Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

INTERVIEW

Japanese

カラスは真っ白

2015年01月号掲載

いいね!

Member:ヤギヌマカナ (Vo/Gt) シミズコウヘイ (Gt/MC) タイヘイ (Dr)

Interviewer:天野 史彬

いやー、ほんと面白い。このカラスは真っ白というバンド。こんなに論理的なのに、なんでこんなにぶっ飛んでいるんだろう! 肉体を刺激するファンクのグルーヴと、思考を刺激するポップの神秘の融合。5曲入りの新作『HIMITSU』は、そんなカラスは真っ白の魅力がより濃密に凝縮された1枚だ。バンドの筋力は格段に上がり、ミステリアスさにも一層磨きがかかっている。前回に引き続きヤギヌマカナとシミズコウヘイ、そして今回はドラムのタイヘイにも話を訊くことができた(残念ながらベースのヨシヤマ・グルービー・ジュンは欠席)。話せば話すほど覗き込みたくなる、秘密の話をたっぷりしてきた。

-新作『HIMITSU』は、前作『おんそくメリーゴーランド』で作ったカラスは真っ白のバンドとしての芯をより太くしていくような作品だと思いました。自分たちではどんな作品を作ろうと思って制作を始めたんですか?

シミズ:まず、"カラスは真っ白とは何か?"っていうことが、今までの作品だけだと自分たちにとっても、リスナーにとっても、いろんな要素が四方八方に飛び散っていてわからない状態だったかもしれないって思っていて。でも、前回『おんそくメリーゴーランド』をリリースしたとき、「fake!fake!」っていう曲で"カラスは真っ白の芯はこれだ!"っていうのを、もっとリスナーに届けられるかもしれないっていう手応えがあったんです。なので今回は、その芯――つまりカラスは真っ白のグルーヴ、ファンクの要素、いち個人としてのヤギヌマカナの魅力――をより打ち出せるアルバムにしたいっていうのがあって。結果として、よりシェイプ・アップされた、ソリッドな"カラスは真っ白はこれだ!"っていうアルバムになったかなって思います。

-実際にサウンド面を聴いてみても、前作は曲毎にいろんなことをやっていたけど、今作はファンクやソウルの要素をポップに、ロックに聴かせるっていうところに実直に向かい合っていますよね。

シミズ:そうですね。今回は、余分なものを削ぎ落とそうっていう意識も結構あって。カラスは真っ白はファンクだったりディスコだったり、ルーツになる音楽に現代的な要素を加えたり、ポップな要素――つまりヤギヌマカナの要素に融合させてみたりっていうことに挑戦してきたんですけど、今回のアルバムは、本当に余計なものを削ぎ落としてて。例えばジャム的な要素が今回は少なくて。今までは雰囲気で作ってしまっていたところも結構あったんですけど、今回は、ちゃんと音符から組み立てるイメージで、曲全体、アルバム全体を凝縮した形にできたかなって思います。

-具体的にレコーディング現場での変化はありましたか?

シミズ:今まではスタジオでイメージを共有しつつも、各々のプレーは各々でっていう感じだったけど、今回はメンバー同士で意見を言い合うようになったり。"この音符はこうだから、君はこうしてほしい"っていうことを言い合いながら、一丸となって楽曲制作に取り組めたのが1番大きな進歩だったと思いますね。まぁ、最終的にイニシアチブを取るのはヤギヌマで、彼女が嫌か嫌じゃないかを判断するんですけど(笑)、でも楽曲面のイニシアチブはドラムのタイヘイだったり私だったりが、意見をそれぞれ言い合う形で取っていって。製作期間は短かったんですけど、それが効率よくいったなって思いますね。どんどんどんどん自分たちがいい意味でどツボにハマっていくというか。曲に対する集中力が今までのアルバムとは全然違いましたね。

-なるほど。ヤギヌマさんとタイヘイさんも、今シミズさんがおっしゃったような変化は実感されてましたか?

ヤギヌマ:よりそりっどに、かつ、ちょっとえもーしょなるに、というか。あまりかじょうなそうしょくはせずに、しんのぶぶんをみせれるいちまいをつくりたいとは、わたしもおもってました。

タイヘイ:前回まではガチガチに気合入ってたんですけど、今回はわりと楽曲に集中して、熱の入ったトラックが録れればそれで全部オーケーかなっていうぐらいのテンションでやれるようになったのが大きな変化だと思いますね。曲を判断する部分が変わったというか。

シミズ:楽曲を制作していくうえで、これがいい/これが悪いっていうことを判断するスピードが上がったんですよね。ずっとズルズル引きずらないでバシッと止める勇気とか、それを進化させていく勇気がしっかりついてきたかなって思います。

-なるほど。では、今言ってくださったような変化があった中で、今回の『HIMITSU』というタイトルが意味するコンセプトはどういうふうに生まれたんですか?

シミズ:今お話したのは、自分たちの音楽的、根源的な変化なんですけど、それ以上に、この『HIMITSU』というアルバムで1番言いたいことっていうのが、ひとつありまして。本当はリスナーのみなさんにはアルバムを買っていただいて、"HIMITSU=秘密"とは何か?っていうことを見つけてほしいんですけど、実は、"秘密"っていうのは、今回は"愛という何かしらのもの"、あるいは"感情"っていうものが答えなんです。やっぱり、バンドをやっていく、歌を歌っていく中で、1番感情を届けやすいのは愛の歌だったり、何かしらメッセージ性の強いものだと僕は思っていて。他のアーティストのみなさんも、必ず愛をテーマにした歌があるじゃないですか。人との関係を歌ったものでも、何かものに対する愛でもいいんですけど。でも、自分たちってそういうことを一切歌にしてこなかったんですね。愛をテーマに楽曲を作ったことがなくて。なので、愛というものが何か、自分たちの中ではわかんない状態だったんです(笑)。でも、そういうものを伝えてみたいっていう想いが自分たちの中でも強くなったんですよね。なので今回は、"秘密"="感情"="愛という何かしら得体の知れないもの"っていうコンセプトが最初にきてますね。で、本当に楽曲すべて、アートワークすべてに"秘密"="愛"ということがわかる言葉遊びとかが隠されてるんです。例えば曲だったら、「9番目の「?」」っていう曲が収録されているんですけど、その歌詞の中で、"パスワードはあなたの"のあとにピーっていう放送規制の音みたいなのが入ってるんですけど、そこで実際には"愛"って歌ってるんです。聴こえないですけど。あと、「9番目の「?」」っていうタイトルにも意味があって。

ヤギヌマ:あるふぁべっとでかぞえると、ABCDEFGHI......9ばんめが"I"、つまり"あい"なんです。

シミズ:で、9番目の"9"が"Q"、つまりクエスチョン("?")になるっていう。そういうところに秘密が隠されていたり。あとアートワークにもそれは影響していて。ヤギヌマが今回はジャケット写真に写ってるんですけど、彼女が指差しているのは"HIMITSU"の"I"の部分なんです。で、その"I"の形がヤギヌマのバックに、ストライプみたいに描かれていて。ジャケットを開いていただいても、また新たな発見があるような形になっていて。