるんですよ。個人的にも、私は自分たちが作ってきた映像が好きですね。

おおくぼ:改めて観てみると、アーバンギャルドのMVってどれも演奏してるシーンがめっちゃ少ないよね?

浜崎:何かと闘ってるシーンが多い気がする(笑)。

松永:バンドのMVというより、いわゆる自主制作映画に近いような感覚で作っているところはたしかにあります。

おおくぼ:僕も自主映画を撮ったり、演劇をやったりしたので、今の時点だとメンバーとしては8年、サポートとしては13年くらい活動してますけど、参加するようになった当初からアーバンギャルドのこの姿勢はすごく馴染みやすかったです。

-そのせいか、オーディオ・コメンタリーの中で松永さんとおおくぼさんが映像についての解説をされているくだりでは、かなりマニアックな会話が具体的な作品名や監督名なども挙げながら交わされておりますね。

松永:僕もこれまでには演劇をやったり、自主映画を撮ったり、小説を書いたり、詩の朗読をしたり、学生時代からいろいろなことをやってきているんですけど、結果的に唯一ものになったのがバンドとしてのアーバンギャルドだったんですよ(笑)。今だったらまた違うやり方もあるのかもしれないけど、15年前にいくつものカルチャーを全方位的にクロスオーバーさせるアートをやろうと思ったら、ロック・バンドが最適だったということなんだと思います。つまり、僕らは音楽だけがやりたいわけではなくて、音楽を媒介にしてたくさんのカルチャーに触手を伸ばすようなスタイルでやってきているということですね。

浜崎:だけどね。本音を言えば、私はそもそもアーバンギャルドで顔出しをすること自体がイヤだったんですよ。

-えっ! 容子さんはアーバンギャルドのアイコンそのものではないですか。

松永:ですよねぇ。

浜崎:時期的に私たちは相対性理論さん、神聖かまってちゃんが同期だと思ってるんですけど、相対性理論さんは当時ほとんど顔出ししてなかったじゃないですか。私はずっと"いいなぁ"って羨ましかったんです。

松永:あの時代はちょうど"Web2.0"の後期、mixiが全盛期を過ぎてそのあとにTwitterが出てきたくらいの時代で、メディアにアーティストの存在感をどこまで晒すのかということが問われだしたころだったと思うんですよ。それこそ、相対性理論なんかは写真や情報を絞って外に出すことでミステリアスさを演出していたと思いますし、一方で神聖かまってちゃんは一大勢力になりつつあったニコ生(ニコニコ生放送)で殴り合いのケンカをしている姿をだだ漏れさせたりしていて、アーティストのスタンスが二極化しだしたのはだいたいあのあたりからだった気がします。

-振り返ってみると、この15年でWEBの世界も社会もずいぶんと変わってきたのですね。

松永:今思うと、2015年くらいまではメジャー・レーベルの一部はYouTubeにMVを上げることさえしてなかったですしね。画質がやたらと粗いのをワンコーラスだけ上げる、みたいなことが普通だったじゃないですか。当時はまだ"YouTubeで聴かれちゃったらCDが売れなくなるじゃないか!"という、なんとも牧歌的な意見が普通に出ていた時代だったんですよ。そういう時代だったことを考えても、アーバンギャルドはガンガン攻めていたほうだったと思います。

-アーバンギャルドは時代を先取りしてきたアーティストではないでしょうか。そのことは、コメンタリーでメンバーのみなさんも触れていらっしゃいましたね。

浜崎:先取りをしてきたところと、意外とミーハーだから流行りに乗っかったところの両方があると思います(笑)。

おおくぼ:あははは(笑)

松永:いや、そこは流行というものに対して自分はどう対峙しようかということを考えてきたんですよね。例えば、2012年に『病めるアイドル』というシングルをUNIVERSAL Jから出しましたが、今でこそメンヘラっぽいことを言ったりやったりするアイドルはたくさんいますよね? でも、当時はまだアイドルは基本的にネガティヴであってはいけないプラスチックな存在だったと思うんです。その時代にあえて"リスト・カットするアイドルのMVを撮ったれ!"という方向に振り切り、リスカしたり血の涙を流すアイドルを映像化したのは斬新だったはずなんですよ。ポジティヴで元気なももクロ(ももいろクローバーZ)さんが大ブレイクして、アイドル・ブームが起きていたころに自分たちなりのアイドル批評をしてみたのが「病めるアイドル」だったわけです。"実際は病んでるんだろ?"って。

-今となっては、病みをブランドにしているアイドルやタレントもいるくらいですものね。アーバンギャルドの視点はつくづく先読み型で鋭いです。

松永:さっき爆破の件で話題に出た「さよならサブカルチャー」っていうシングルも、アーバンギャルドに対しての"サブカル・バンドの典型"みたいな世の中からの捉えられ方に対して、なんらかの応答をしたいなと思って作った曲でありMVでしたからね。それであの中ではサブカル・グッズを詰め込んだ棺を大爆破したんですよ。

浜崎:あと、先読み型という意味では「病めるアイドル」のときに"踊りましょう"って言ったのは私でした。K-POPがブームになったりして、いずれ日本のバンドのMVでも踊るようになるだろうな、って思っていたので。だけど当時は私たちだけで終わっちゃいました(笑)。

-そこはやや先取りしすぎた感じだったのかもしれません。

松永:僕もその浜崎さんの意見を聞いて、バンドなのに楽器を持たずみんなで踊るっていうのは面白いんじゃないかと思ったんですよ。でも、当時メンバーだった鍵山(喬一)君は"なんでドラムを叩かずに、こんな面白おかしいピエロみたいな道化を演じなければいけないんだ!"って怒っちゃって、撮影中ずっとムッとしてました(苦笑)。

おおくぼ:そういえばそうだった(笑)。

松永:改めて考えると、この15年で自分たちの周りや世の中や、いろんなものが変化して柔軟になってきたんじゃないかと思いますね。『URBANGARDE VIDEOSICK ~アーバンギャルド15周年オールタイムベスト・映像篇~』は、映像を通して音楽業界とかネット社会の変遷、そしてその双方の関わり合い方っていうものをすごく感じられる作品にもなっているんじゃないでしょうか。ニコ動(ニコニコ動画)からYouTubeに流行りの軸が変わり、サブスクが全盛となっている現代からすると、Winnyの開発者が逮捕されたりした過去ってなんだったんだ!? となりますし、Winnyのような技術が様々なサービスに生かされているなんていうことも、今となっては知らない人もいるんでしょうね。それについての映画も上映されますけど......。要は新しいものって何かと既存のモラルと衝突しがちなんですよ。