Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

Skream! 公式X Skream! 公式YouTube Skream! 公式アプリ

INTERVIEW

Japanese

fhána

2016年05月号掲載

いいね!

Member:佐藤 純一(Key/Cho) yuxuki waga(Gt) kevin mitsunaga(PC/Sampler) towana(Vo)

Interviewer:吉羽 さおり

-いいですよ、これがアルバムの中でも変化球として味を出してるし、すごく爽やかなムードを生み出してます。

yuxuki:この曲は、クラムボンのミトさんがベースなんです。データでやりとりをしていたんですが、デモとはまったく違うベースで音源が返ってきたんですよ(笑)。それが面白くてそのまま使ってますね。結果、どファンキーなベースが入ってきて、あの感じを生み出してるんです。

-80sっぽい、それもニュー・ミュージック的な雰囲気がありますね。

yuxuki:デモでは、もうちょっとテクノやエレクトロみたいな80s感になるはずだったんです(笑)。僕は基本的に、誰かにスタジオ・ミュージシャン的なことをお願いするときは、その人の音が好きだからっていうので選んでいるので。自分が思っている形を表現してもらうのではなくて、その人の音が欲しいんですね。「c.a.t.」(Track.9)でベースをお願いしているthe band apartの原(昌和)さんもそうですけど、そういうのを楽しんで作っているんです。あとは、僕が作った「little secret magic」(Track.5)が、fhánaでは珍しく"せーの"でやっていて。4テイクくらいで録れたものなんです。

-ちなみに、ミトさんとはどういった繋がりだったんですか。

yuxuki:ミトさんは、結構前から会っていたんですよね?

佐藤:ミトさん自体、アニメも大好きだし、アニソンの仕事もされていて、知り合いの知り合いくらいの感じでずっと繋がってはいたんです。ミトさんに初めて曲をオファーしたのが、1stアルバムのときだったんですけど、それ以前からわりとfhánaのことは気に入ってくれていたみたいなんです。"天体のメソッド"というTVアニメで「星屑のインターリュード」(2014年リリースの5thシングル)という曲がエンディング・テーマになったときも、テレビで放送された曲を聴くやいなや、"あの曲、すごくいいね"ってテンション高いメールを送ってくれたりして、気にかけてくれてるなぁと。

-ミトさんのツボやポップ性をくすぐるんですね。

yuxuki:たぶん佐藤さんとは、好きなものがすごく似てるし、fhánaのプロデューサーも趣味がどん被りしてるんですよね。TM NETWORKとかYMOとか、何から何まで。だから、親和性が高いというか、すっとハマるのかな。ありがたいですよね。

-そして、kevinさんの曲でTrack.6「Antivirus」は、かなりクラブ感が濃厚で、クールなサウンドに仕上がってます。

kevin:ちょっと前によく聴いた日本のR&Bのような雰囲気も入れられたのかなと思いますね。この曲ができあがるまでに、デモを作ってはボツになり、という感じで試行錯誤していたんです。結構、普段の手癖を使ったような作り方ではありつつも、それだけだと今までと同じことをやってるだけなので。なんか、新しいことをしているフックが欲しくなって。最終的にこの形になりました。1stアルバムでもこういう曲はなかったし、新しい感じだなと思ってもらえるんじゃないかなと。

-このクールなサウンドと、towanaさんの歌声がうまくハマってます。

kevin:クール寄りですよね。裏話としては、僕が作る音楽だったり、もう1曲の「Appl(E)ication」(Track.10)でも、作詞の林さんが気を遣ってくれたのか、僕がデジタルな機械が好きだったりするところを汲んで、デジタルっぽいタイトルや歌詞の内容になっているんですね。fhánaは、エモーショナルで生っぽい質感と、デジタルな冷たさとが融合した音楽だと思うんですけど。そのデジタル部分を林さんが押し出してくれているのが、この2曲かなと。

yuxuki:そういえば、今ふと思い出したんですけど、「Antivirus」のギターのレコーディングをするとき、なぜか間奏のコードが決まってなくて。

kevin:ああ、そうそう。

yuxuki:ドラムがズンドコズンドコいってる間奏だなと思って聴いてるうち、これはこれでいいんじゃないかなって。UNDERWORLDの「Born Slippy(Nuxx)」(1995年リリースのシングル『Born Slippy』収録曲)のビートがズンドコしてるところみたいな感じで、ここは、もはやコードとかメロディアスな感じを入れるんじゃなくて、これでいいんじゃない?って。

kevin:なので、これにもうちょっとカオスな音響をつけようという話になり。

yuxuki:とういことで、ノイズ祭りになりました。

kevin:そのときはもう歌詞も全部決まっていて、"Antivirus=ウィルス"と入ってるくらいだから、ちょっと毒々しい部分も出してもいいかなと(笑)。さらにもうひとつ裏話をすれば、この歌詞を書いてるとき、林さんはちょうどインフルエンザにかかってました。

yuxuki:それで、"Antivirus"(笑)?

-(笑)towanaさんも今回、いろんなタイプの曲を歌いこなしていってますね、全編英語詞の曲もあれば、「Antivirus」のようなR&B調の曲もあったり。

towana:そうですね、1stアルバムよりも曲調の幅が広くなっていますね。だからといって"歌いこなせない"ってことはなかったですね。制作のスピードがどんどん上がってきていて、現実的な話をするとレコーディング当日に歌詞が上がってくることも増えてきたので。すぐに自分の中でどう歌うのかを決めて打ち返さないといけないという、瞬発力は上がった気がします。1stアルバムを出したあとにツアーをやって、たくさんの方に見てもらう中で、どういうふうに歌えば、どう聴こえるのか、という聴き手を意識した歌い方を、より考えるようになりました。それがこのアルバムには出たかなと思います。だから、1stアルバムのときよりも、私の中でも表現力の幅が広がっていると思います。