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INTERVIEW

Japanese

東京初期衝動

2022年12月号掲載

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Member:しーなちゃん(Vo/Gt)

Interviewer:荒金 良介

東京初期衝動の1stミニ・アルバム『らぶ・あげいん』が素晴らしい。さらにポップに振り切った楽曲もある一方で、ライヴでエンタメ感を爆裂させるパンキッシュなナンバーもあり、また、映画"グリーンバレット"主題歌/挿入歌の「エンドロール」、「コマンドバトル!」を含む全6曲。ポップな曲はよりポップに、ロックな曲はよりロックに、バンドの振れ幅を変幻自在に魅せつけた今作について、しーなちゃんに話を訊いた。

-前作『えんど・おぶ・ざ・わーるど』(2022年2月リリースの2ndアルバム)以降、ライヴの雰囲気がまた変わった印象を受けるんですが、しーなさん自身はどういうふうに感じていますか?

えぇと、さらに元気になりました(笑)。前作以降から音楽をまた掘ってますね。

-なるほど。元気になってきたというのは?

ライヴ自体がコロナ真っ最中のときよりも、コロナ前に戻ってきた感じがあるし。お客さんもシビれを切らしたのか、どんどん蛇口が緩まってきて......コロナの状況に合わせて、ポップな曲だったり、ゆっくりした曲を作っていたけど、またギャー! と叫ぶようなパンクっぽい音楽をやりたいなと。

-パンクっぽい音楽をやりたいと思い始めたのは、今の心境ですか?

今の気持ちもそうだし、今作にもそれで「梅毒」を入れたんですよ。

-ライヴハウスが徐々に活気を取り戻し始めて、そこでしーなさん自身も元気を貰っていると?

貰ってますね! ライヴ・バンドとして、ライヴでちゃんと映える曲を作ろうと。だから、前作よりも今作はみんなで歌えるところを増やしたり、ライヴで映える「梅毒」みたいな曲を入れたりしたので。

-「梅毒」は以前からライヴでもプレイしていて、この曲はこれまで以上に明るく開けた楽曲です。特にライヴではお客さんを巻き込んで、エンタメ性マシマシで届けてますよね。

そうですね。ライヴの蛇口が徐々に開いてきたから、お客さんも巻き込んでやってみよう、と自然とできるようになりました。

-お客さんを巻き込んだライヴ・アプローチも珍しいですよね?

それはあさか(Ba)が入ったことが大きいですね。柔軟性が出てきたから。あさかがライヴ・バージョンでは一度曲を止めて......名前を聞いて、ガチ恋の名前を入れようかって。

-それはあさかさんのアイディアだったんですね!

そうです。音源を作ったときはそういうアイディアはなかったけど、ライヴ・バージョンでエンタメ性が出てきたのはあさかのおかげです。

-以前よりもライヴ全体の雰囲気も前のめりに楽しんでいるように見えますが、いかがですか?

笑顔は増えましたね。自分がどんなライヴをしたら、気持ちいい状態になるのかわかってきたから。ピリピリしたライヴが好きなお客さんもいると思うけど、私的には笑顔多めで、客席を巻き込んで、エンターテイメント性を持ってやっていきたいから。

-なぜ今はそういうライヴを求めているんでしょうか?

なんだろう、コロナ前は一方的にライヴをしても、向こうがダイブ、モッシュ、声を出したりとか、対決みたいな感じでやれたけど。今はコロナ禍で、お客さんも何をやっていいのかわからないと思うから。「梅毒」でみんながライヴに参加できるアプローチを取ったのもそういう理由ですね。

-あと、ここ最近のライヴで一番驚いたのは、しーなさんがライヴでMCをするようになったことです。

それ、みんなに言われますね(笑)。それには理由があるんですよ。メンバーも歳を重ねると、キツくなってくるんですよ、正直な話。

-というのは?

ぶっ続けでライヴをやるのがキツくなってきて。なお(Dr)ちゃんなんて死にそうな顔をしてますからね。あさかもアンコール前で裏に戻ると、過呼吸みたいになってるし。これはちょっとかわいそうだなと。それでMCを入れるようになったんですけど......ほかのバンドは最近の出来事とかを話すじゃないですか。私はそれを自分の口で話すのが苦手なんです。コラムやTwitterで話すのは好きなんですよ。だから、MCは曲のことだったり、曲にまつわることしか言わないようにしています。ステージはあくまで音楽だけ、という縛りでこだわってます。

-その線引きはどういう気持ちから?

ステージでは"しーなちゃん"なんですよ。気を緩めてしまったら、ライヴができなくなりそうで怖くて。そこは一線を引いてます。

-ステージ上でコラムみたいな話をするのは違うと。

うん、ステージではパンクでありたいから。そのぶん、私生活は超女の子でいたい。ステージにそれを持ち込みたくないんです。たまに友達がライヴに来ると、びっくりするんですよ。いつものしーなちゃんと違うから、びっくりしたって。ステージはステージだから、そういうことなんだよねって(笑)。そうじゃないと、20曲もライヴできない。

-自分のギアをしっかり入れないと、やり切れないと。

そう!「高円寺ブス集合」(2019年11月リリースの1stアルバム『SWEET 17 MONSTERS』収録)とか無理ですね。こないだ川崎CLUB CITTA'のライヴ("リプレイスメンツ2022")でそれを意識したら、すごく良かったんですよ。あれは人生で一番いいライヴでした。ここ最近のライヴはぬるかった。

-ここ何本かのライヴは朗らかな雰囲気も漂ってましたよね。

うん、朗らかな感じ。それがぬるくて、気に入らなくて。で、川崎からギアを全開で入れてみたら、すごく良くて。服装も替えて、白いタンクトップにダメージジーンズを履いて、Freddie Mercury(QUEEN/Vo)や、長渕剛みたいな格好にしてみたんですよ。そしたら調子良かったです。最近聴く曲も昔のようにパンクパンクしたものに戻ってきたから、また燃え上がってきたんですよ。川崎のライヴは本当に良かったです。その映像も上がっているので、みんなYouTubeを観てください(笑)。

-では、音源の話に移りたいんですが、今作の最初のヴィジョンはどんなものでした?

いや、特にいつもなくて、作ってるときに見えてくるみたいな。今回もポップな曲があったり、「梅毒」みたいな曲があったり、前作の延長線上みたいな作品になっちゃいました。今回まではポップな感じで良かったのかなと。

-というのは?

これからはロック、パンクっぽい曲を作らないとダメだなと。「マァルイツキ」(『えんど・おぶ・ざ・わーるど』収録)、「ボーイフレンド」みたいな曲があってもいいけど、自分たちの代名詞になるような曲ではないのかもしれない、という気づきもあったりして。トキョショキ(東京初期衝動)はロックもポップも両方やれるのがいいところだから。今までのポップ・ソングも大切にしつつ、またロックな曲を作りたいなと。

-「ボーイフレンド」、「俺流サニーデイ・サービス」のようにさらにポップに振り切ってみて、このバンドにはロックやパンクの血が必要だと?

そうですね。自分たちはロック、パンクっぽい曲のほうが似合うんだろうなと。だから、私的にやりたいのはポップ盤、ロック盤、パンク盤とか、いろんな作品を作ってみたいですね。

-トキョショキはしーなさんのメンタルが楽曲に反映されることが多いじゃないですか。今作もまさにそういう内容に仕上がったと。そして、1曲目「ボーイフレンド」は歌詞の世界観を含めて、昔だったら絶対に生まれてこなかった楽曲ですよね。以前は憎しみ、悲しさが原動力になっていましたが、この曲はそうではないですよね。

そうですね。サビのメロディから出てきたんですけど、「Because あいらぶゆー」(『SWEET 17 MONSTERS』収録)みたいな汚い言葉をつけるよりも、メロディができたときにこの曲はきれいな言葉で作らなきゃなって。メロディがきれいだったので。世界観を崩してはいけないなと。