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INTERVIEW

Japanese

fhána

2024年01月号掲載

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Member:佐藤 純一(Key/Cho) towana(Vo) kevin mitsunaga(Sampler etc)

Interviewer:吉羽 さおり

メジャー・デビューから10年の節目となった2023年、バンドとしてひとつの集大成を迎え、勢い良く新たなフェーズへと突入したfhána。メンバー脱退、新体制でのツアー"fhána Looking for the New World Tour 2023"、10周年記念ライヴ[fhána 10th Anniversary SPECIAL LIVE "There Is The Light"]、レーベル移籍、事務所の立ち上げ、そして新作の制作。怒濤の如く起こった出来事やその流れを楽しむように、偶然も必然に変えていくパワーで走ってきた、その鼓動がEP『Beautiful Dreamer』に生き生きとパッケージされた。ポエトリー・リーディングによる導入の「夢」から、構築的でありエモーショナルでもあるポップなサウンドに、ペーソスも希望も滲ませるtowanaのヴォーカルが乗る"これぞfhána"という曲から、ファンタジックなポップス、疾走感のあるギター・ロックが展開される今作からは、より開放的に、今伝えたい、今分かち合いたいバンドの衝動が聞こえてくる。今3人が体感しているのはどんなことなのか、話を訊いた。

-メジャー・デビュー10周年を迎えた2023年に新体制となり、レーベル移籍をし、また佐藤さんが事務所を立ち上げ自分たちでマネジメントを行うことになるという、環境が変わって心機一転でのスタートですね。

佐藤:最初は、事務所を独立しようと思っていたわけでもないんです。もともと所属していた事務所との契約がちょうど2023年6月で満了だったので、更新するか、独立するか、1年前くらいから考えていたんですけど、最終的には自分で会社を作ってやっていこうかなと落ち着いた感じでしたね。なので事務所の独立とレーベルの移籍がたまたま同じ時期になって。節目のタイミングだったのかもしれないですね。

towana:すごいんですよね。メンバーが脱退して、レーベルを移籍して、独立して......それがバンドの10周年イヤーで全部来るというのはなかなかないと思いますけど(笑)、なぜか一緒になっちゃいました。

佐藤:惑星のグランドクロスみたいな。

kevin:直列になるやつね(笑)。

towana:それが10年でぴったり来た。

-その怒濤のなかで、今回のEPの制作もスタートしているんですか。

佐藤:そうですね。そのバタバタとした時期に、曲も同時に作っていく感じでした。

-3人となって、5月にはシングル『Runaway World』が移籍第1弾としてリリースされましたが、今回EPとしてまとまった作品を作っていくうえでは、テーマなどを話して作り上げていこうというのはあったんですか。

佐藤:実は、最初は今回のEPを年末にリリースしましょうっていうのがあったんです。

towana:それを移籍第1弾として、という。

佐藤:そこにいい話として、TVアニメ"逃走中 グレートミッション"の主題歌の話をいただいて。順番は変わっちゃうけれども、先にシングル『Runaway World』のリリースがあって、そこから当初から作る予定だったこのEPの制作に取り掛かったという順番ではあるんです。

-そうだったんですね。

佐藤:ただEP『Beautiful Dreamer』のほうも、具体的に何か頭に思い描いていたという感じでもなく、走りながらたまたまここに落ち着いていった感じなんです。収録された「永遠という光」と「Last Pages」は"ONE."というゲームのOP/ED主題歌なんですけど、このお話自体は1年くらい前からあったもので。移籍の話以前に、これはこれとして先に曲は作っていたんです。そのあと10月7日に10周年記念のスペシャル・ライヴ[fhána 10th Anniversary SPECIAL LIVE "There Is The Light"]がLINE CUBE SHIBUYAでありまして。とにかくそのライヴに全集中していたというか、かかりきりで。ライヴが終わるや否や、残りの4曲を急ピッチで作って──。

-つい最近の話じゃないですか。

towana:実は大半の曲を、ひと月くらいで作っていたんです。

佐藤:「光舞う冬の日に」という曲だけは、fhánaのデビュー前、まだtowanaさんが正式ヴォーカルじゃなかった時代の曲で。メジャー・デビュー前の自主制作盤『New World Line』(2012年リリースのオリジナル・アルバム)にVOCALOIDの曲として収録していたものなんです。さらに言えば、10年以上前にfhánaのプロジェクトを始めようというときに最初に作ったデモが「光舞う冬の日に」だったんです。towanaが正式メンバーとして加入後も節目のライヴでは披露してきて、ファンからも"「光舞う冬の日に」のtowanaちゃんバージョンを音源化してほしい"という声があり、このタイミングで作りました。ただこれも、どちらかというと完全新曲を作る時間がなくてみたいなところがあって(笑)。

-そんな身も蓋もない話まで(笑)。

佐藤:というのも、8月にリリースした10周年ベスト盤『There Is The Light』でも、デビュー前の自主制作盤に収録されていて、なおかつtowanaヴォーカルではなかった「True End」を、新たに再録しているんです。「光舞う冬の日に」もいずれtowanaバージョンで音源化したいけど、連続して出すのはどうかなというのがあって。ただ、10周年ライヴが終わって1ヶ月くらいしか制作期間の猶予がないなかで残り4曲を作るとなると、これは「光舞う冬の日に」を入れるしかないんじゃないかと。実は最初はそういう理由だったんです。

-そうだったんですね。でもこのEPに違和感なくはまっていますよね。

佐藤:結果的にこの6曲が揃ってみると、すごくプリミティヴなEPになった感じがありました。初期衝動的というか。ゲームの主題歌として「永遠という光」と「Last Pages」が入ってますけど、アニメの主題歌ほど縛りがあったわけではないので、結構自然体で作った曲だったんです。それが、デビュー当時のfhánaの雰囲気に近い曲だなという感覚もあって。他の曲たちも、時間がないがゆえにあまりこねくり回していないというか、勢いがあって、そこにさらにfhánaの初期衝動が詰まった「光舞う冬の日に」が入ることで、全体的に新鮮さがあるというか。初心に帰るみたいな曲たちが揃ったなと、そんな感じがしております。

-6曲でfhánaの本質的な部分や、バンドのこれまでの物語も感じさせて、さらに新しいページに向かいますよという流れを感じる作品だなと感じてます。"Beautiful Dreamer"というタイトルもぴったりで。

佐藤:ありがとうございます。僕が個人的にグッとくるものって、計画的に作って計画通りにできあがりましたっていうものよりも、ドキュメンタリー性があるものなんです。音楽でも映画でもアニメでも、そういう作品ってすごく私小説、純文学みたいな感じでグッとくるんですよね。なので、結果的にそういうふうになったから、それはそれで良かったんじゃないのかなと思ってます。

towana:10周年ライヴが終わってから制作し始めたので、スケジュール的には今までで一番タイトで、結構苦しかったんですよね、私は。でも10年やってきたからこそ、なんとか駆け抜けることができたのかな。みんなで完成した音源を聴いているときに、"あぁ、10年経ってfhána、かっこいいバンドになったなぁ"って──そういえばその音源を聴いているときも、今座ってるこのフォーメーション(※佐藤、towana、kevinという並び)だったんですけど(笑)。

kevin:完全にこの形だったね。

towana:でっかいスピーカーに向かってみんなで聴いていて。いろんなことがあった今年だけど、この3人で、かっこいいのができちゃったんじゃない? みたいな。頑張ったので、今は自画自賛モードになってます。

-towanaさんの場合は、集大成的なライヴを終えて、そこからすぐに切り替えて新しい曲を歌っていく大変さがありそうです。

towana:そうですね。本当に10周年ライヴに思いを込めすぎていたので、終わった瞬間、"もうしばらく何もやりたくない!"っていうモードだったんです。でもそういうわけにもいかないし、10周年ライヴでは、10年の道程のいろんなところで出会ってくれた"ふぁなみりー"(※ファンの呼称)たちが集まってくれて。ライヴに対するプレッシャーもすごかったけど、そこでたくさん元気を貰えたので、その思いを込めて、新しい夢を見にいきましょうっていう気持ちに切り替えて、なんとかやり切りました。