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INTERVIEW

Japanese

それでも世界が続くなら

2017年07月号掲載

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Member:篠塚 将行(Vo/Gt)

Interviewer:吉羽 さおり

バンドの始まりが、自分が信じている音楽と現実にある音楽シーン、日本の音楽シーンとのケンカだったんです


-それで今はBellwood Recordsという老舗レーベルでやっているのは面白いですね。

そうなんですよね。千葉でずっとやっていて、ライヴハウスの店員だから、最初は友達のバンドマンとかをライヴに呼ぶものじゃないですか。それがライヴハウスの店員として最低なんですけど、マジでひとりも呼ばなかったんです。ケンカだったんですよね、バンドを組むことが。誰かに見てもらって広げようとかではなくて。俺の音楽に本当に力があって、本当に音楽ってものが素敵だと思ったら、いい曲だと思ったら、来るんじゃないかと思ったんです。宣伝の魔法よりも音楽の魔法を信じたかったんです。今でもそうですけど、バンドの始まりが、自分が信じている音楽と現実にある音楽シーン、日本の音楽シーンとのケンカだったんですよね。これは僕がライヴハウスの店員だからこその極端な例で、バンドたちの音楽への信頼みたいなものを回復してあげたかったというのがあったんです。お前らみたいに、そんなふうに媚びなくても、音楽はもっと素敵なもののはずだって。そんなもんじゃ売れねぇって媚びて、友達同士、親友同士とケンカして、いがみ合って、ツアーでは会話もなくなっちゃうバンドもいて。広げることは大事なことかもしれないんですよ。それこそ今、Bellwoodの人がこうしてSkream!に掲載できるように、少しでもうちのバンドのことを知ってもらおうと動いてくれている。それをわかったうえでですけど。きっとバンドが賢く動く方がいい時代だと思ううえで、僕は、"賢くないと生き残れない世界ではない"っていう、最新の音楽の形を、ライヴハウスの店員として証明したかったのが始まりだったんです。

-あぁ、そこはずっと変わらないんですね。

僕、ライヴハウスでコピー・バンドとかを観て泣いちゃうんですよね。次のことなんて考えてないんですよね、今日でそのバンドは終わりなんですよ。でも、その日のために学業そっちのけで練習してきて。観に来たお客さんも、フェスみたいに盛り上がっていて。お客さんというか、来ているのは友達ですけどね(笑)。背伸びして、友達が応援してくれてないふうを気取って、人が入ってないスカスカのライヴハウスでは絶対写真を撮らないみたいな。そのプロパガンダの果てにしか誰かの心に届く音楽は生まれないのか、と。そういう形もあっていいと思うけど、それと同等に、ただひたすら音楽のことだけ考えて、勉強もダメで運動もダメで友達も作れなくて、クラスの端っこでノートに描いている絵がすげぇうまくなっていく奴のかっこよさが、ロックにはないのかよっていう。っていうか、本来ロックってそっちじゃないのかよ、っていうね。

-もともとはそういうものだし、そういうイメージですね。

みんなが信じたかったロック――優等生やクラスの人気者じゃない奴が戦えるところが、ロックでありパンクじゃなかったのかよっていうことですよね。そういう自分が信じた音楽と商業との戦いみたいなのが、始まりだったんですよ。最初は、もっと感覚的なことでしたけど。メジャーで一緒に組んでやってきて、1周まわって思うことですよね。もう1回、自分の信じた音楽で戦ってみたいなっていう。もう遅いですけどね、だいぶ。

-遅くはないんじゃないですか?

自分ではだいぶ遅刻したなと思ってますけどね。

-でも、これから戦いにいくよと。

うん。僕が初めてアルバムを作ったとき、ほぼ自主制作で1万5,000枚とか売れたんです。そのときに、ロック・リスナーが僕らに期待していたことって、戦ってほしかったと思うんですよ。商業ロックではグッとこない、テレビの音楽で感動できなかった奴ら、クラスの人気者にはなれなかった奴らが見つけてくれて。"いいぞ、もっとやれ"って言ってくれていたんだろうなと、今だから思うんですよね。あのときの俺は、それが全然わからなかったから、自分と目の前の人、ライヴハウスに来てくれる人の苦しさだったり、メンバーだったり、関わってくれる人で精一杯で。今もそうですけどね。すげぇ遅くなっちゃったし、当時僕らの音楽を聴いていた人の中には"結婚したんです"って幸せになった子もいて。結局俺は、何もしてあげられなかったなと思っているんですよね。そういう意味ではやっと、俺も待ち合わせ場所に呼ばれてたのかって気づいた感じなんです、今回のアルバムって。そのとき、待っていた人はもういないかもしれないけど。

-アルバムの最後の曲、11曲目に収録された「僕がバンドを辞めない理由」に、そういう思いが書かれている気がする。

あぁ、そうなんですよね。ドキュメント的にただ書いてみようって、今回は入らなかった曲もあるけど、10曲作って。レコーディングも終わって、10曲をミックス・ルームで聴いて、俺はこういうことだったなっていうのが最後の曲です。めちゃくちゃ怒ってるなって思ったし。友達が殴られたら嫌じゃないですか。僕は友達がいなかったから、自分の音楽を好きだって言ってくれた、会ったこともない人が友達みたいなものなんです。その子たちが、Twitter上でもなんでも、今も家庭環境や学校、仕事場でつらいと言っていて。普通、友達が殴られたら怒るよねっていう。曲の原動力が変わらないんです。そういう曲ばかり書いてるんだなって自分でも思いました。

-10曲で完結したアルバムだと思いますが、この「僕がバンドを辞めない理由」があって、言っちゃえば、救いがあるっていうのかな。

救いがあってしまうのが、僕の最大の良くないところだと思っているんですよね。お前は何様だと。自分によく思いますから。

-でも、それを大上段で言っているわけじゃないですよね。友人のように隣にいるだけでも救いになる人はいるし、救いたいんだと言わなくてもその音が鳴っていることも救いになるし、そういう救いだと思うんです。

俺がeastern youthを好きな理由と一緒みたいなものですね(笑)。

-怒ったり悩んだり叫んだりしてるけど、eastern youthも音楽としてすごく優しいじゃないですか。このアルバムも、音はいつにも増して轟々としていますが(笑)、同様の感覚があるんじゃないでしょうかね。

はははは(笑)。うまくいっちゃいましたね。そういう音を出したかったんでしょうけど、いつの間にかそういう音が出せるバンドになっちゃったんです。練習したからかな(笑)?

-一緒にいること、時間を過ごしていることでのグルーヴなんじゃないですか。

あると思います。今日はインタビューに来てないから、逆に言いやすいんですけど。うちは仲もいいし、同じバンドだけど、友達だから一緒の考えになっちゃいけないと思うんですよね。ロック・バンドは宗教じゃないから。みんなが同じ考えのもとで、集う必要はないと思うんです。うちのメンバー3人は、僕みたいな考えをしてないと思っていて。僕みたいな人のことは嫌いじゃない、むしろ好きだと思うんですけど、たぶん"しのくん(篠塚)また変なこと言ってるよ"って奴もいると思うし。"しのさん何言ってるかわかんないけど、嫌いじゃない"みたいな人もいれば、"しのくん、頑張れ"と思ってるメンバーもいますしね(笑)。そういうバンドでいようっていうのは、さっきの結成のときの話じゃないですけど、ありました。4人がひとりになるんじゃなくて、4人でいようっていう。

-ひとりひとりで、4人ってことですね。

そう、ひとりひとりの人間でいたい、別の考え方を持っていようよ、っていう。バンドってそうでいいのかな。同じ考え方じゃないけど、同じように戦って、なんとなく僕が言いたいこともみんなわかってくれて、俺もみんなのことがわかってきて。バンドになったんでしょうね。遅れた待ち合わせ場所に行くか、っていうのはそれもあったんです。準備できたっぽいなっていうか。そのスタート・ラインのアルバムにしたかった。次のアルバムで、なんか約束を果たせたらなって思うんです。