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INTERVIEW

Overseas

THE DRUMS

2010年06月号掲載

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Member:Jonathan Pierce(Vo)

Interviewer:伊藤 洋輔


-アルバム・タイトルの『Portamento』とは、ある音から別の音に移る際に、滑らかに音程を変えながら移す演奏方法の意味ですが、このタイトルはどのようなメタファーとなっているのでしょうか?

この言葉は長いこと僕のお気に入りなんだ。70年代や80年代の古いアナログ・シンセサイザーの機能のひとつとしてよく目にする言葉なんだけど、僕が12歳の時にお父さんの教会で使わなくなった古いシンセサイザーをもらったときから意識している。それにもちろんこの言葉は僕たちがバンドとして過ごしてきたここ数年のことを表しているとも言えるよ。僕たちは移動し、移り変わってきた。たくさん旅をしたんだ。文字通りにも、メタファーとしてもね。

-以前「Let’s Go Surfing」が生まれた背景には、Surfingとは希望、または自由の象徴として、バラク・オバマ大統領就任とブッシュ政権の終わりが影響していると語っていましたが、本作でもそのような政治思想の影響はあるのでしょうか?

いや、今作で何か思想を語っているとしたら、もっと個人的なものについてだよ。愛、喪失、曖昧さや無神論とか。もうぼく達が政治的な曲を書くとは思えないよ。そういうことは他のパンク・バンドやU2が語ってくれるからね(笑)。

-では(笑)、いくつか楽曲をピック・アップするので解説をお願いします。制作秘話やインスピレーション源、メッセージやこだわりの点などなんでもいいので、いろいろ語ってもらえると嬉しいです。まずはオープニングの「Book Of Revelation」です。

そうだね。ぼくはこのアルバムに力強いオープニングがほしかったんだ。そして、これはメッセージ性的に1番力強い曲だと思ったんだ。いや、もしかしたら違うかもしれないけど……賛否両論はあると思う。とにかく、ぼくはとても宗教的な家に育ったんだ。両親はぼく達を自宅で教育して、教会で育てた。そういったことをすべて捨てて、ぼく自身の考えを表現したかった。このアルバムは本当に、とても正直で個人的な思いを詰めたものだよ。

-次にリード・トラックとなった「Money」をお願いします。

うん。正直メンバーみんなとても貧しいなか育ったんだ。だから貧乏でいることや過ちから一切学びを得られないことについての曲を書きたかった。そしてそれをロマンティックでユーモアな方法で実現できると思ったんだよ。

-次にアルバムで最もこれまでにない世界観となった「Searching For Heaven」はどうでしょう?シンセのみでダークな音響構築となっていますが、とても意味深に感じる1曲です。意図するところは何か?これはぜひとも詳細に語ってもらいたいです。

これはぼく達の初心をみつめて、シンセサイザーを活かして作った曲なんだ。ぼく達がこのアルバムのために開発したモジュラー・システムを使ってJacobが書いたんだけど、彼がこの曲をぼくに聴かせてくれたとき、本当に打ちのめされたような気持ちになったよ。そしてすぐに歌詞を書いたんだけど、あまりに焦って速く書いたから紙に書き出すこともできなかったんだ(笑)。この曲のレコーディングは印象的に憶えているけど、まさにサウンドがぼくの口から言葉を吸い出していくような感じだった。それこそ曲を制作しているときに一番大事なことだと実感できたね。

-なるほど。では、ちょっとJOY DIVISIONを想起する「If He Likes It Let Him Do It」についても教えてください。

確かにこれはダークで、JOY DIVISIONと比べてくれるのは大歓迎だけど、この曲はどっちかというと1983年のネブラスカ出身でカッコ良くておもしろい音楽を作っているバンドのように聴こえると思う。誰かって?ぼくにもわからない(笑)。なんにせよJacobはそう言っているよ。この曲は力強くもあり不明瞭なメッセージを持っていて、これをライヴで演奏するたびにぼくを苦しめるんだ。それとコーラスのシンセ・サウンドでは、まさにたくさんのポルタメントを使っているよ。

-ラストの「How It Ended」はどうでしょう?

この曲は『Portamento』のために最後に書いた曲だよ。すぐにアイデアが浮かんで来て、ぼくひとりで書いたんだ。このアルバムを、絶望的であり希望に満ちあふれたサウンドで終わらせたかった。だからニューヨークのウッドストックに住む友達の家へ行って、外に見える雄大な山を前に深呼吸してこの曲を作ったんだ。大自然のおかげでこの曲を書けたと思うよ。

-新作はこれまでにないシンセを前面に出した部分があるものの、基本は前作同様にポップ・クラシックな世界観をベースにした、ストイックなほどにシンプルなインディ・ロックを踏襲したものになっていますね。この不変の“THE DRUMS美学”が貫かれた要因とは何でしょうか?

う~ん……インディ・ロックを意図的に目指そうと思ったことはないんだ。THE DRUMSの音楽はメジャーに聴こえないから、人々は僕らをインディでありインディを目指していると思い込んでしまうかもしれないね。確かに僕たちはメジャーな音楽はあまり好きじゃない、ただ“良い”音楽が好きなんだよ。この違いは難しいよね。ひとつ言えることは、大きなスタジオや有名なプロデューサーを使わずに自身の愛する音楽をDIYで作ることは楽曲制作のゴールと思っている。そしてそういった意識から生まれた音楽こそ、みんなのものとして共有できたら素晴らしいんじゃないかな。

-わかりました。これは個人的な推察ですが、2年前にリリースされたEP『Summertime!』の「Saddest Summer」や「I Felt Stupid」から、アルバム未収録にもかかわらず素晴らしい楽曲がいくつもあるのがTHE DRUMSと考えていますが、本作のアウト・テイクも日の目を見るときが来るのでしょうか?

実は『Portamento』のアウト・テイクはあまりないんだ。このアルバムはほぼ完全にトラックの順番に書かれていて、僕が「How It Ended」を書き終わった時、まさにアルバムの最後の終わり方になると理解してアルバム制作も終わったから。でもそれからいくつか新しい曲を書いたよ。それらの曲はこれから数ヶ月の間に日の目を見ることになるだろうね。

-楽しみです。さて、“2枚目のジンクス”を恐れずこれほど素晴らしいアルバムを届けてくれたのは本当に嬉しいです。新たな段階に進んだ現在の心境はいかがですか?

メンバーみんなこのアルバムにとても満足しているけど、やっぱりまだ不安定な状態だと思うよ。ここ数年は本当にバカみたいに大変な毎日で、ちょっと普通じゃないメンバーで構成されているから、明日にはバラバラに崩れているかもしれない。誰にも分からないよ。これからもアルバムを作り続けてお互いを愛せるといいなと願うばかりだよ。

-こちらもそう願っています。それでは最後に、新旧問わず最近の愛聴盤やオススメ・アーティストなど教えてください!

Wendy Carlos、Scott Walker、PART TIME、THE LEGENDARY PINK DOTS、THE SHANGRI-LAS、THE WAKE(from UK)かな。

-THE WAKE!最高です(笑)。インタビューありがとうございました!