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INTERVIEW

Japanese

FoZZtone

2014年11月号掲載

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Member:渡會 将士 (Vo/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

-「Gloria」がそのようなサウンド・メイクになったのは、紙資料にある渡會さんのアルバム解説にも書いてある"この作品はインストを境に前後半に分かれていて、どちらも回復に向かうストーリーになっている"ということと関係があるのでしょうか?

実は、1曲目から5曲目までで、ちょっとずつマイクを近づけていくというセッティングをしていて。今回曲順通りにレコーディングをしているんですよ。1曲目の「Return to Earth」は"こんな録音今までしたことねえよ!"ってくらい遠くにマイクを置いてエアーを録って、4曲目の「Message from the front」が大体90年代ロックくらいの近さで、「Gloria」は2000年代です!みたいな(笑)。エアーを拾うと低音の鳴りが大きくなるんで、より一層暗い雰囲気になるんですよね。だから頭の「Return to Earth」はどーんと暗い雰囲気があるけど、「Gloria」は明るい曲なので、そこに向けてだんだん音が近くなっていくと、だんだん明るくなっていく......という仕掛けを、ちょっとしてあります(笑)。(楽曲の)振れ幅の広さで(リスナーを)楽しませるバンドでもあるので。今まではその振れ幅を横にしていたんですけど、今回はもっと、わかる人が気付いたときに"おお、やるねえ!"みたいな面白い振れ幅になったらいいなー、と思って。

-音階や音調だけではなく空気感でも歌の世界を表現したアルバムなんですね。全曲解説にも「Return to Earth」は"初期THE BEATLESを意識した簡素なアレンジ"と書いてありましたが、音が近くなると同時に時代も現代へと移り変わり、それが気持ちの明るさへと繋がっていくと......なるほど! 確かにここ数年の日本のバンドには中域が強い音楽が多いと思います。その点、海外のアーティストはCDでは聴こえない音まで入れているバンドも多いと聞きます。人間の耳には聴こえない音だとしても存在している音ですから、それがもたらすスケール感などはあるでしょうし。

......"CDで削られる音がある"というのをエンジニアさんが教えてくれたんです。実はFoZZtoneでレコードを出したいなという話をしていて。僕はそれまでレコードなんて全然聴いたことなかったんですけど。

-あら。渡會さんは凝り性なかただから、てっきりレコードもだと思っていました。

実は全然で。エンジニアさんに教えてもらってから、同じ曲をレコードとMP3でタイミングを合わせて同時再生して、スイッチングしながら聴くという遊びをしていたんです。それがめちゃくちゃ面白くて。レコードが1番音がいいんだ! というのにびっくりしました。あんな溝を針でなぞって音を出すという意味わかんないものが(笑)、1番広い帯域まで音を録れてて。だからイギリスの昔のバンドはローがもっさりたまったりしてて、それをCDにすると上下ばっさり切って圧縮されるから、嫌なたまりかたになるんです。でもそれをレコードで聴くとどーん!と低いいい地鳴りみたいなものが出て"めっちゃ気持ちいい!"と思えるというか。自分の父親母親世代の人たちが小さいときに"兄ちゃんの部屋でレコード聴こうぜ"って正座してレコードを聴くみたいな、そういう娯楽が成り立つだけのサウンドだったんだなと思って。昔はそういう娯楽があったのに、失われてしまったんだなー......と衝撃的だったんですよね。そういうものに対するアプローチを真面目にやっていると、アメリカとかみたいにレコード市場が復活したり、デジタル・ソフトとしての音源ではなく、ハードとしてのCDやレコードが売れるようになったら......。それを押し付けがましくではなく"これ、すごくね?""ここの音聴けるんだぜ!"というのを面白い感じでアピールしたいなと。

-先ほど最近の日本のバンドの録音方法の話がありましたけど、わたしが生きてきてここ10~15年で、簡単に事を済ませられるものがたくさん生まれて、聴き手もより手軽な方法をチョイスすることにシフトしているのは感じます。お金を掛けない、時間を掛けない。それは情報が増えて選択肢が増えすぎている時代というのも背景にあるので、音楽に限ったことではないですが。

確かにパソコン1台で、自分ひとりで音源はいくらでも作れるし、そうするとスタジオを押さえなくてもすむんで、人件費もかからないし、めちゃくちゃ安上がりなんですよ。けど、そこにみんながシフトしていったら......超お金をかけてすごいの録りました!という音の価値がわかりにくくなっていくなと思ってて。お金をかける意味をもうちょっと上手にこちら(アーティスト・サイド)がアピールしないと、聴き手がかわいそうだなと思って。"わざわざこのスタジオを高いお金を出して借りる理由は、この音源で言うとこの曲のこの部分なんだよ"というのをアピールできたら――そういう考えもレコーディング前にはありましたね。音楽業界自体が"やばいぞやばいぞ!""CDが売れなくなるぞ!"とか、そういう情報が蔓延しているのに"じゃあ次これ行ってみよう!"というアイディアがあんまり出てこないのがかっこ悪いなーと思ってるので、それを具体的に行動に移せないと自分自身がかっこ悪くなっちゃうなとは思ってますね。

-『Return to Earth』のサウンドに関して、8月にインタビューさせていただいた際、サポートドラムの武並俊明さんとギターの竹尾典明さんが"俺は何もしていない"と言い張っているとおっしゃっていましたが、それはどういうことなのでしょう?

はははは! 確かにそんなこと言ってましたね(笑)。根本的に自分のパートのことは自分で考えようね、というスタイルなんですけど、一応曲を作ってるこっち側からはオーダーを出していて。で、特に武並さんは、俺のコードワークとメロディを特に褒めてくれてて、それを生かすためにあんまり無駄に手数を増やしたくないと。おまけにレコーディングもエアーをがっつり録る方法だったので"じゃあ手数を減らそう!"と。まあ、何もしてないとは言ってますけど、実際"これは武並さん以外は叩けないな"という音にきっちりあの人は仕上げてきたんで......"なんもしてないんだよね~! あっはっはっは~!"と言われるたびに"くそう、こいつ、やりよるくせに......!"とイラッとするんですよ(笑)。