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INTERVIEW

Japanese

a flood of circle

2017年01月号掲載

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Member:佐々木 亮介(Vo/Gt) 渡邊 一丘(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

-来日のオファーをしたところ、ザブさんのマネジメントさんには難色を示されたそうですが。

佐々木:単純にルールとしてエンジニアの派遣は通常ありえないらしくて、一度マネジメントに断られたんです。でも来日オファーの話がザブの耳に入って、"行きたいから行く"と言ってくれて強行で来てくれた。いっぱい万札積んで、という世界ではなくマジで日本に来たいから来ただけ......っていう感じが、ザブのバックパック1個に出てました(笑)。"こんなすげぇエンジニアがこんなライトに20時間かけてくるんだ!"と感動して。それがザブの人間性ですね。熱い人で、仕事しに来てる以上に、友達に会いに来るみたいな感覚で来てくれたところはあると思います。

-それはAFOCとも似ているような。

佐々木:それはでかかったと思いますね。向こうに行って人種、言語とか関係ないなと思ったのは、曲を聴いて"これがいい!"と思うポイントが一緒だったこと。「El Dorado」の曲のイメージをいっぱい説明しなくても彼はわかってくれたんです。趣味のレベルも含めて、ザブともとから繋がってたところはあるんじゃないかな。ザブが日本に来たときに"これ好き?"って聞いたら"それ俺が録ったよ"と言われたりもしました(笑)。ザブはジャンルとかに興味がなくて、ただかっこいい音楽が好き。だからどんなアーティストでもやれるし、区別や差別する意識がないんです。感覚でかっこいいものを作ってるだけ。

渡邊:彼自身、プロデューサーでもあり、アーティストでもあり、エンジニアでもある。いろんな要素を持っていて、固定観念がないんですよね。自分を決めつけている部分がなくて、そこもすごく自由というか。垣根がないから、自分の思ったアイディアがあったらすぐ出してくれる。めちゃくちゃ気のいいお兄ちゃん、おじちゃんですね。

佐々木:おじちゃんとは言っても、ザブは34だからね(笑)。俺とナベちゃんは30だから、知ってて聴いてるバンドがだいたい同じで。そのマッチングもあったと思う。

-お話を聞けば聞くほど運命的です。感覚派のザブさんが強行スケジュールでAFOCのために来日したということは、AFOCとの3曲のレコーディングを有意義だと感じたからでしょうね。

佐々木:うん、それは燃えましたね。アルバムを12曲入りにしたかったので、"3曲できてるからあと9曲書こう"と思って、自分の中でイメージを作っていたとき"ザブが来るならもっとこうしたいな"と考えたりもしたので。ザブと作ることを前提にして曲を書いていた部分もあります。複数のエンジニアと録音したアルバムは、パズルのピースを使って1枚の絵にする感覚なんですけど、今回のアルバムは1枚の絵を描くようにして作れた。ロンドンの続きを作れたところはあるかな。ロンドンから日本に帰るとき、ザブと"次は一緒にアルバムを作りたいね"なんて話してたんですけど、まさかこんなに早くそれが実現できるなんて思ってもみなかったから。ロンドンと同じ空気を繋げられたのは、アルバムとしては良かったのかもしれないですね。

渡邊:あと、彼との間で"陽"の人間関係やムードを作れたんですよ。そういうものがバンド内にあったのは、俺的には久しぶりで。いままではだめな部分を消していっていいものを作っていく方式だったんですけど、今回のザブとの作業で思い出したのはいいと思うものをブーストすること。やれることやりまくろうぜ、ちょっと溢れちゃったいいものは次の機会にとっておこう――そういう考え方を思い出したというか。それがバンドにも残って継続していて、結構楽しいんですよね。それがライヴにも影響していると思います。

-これだけザブさんの案を取り入れてもしっかりAFOCの音になっているのは、10年守って磨いてきた屈強なバンドの個性などがあるからでしょうね。

佐々木:やっぱりスタイルは大事だと思いますね。ザブは音を足したがるんですけど、「The Greatest Day」(Track.10)では半分くらいの音数にしたり、引き算も大胆なんですよ(笑)。そのバランス感覚がいい。AFOCのライヴも楽しいときもあれば、緊張感があるときもあって、でもどっちかだけじゃだめで。それと一緒で、日本人向けの音楽とか外国人向けの音楽とかもない、みんながかっこいいと思う音楽を作るだけ。このアルバムはそれを目指しましたね。本当にかっこいいこととはなんなのかを、曲を作っている時点でめちゃくちゃ悩んだし。それが成果として出せたと思います。

-新しいトライが多かった?

佐々木:全部のコード進行やメロディにそれが出ていると思います。ある程度自分たちの手札で勝負する部分と、ちょっとだけでも変えようと思う部分と両方があって。いままでは結構デモを送って、それに返してもらったあとに一発で録っちゃうパターンが多かったんですけど、今回はいつも以上にプリプロでスタジオに入ってたくさんセッションもしたから、姐さんのアイディアもいっぱい入ってるし。それはすごく影響しています。

-それだけ1曲1曲に時間がかけられたんですね。

佐々木:ロンドン・レコーディングはギリギリまで曲作りに悩んでいたので、そのときにザブから"とにかく早くデモを送ってこい"と怒られて(笑)。それでアルバム曲はかなり早い段階から送ってたおかげで、プリプロに時間が使えたんです。けど、ザブが日本に来てみたらそのデモを全然聴いてなかったのにはびっくりしました。あははは!

渡邊:自分が早く作れって言ったのに(笑)。

佐々木:"デモある、OK! 聴いてないけど!"って(笑)。それは日本に来るギリギリまでザブがStingとの仕事で忙しかったからで、そんなスケジュールのなか来てくれたということなんですよね。だから物理的な意味でもザブからのいい影響はたくさんあるんです。あと、時間が取れたという意味では(サポート・ギタリストとして夏まで参加していた爆弾ジョニーの)キョウスケの影響もあると思いますね。

-キョウスケさんが?

佐々木:いままでは"次のギタリストどうしよう?"ということが多かったんですけど、俺らも爆弾ジョニーを応援してたからキョウスケの背中を押せたし、いまサポート・ギターを弾いてくれている(アオキ)テツが現れたのもレコーディング中だったので、そこでいいバトンタッチができたんですよね。だから前を向く要素しかなくて、作品自体と向き合える時間が多かった気がします。レコーディングをしながらテツに過去曲のギターを教えていて、それも面白かった。あいつはレコーディングには参加していないけど、そのときに"こいつめっちゃ熱いじゃん!"と思った俺が、そのあとギターのレコーディングを頑張ったりして。テツはいつも"このバンドに骨をうずめるつもりで来た"と言っているので、あいつのそういう心意気もこのアルバムには出てると思いますね。

-歌詞の面では聴き手に語り掛けるものが多い印象がありました。

佐々木:今回はすべての曲に"この人に向けて書いている"というのが明確にあるんです。技術的なチャレンジもあったんですけど、そういう書き方は自然と言えば自然だったんですよね。俺はいままで自分が覚悟を決めた瞬間のことをバーッと歌っていたので、次の段階に入れたのかなと思いました。