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LIVE REPORT

Japanese

アーバンギャルド

Skream! マガジン 2023年05月号掲載

2023.03.31 @中野サンプラザ

Writer : 杉江 由紀 Photographer:ミワ、ゆうゆっこ

桜舞い散る春の宵。甘美にして悪夢のようなディストピアをそこに描き出してみせたのは、病みと拗らせの権化のごとき存在であり、サブカル要素とカルト性を醸し出すことについては決して右に出る者がいないバンド、アーバンギャルドだ。 去る令和5年3月31日、失われゆく昭和の名建築、中野サンプラザにて彼らが盛大に執り行ったのは、題して"15周年記念公演 アーバンギャルドのディストピア2023 SOTSUGYO SHIKI"。アーバンギャルドの首謀者として、希代のアジテーターぶりを発揮しながらバンドを統べる松永天馬(Vo)、シャンソンをバックボーンにしながら、いかなるときも絶対的歌姫たる閃光をふりまく浜崎容子、大胆さと繊細さを併せ持ちながら音楽監督および鍵盤奏者としての才を見せるおおくぼけいという、それぞれに突出した傑物である3人がこの場で繰り広げてみせたのはつまり、年度末という日取りがなんとも意味深い、"卒業式"をモチーフとした終始シアトリカルなステージングだった。

まず、冒頭では松永によるエキセントリックな"校長式辞"が述べられ、そのあとには、"君の病気は治らない"という一節が連呼される「ももいろクロニクル」が、1曲目として場内へと響き渡ることに。ちなみに、このときの舞台上には、約15年前のMV「セーラー服を脱がないで」において浜崎が着ていたセーラー服とその髪型をクローン化した、通称"山の手少女"(ダンサー)たちが大量発生し、異様な雰囲気を生み出していたのもシュールで秀逸な演出であったと言えるだろう。

そればかりか、近年ほどは未だ"映え"が市民権を得ていなかった頃にいち早く生み出されていた、名曲「自撮入門」では観衆たちにスマホでの撮影許可がされる定番のひと幕や、曲に合わせアーバンギャルドのマスコットである"都市夫"(巨大キューピー)が場を賑やかすシーン、さらに本編中盤では浜崎と松永が各々ソロ曲を歌うくだりも用意されており、今回のライヴは全編が佳境と言っても過言ではない見どころに溢れていたように思う。

なお、浜崎が卒業生代表として答辞を述べる場面では、アーバンギャルドの辿ってきた15年の歴史を回顧しつつ、迷走や葛藤をしていたという時期について赤裸々に明かす場面もあったのだが、ここでは結論として"私はそんな過去から卒業します。アーバンギャルドはアーバンギャルドでしかありません"と明言。

加えて、このあとの「いちご売れ」では、独自デザインの施されたアーバンギャルド$札が、中野サンプラザ場内に桜吹雪よりも派手な札ビラ風吹として舞う刹那的光景を生み出し、そうかと思えばアンコールで歌われた「シガーキス」においては、ノイズ交じりな月面放送の音と弥生の月を背景に、美しく切ない物語が描かれていくことにもなったのである。

なお、この記念すべき"SOTSUGYO SHIKI"では、卒業写真撮影や松永から各メンバーへの卒業証書授与も執り行われ、その際には"私(わたくし)浜崎容子は、アーバンギャルドを卒業......しません!"の声と共に「セーラー服を脱がないで」が念押しのかたちで提示されただけでなく、エンドロールでは「さよならサブカルチャー」が流されるなかで、中野サンプラザが爆破され崩壊する映像演出が我々のことを持ち受けていた。つまりそれは、スクラップ・アンド・ビルドを示唆する、アーバンギャルドからのメッセージだったに違いない。

なんでも、やがて来る鬱陶しい梅雨時期の6月には、東名阪CLUB QUATTROでの"SICK'S TEEN TOUR"も決定したとのこと。ここから始まる16年目も、どうやらアーバンギャルドの病が緩解することはなさそうだ。


[Setlist]
1. ももいろクロニクル
2. いちご黒書
3. ワンピース心中
4. スカート革命
5. 自撮入門
6. さくらメメント
7. 映えるな
8. 生まれてみたい(浜崎容子ソロ)
9. 都市夫は死ぬことにした(松永天馬ソロ)
10. 神ングアウト
11. アルトラ★クイズ
12. アンドロギュノス
13. 都会のアリス
14. 少女元年
15. いちご売れ
16. ダークライド
En1. シガーキス
En2. 言葉売り
W En1. コマーシャルソング
W En2. プリント・クラブ
W En3. セーラー服を脱がないで

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