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INTERVIEW

Japanese

カラスは真っ白

2016年10月号掲載

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Member:ヤギヌマ カナ(Vo/Gt) シミズ コウヘイ(Gt/MC) オチ・ザ・ファンク(Ba) タイヘイ(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

アニメ"ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン"のエンディング・テーマ曲やPS4®用ゲーム"LET IT DIE"の公式企画ソングなどのタイアップ曲に加え、シミズコウヘイは俳優の桐谷健太が歌う楽曲のサウンド・プロデュースなどを担当し、オチ・ザ・ファンクとタイヘイは映画"何者"の劇中バンドのメンバーとして出演。ヤギヌマカナは音ゲー"CHUNITHM"の導入楽曲へ歌唱で参加するなど、バンドだけでなくメンバー個々の活動も精力的なカラスは真っ白。ミニ・アルバム『ヒアリズム』から約1年ぶり2枚目となるアルバム『バックトゥザフューチャー』はその充実さを裏づける、まさしく会心の一撃ともいえる作品となった。時代を自在に行き来する知的なポップ・センスとロック・バンド特有の躍動感に、あなたも翻弄されてみてはいかがだろうか。

-今作『バックトゥザフューチャー』は、これまでカラスは真っ白が積み上げてきたものを全部放出したようなアルバムだと思いました。ノー・コンセプトで作ったとおっしゃっていた4thミニ・アルバム『ヒアリズム』(2015年リリース)のダイナミズムはそのままに、コンセプチュアルな要素もあって。今作のトピックのひとつに"メンバー全員が作詞作曲"というものがあると思いますが、それは今作のテーマ"ポップの現在過去未来"が定まる前に決まったことなんですか?

シミズ:全然前ですね。今作は"ポップの現在過去未来"がテーマだと銘打ってはいますけど、これまでの作品の中で今回は一番コンセプトがないなと。北海道から上京して、ライヴをたくさんして、アルバムを出して、個々のいろんな活動があって――そういう活動の中で、"次は2ndフル・アルバムを作ろう"とかそういう考えもなしに"細かいことは抜きにして、好き放題やろうぜ"って。"とにかく自分たちがいいと思う曲をたくさん作ろうよ。曲がたくさんできたらフル・アルバム。少なかったらミニでもいいじゃん"という感じでメンバーそれぞれが思ういい曲を作って、"ヤギヌマカナ"というフィルターを通して"カラスは真っ白"という楽曲にしようと思いました。だからすごく単純で原点的なもの、初期衝動的なものが強く出たアルバムなんじゃないかなと。これまでのコンセプチュアルなアルバムの作り方をバン!! と、全部捨てました(笑)。

ヤギヌマ:ふふふふふ(笑)。いい意味で何も考えずに作っていた記憶があります。

タイヘイ:ふざけて遊びながら曲を作っていたら、できた(笑)。

-そうだったんですか。アルバム内の起承転結がしっかりしていてドラマチックだったので、最初聴いたときに映画を観ているようなアルバムだなと思ったんです。そしたらタイトルは"バックトゥザフューチャー"ですから、てっきり"○曲目にこういう曲を入れる"という設計図のようなものがあって、そこに当てはまる曲を作っていらっしゃったのかと。

タイヘイ:いやいや全然。俺らそんなに器用じゃないっす(笑)。

オチ:曲がある程度できてきた段階で"あ、こういう曲がないからあるといいよね"と言って作ったりして。それによってアレンジを変えた曲はあったんですけど、最初からコンセプトが決まっていたわけではないですね。

タイヘイ:まずメンバーそれぞれがDTMでデモを作るので、その段階では全然バンド・サウンドじゃないんですよ。それを"この役割はシミズにやってもらおう"とか"ここでヤギヌマにこうきてもらおう"とか、そういう方面には頭を使いましたね。これまでにやってきたことのないサウンドにも挑戦しているので、想像力はフルに動かして。

シミズ:ノー・コンセプトでもアルバムのストーリー性が必然的に生まれてきたから、これまでコンセプチュアルに作ってきた意味があったのかなって。好き勝手に作りたいものを作った結果、それぞれビートも作り方も違うから個性がすごく光る曲が揃いました。全曲いいので僕的には全曲がリード曲のつもりです。こねくり回した今までのトリッキーなカラスは真っ白もすごくいいと思うんですけど、いろいろな経験を経て各々ミュージシャンシップが高まってきたので、カラスは真っ白というバンドのイメージにとらわれずに作りたかったし、本当にバンドを始めたときのような気持ちで作れたんです。

-シミズさんは『ヒアリズム』のときも同じようなことをおっしゃっていた気がしますが。

シミズ:あ、そうですか? じゃあ、あんまり変わってないのかも(笑)。『ヒアリズム』は"ノー・コンセプト"、"原点回帰"とは謳っていたんですが、今となってはある意味"原点回帰"というコンセプトだったなとも思うんです。"新体制後初の作品だし、原点回帰しようよ"みたいな感じというか。でも今回はそういうのもなくて、ほんとに何も考えてない(笑)。何も考えずにいいと思う曲を作って、できあがったものを聴いたら"あ、原点に戻った感あるよね"というイメージでした。『ヒアリズム』は大人が子供の心を取り戻そうとしたアルバムで、『バックトゥザフューチャー』は無意識に本当の子供心を勝ち得た気がします。曲ごとにはコンセプトがしっかりしているんですけど、アルバムのコンセプトとなると話は別かな。だから『ヒアリズム』はここに至るいい通過点だったなと思いますね。

タイヘイ:大事なライヴ前のリハーサルのときもふざけて"結局今日のリハ意味あった?"みたいなことが結構あるんですけど、今回のアルバムはそれをレコーディングでやった感じですね。

オチ:本当に作ってるのが楽しくて。それに尽きますね。

-たしかに、音にはやんちゃな感じがすごくあります。

タイヘイ:あぁ、そういうテイクを積極的に採用したところはありますね。

シミズ:今自分たちができる一番面白いことをやりましたね。「浮気DISCO」(Track.2)とか「YASAI FUNK」(Track.8)とか悪ふざけでしかない(笑)。「浮気DISCO」のアレンジは超笑いながら作ってました。曲終わりの"嘘でしょ!?"感はものすごいですよね。

-「浮気DISCO」は全員がとても過剰で、初めて聴いたとき笑いました(笑)。詞の世界観も浮気がテーマで、それを演じるようなヴォーカルも、どファンクなリズム隊もいい意味で大げさで......そして極めつけがギター・ソロ!

シミズ:あ、わかっちゃいました? 光るものありました(笑)?

タイヘイ:あれはやりすぎだよ(笑)。でもウケ狙いじゃなくて本気なんですよ?

シミズ:実はほんとに最初、"エロいアルバム作ろうぜ"、"全曲エロくしようぜ、飛びぬけようぜ"と盛り上がって(笑)。エロをテーマにして作った曲で唯一残ったのが「浮気DISCO」なんです。実は「魔法陣より愛を込めて」(Track.1)も最初"エロいこと教えて~"みたいな歌詞が乗ってたんですけど......別にエロを乗せる必要ねぇなと思って全部消しました(笑)。