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LIVE REPORT

Japanese

fhána

Skream! マガジン 2018年08月号掲載

2018.06.24 @Zepp DiverCity TOKYO

Writer 吉羽 さおり Photo by Soichiro Suizu

今年3月にリリースされた3rdアルバム『World Atlas』。"世界地図"と名付けられたアルバムは、fhánaにとってひとつの集大成と言える作品であり、またこれから先の世界へと目を向けさせて、一歩を踏み出していくための羅針盤的な作品だ。そのアルバム『World Atlas』を携えたツアー"fhána World Atlas Tour 2018"の最終日となる東京公演、1曲目は2012年の自主制作盤1stミニ・アルバム『New World Line』のオープニング曲である「kotonoha breakdown」でメロウにスタートした。佐藤純一(Key/Cho)のピアノとtowana(Vo)の歌のみという美しく静謐な「kotonoha breakdown」から、続く「わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~」では、目の前の景色を一変させるような色鮮やかな分厚いバンド・サウンドで、会場の温度も跳ね上げていく。そして「star chart」からは、アルバムの流れをなぞるように「Rebuilt world」、「ムーンリバー」、「Hello!My World!!」と続けていった。馴染みのある曲順で、観客はライヴ空間に、そしてfhánaの音楽世界にもスムーズに滑り込んでいく感覚だ。変則拍子とBON IVERを思わせるエフェクティヴな多重ヴォーカルの絡みが美しい「snow scene」は、前半のハイライト。kevin mitsunaga(PC/Sampler)が奏でる歪みのあるトイ・ピアノ的なフレーズとアップライト・ベース、そこにyuxuki waga(Gt)のギターが重なっていって、エクスペリメンタルなアンサンブルを繰り広げる。ゆったりとした歌に身を委ねていると、いつの間にか目の前には音の小宇宙が広がっていた。旅をする味わいのあるライヴだ。


"「World Atlas Tour」へようこそ。この旅ももうすぐ終わりを迎えようとしています。今日、このZepp DiverCity(TOKYO)が僕たちの旅の終着駅です"と、佐藤はMCをする。そして"終わりであり始まりの瞬間を、この場にいるみんなと迎えたい"とつけ加えて、このライヴがfhánaにとっての新しい始まりであることも伝え、中盤は晴れやかに、躍動感のある「ユーレカ」からスタートした。towanaとkevinがガイドのようにフラッグを振って、シンガロングしながら観客を先導していく「reaching for the cities」は、towanaのラップも楽しめる1曲。会場がパッと明るくなる陽性のムードから、牧歌的な温かさを持った「アネモネの花」、そして佐藤が鍵盤をギターに変えyuxukiとのツイン・ギター編成でアグレッシヴに響かせる「現在地」、あるいは「光舞う冬の日に」でグルーヴ感のあるバンド・サウンドを観客に食らわせるなど、タフで、呼吸感のあるバンドとしての強さを見せた。グッとフロアの一体感が高まったところで、再びtowanaがフラッグを振るアルバム・タイトル曲「World Atlas」から、瀟洒なフィリー・ソウルのフィーリングをfhána流に昇華したヒット・チューン「青空のラプソディ」では、kevinが思いっきりダンス(振付)をし、観客も彼にならって会場を楽しく揺らす。そのステップを止めないダンス・チューン「星屑のインターリュード」、「Relief」とクライマックスを更新しながら、ラストに選んだのは"旅の途中"だと歌う「calling」。この"旅の途中"という意味合いやその景色は、2016年にシングルとしてリリースされたときと、アルバム『World Atlas』に収録した現在とでは、違ったものになっている。この2年の間の、fhánaのバンドとしての体験、国内外でのライヴの体感、曲制作のプロセスで掘り下げる音楽の持つ可能性や、芽生えた新たな意識によって、彼らの旅はよりスケールの大きなものになった。内省的、空想的な世界を超えて、日常の果てしない広がりに目を向けた、フィジカルでエモーショナルな表現へと向かっている。この日の「calling」の余韻は、どこまでも美しい響きだった。


観客の歓声で、2度のアンコールに応えたfhána。アンコールでは、アルバム『World Atlas』中でも、とても大事なメッセージが込められた「It's a Popular Song」や小沢健二 featuring スチャダラパーの「今夜はブギー・バック」のカバーなどを披露する。そして、この夏は恒例の"Animelo Summer Live 2018"に加えて、ロック・フェス"ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018"への出演が決まったことをアナウンスし、"「アニメロ(Animelo Summer Live 2018)」でもロック・フェスでも、どこに行ってもfhánaはfhána。安心してこれからもついて来てほしい"(佐藤)と告げた。ベスト・アルバムの制作や、新たなプロジェクトが始動していることも告知し、最後の最後に「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」をフロアに贈って、"World Atlas Tour 2018"は閉幕。次のアクションが楽しみでならない一夜となった。

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