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INTERVIEW

Japanese

アーバンギャルド

 

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Member:浜崎 容子(Vo) 松永 天馬(Vo) おおくぼけい(Key)

Interviewer:荒金 良介

2019年に新編成になり、今年元旦にはメンバー3人だけの"テクノポップ・セット"で『TOKYOPOP』を発表したアーバンギャルド。その作品を経て、現3人体制による10thアルバム『アバンデミック』をここに完成させた。テクノポップというバンドの軸を太くしたまま、中毒性を高めたキャッチーな魅力はよりいっそう強化。そのうえでしっとり聴かせる大人びた楽曲も揃えた作品は深い聴き応えをもたらしてくれる。"こうじゃなきゃいけない"という縛りから解き放たれた音楽性は、リスナーや場所を限定しない抜群のポピュラリティを備えている。メンバー3人にコロナ禍の中で制作されたニュー・サウンドについて話を訊いた。

-「トーキョー・キッド」(2018年リリースの8thアルバム『少女フィクション』収録曲)の中に"オリンピックは中止だ"という物騒な歌詞がありましたけど、今年はそれが見事に的中してしまいました......。

松永:そうなんですよ!

浜崎:よっぽど嫌だったの?

松永:いやいや、予言してしまったのかもしれない。

浜崎:何が起きるかわかりませんからね。

松永:不謹慎な人間と思われるかもしれませんが、書いてしまったら、そうなったという。新型コロナウイルスに関してはまったくの予想外でしたけどね。社会システムが便利になる一方、何かアクシデントが起きると、簡単に崩れてしまうんだなと。SF小説をよく読むんですが、政府がマスクを2枚配布するとか、出来の悪いSFみたいなものですよ(笑)!

-『少女フィクション』は、CDデビュー10周年というタイミングであり、バンド像がより強固になったと発言してました。ただ、2019年3月に瀬々(信/Gt)さんが脱退したわけで、バンド的にどういうふうに受け止めました?

浜崎:瀬々さんの脱退も家庭的な事情だし、今年東京オリンピックが開催しなかったりとかして......本当に何があるかはわからないから。メンバーの脱退については我々も1から構築しなきゃいけないなと。でも、みんな落ち着いて受け入れられたんですよ。

-あぁ、そうなんですね。

浜崎:10年間やってきた信頼関係がありますからね。

松永:瀬々さんが抜けて、2019年は3人で試行錯誤してました。まぁ、楽しく実験しているような感覚ですね。3人だけのテクノポップ・セットで、今年頭にアルバム(『TOKYOPOP』)を出したんですよ。そのツアー最中にコロナがあり、中止になったんですけど、今作は非常に勢いのあるアルバムを作りたくなって。

-『TOKYOPOP』を経たから、そういう気持ちに?

おおくぼ:そうですね。『TOKYOPOP』はギターも入れずに我々がすべて管理してやったんですよ。『少女フィクション』まではどんどん肥大化して、いろんな人を巻き込んでいたけど、それを一度自分たちの手に取り戻そうと。

松永:アーバンギャルドは歌詞、サウンド、ヴィジュアル面においても情報量が多いバンドですけど、『TOKYOPOP』で削ぎ落としたんですよ。で、今回のコロナ禍の中でそれを肉づけする作業でした。

-削ぎ落としたときに見えたバンド像とは?

松永:コロナ禍で、YouTubeで過去のライヴを配信したり、配信イベントをやったり、カバー曲も出したんですけど......このままだと、ミュージシャンは生身である必要はないのかなと。『TOKYOPOP』ではどれだけテクノな存在になれるかなと思ったけど、その一方で生々しさを求めたい気持ちも生まれて。はっきり言えるのは、今の音楽の在り方として、バンド・サウンドである必要はないのかなと。Billie Eilishのトラックもこれまでの常識的な曲作りからするとだいぶ思い切っているけど、世界的に受け入れられてるじゃないですか。だから、いろんな前提は崩してもいいのかなって。バンド編成でなくてもいいし、サンプリングも開拓されつくしているから......一番面白いのは人間の声だろうと。

おおくぼ:「白鍵と黒鍵のあいだで」は声を楽器というか、シンセのように使ってますからね。

松永:「君は億万画素」ではオクターブ下で歌ったりしてね。

おおくぼ:『少女フィクション』まではヴォーカルをエンジニアさんにエディットしてもらっていたけど、今回はほぼ僕らが全部ヴォーカルをエディットしているんですよ。エンジニアさんだと、どうしても過激なことはやれなくて。

浜崎:うん、残してほしいところを削られたりしてね。

松永:今回はアレンジ、ミックスにしても、パーソナルなものが出ているかなと。

浜崎:天馬のヴォーカルは人間味がなくなるほど、大手術してますけどね。

おおくぼ:でも加工しても残る人間味が出てるから(笑)。

松永:自分たちの肉体をマシーナリーにできるのか、それにチャレンジした曲もあるんですよ。浜崎さんに"ボカロになってください"とお願いした曲が「映えるな」ですね。

おおくぼ:結局は人間的な歌になったけどね(笑)。

松永:そうなんだけど、テクニカルな歌になったから。

-今作はメンバー3人の持ち味がより発揮されたサウンドと言えますか?

松永:バンド・サウンドに寄せなければいけない、ロックに寄せなければいけないとか、そういうところから解き放たれた気持ちはありますね。

おおくぼ:コロナ禍でライヴもなかったので時間があったことも大きいですね。2~3ヶ月ぐらいかかったかな。

松永:いや、もっとかかったよ。コロナ禍で自宅にいる時間も増えたので、丁寧に作ろうと思いました。普段だったらミックスもスタジオでざっくりしたラフを聴いて、僕らで直していくんですけど、今回はネットで全部やったんですよ。ふたり(浜崎、おおくぼ)とも音に対してこだわるので、1曲について原稿用紙5枚分くらいの感想を送ってくるんですよ(笑)。それで1曲について5回ぐらいやり取りしました。

浜崎:みんなそういうふうにやっているんじゃないの?

松永:いや、人によると思うけどね。エンジニアさんはアーバンギャルドの人たちは正確に言ってくれるから、有り難いと言ってました。

おおくぼ:今回のこの曲にはこの人が合うんじゃないかって、エンジニアさんも4人ぐらいにお願いしました。

松永:あと、今回はライヴというものが前提ではなくなったというか。楽曲をどんなシチュエーションで聴くかを人に委ねられるようになったんですよ。この10年間は現場主義でしたからね。震災以降、リアルタイム感が大事になり、地下アイドルとフェスが主動して、楽曲もライヴ映えするものが前提になっていたんです。それが今の状況でバラされて、ベッドルームで鳴ってもおかしくないサウンドでもいいんじゃないかと。ベッドルームをライヴハウスにすると言うと、冗談みたいな言い方かもしれないけど、ベッドルームで聴いてもそこが現場になる曲にしたくて。

-環境に左右されない楽曲を作ろうと?

松永:そうですね。ライヴでどういうふうに演奏するのかわからない曲もありますから(笑)。

おおくぼ:以前だったら「シガーキス」、「白鍵と黒鍵のあいだで」の流れはなかったよね?

松永:うん、そろそろ大人の風格を魅せようと。デモの段階ではテンションの低い曲が多くなりそうだったけど、50パーセントできあがった頃にはむしろテンションの高い曲のほうが多くなって。

おおくぼ:マスタリングのときにだいぶお腹いっぱいだねって。

松永:ここ1~2年のJ-POPはリラックスしていたものが好まれていたけど、コロナ禍のステイホーム期間があったからなのか、これからは逆にテンション高めのものが来るのかな? とも考えています。