Japanese
2014年02月号掲載
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オワリカラというバンドは、いつもちょっと人と違う場所にいる気がする。そんな4人が作り上げた極上の楽園――1st『ドアたち』はまさしくその結晶だった。そこから聴き手の心に突き刺さり踊らせる2nd、聴き手に問いかける3rdと徐々に楽園の入り口を広げ、今作4枚目は我々にまだ見ぬ新たな場所へと"行こう"と手を差し伸べる、いわば集大成であり新たな出発を感じさせる深い深いアルバムだ。1曲1曲に含まれる強いメッセージに、4人がこれまで歩んできた生きざまを落とし込んだ本能を刺激する直情的で耽美的な音色。強い気概を持ち、先陣切って歩き出す彼らに追いつくのは、もしかしたら容易いことではないかもしれない。だが追いかけるという行為やそのときに見える景色、感じた想いは間違いなく美しいはずだ。(沖 さやこ)
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オワリカラ (108)
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オワリカラ
PAVILION
結成10周年を迎え昨年末に初のベスト・アルバムを発表したオワリカラが、自主レーベル"PAVILION"を設立。その第1作目として会場限定シングルのアルバム・バージョンと新曲を詰め込んだ、約3年ぶりのオリジナル・アルバムをリリースする。オルタナ、ダンス・ミュージック、サイケ、プログレ、歌謡曲など様々な要素をブレンドさせ、それを高度なアンサンブルとピュアなエモーションで組み上げる手腕、スタイリッシュになりきらない絶妙ないびつさは今作も健在。そこからさらに既発曲含め、元来彼らが持ち合わせていたロマンチシズムが、よりディープでありながらユーモラスに響く楽曲が揃った。中でもタイトル曲はキャリアが生んだ洗練性、引き算の美学と豊かなコーラス・ワークが歌詞の重みを引き立てている。
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オワリカラ
サイハテ・ソングス
オワリカラというバンドは、いつもちょっと人と違う場所にいる気がする。そんな4人が作り上げた極上の楽園――1st『ドアたち』はまさしくその結晶だった。そこから聴き手の心に突き刺さり踊らせる2nd、聴き手に問いかける3rdと徐々に楽園の入り口を広げ、今作4枚目は我々にまだ見ぬ新たな場所へと"行こう"と手を差し伸べる、いわば集大成であり新たな出発を感じさせる深い深いアルバムだ。1曲1曲に含まれる強いメッセージに、4人がこれまで歩んできた生きざまを落とし込んだ本能を刺激する直情的で耽美的な音色。強い気概を持ち、先陣切って歩き出す彼らに追いつくのは、もしかしたら容易いことではないかもしれない。だが追いかけるという行為やそのときに見える景色、感じた想いは間違いなく美しいはずだ。
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オワリカラ
踊るロールシャッハ
昨年5月にリリースされた3rdアルバム『Q&A』以来となる新作は、ライヴでおなじみの新曲にライヴ音源4曲を加えた全5曲ワンコインという太っ腹シングル。"ロールシャッハ"とは、インクを紙の上に垂らし、それを二つ折りにしてできた模様から何を想像するかをもとに性格などを判断する心理テストのこと。"ロールシャッ!ハッ!ハッ!"というサビなどの歯切れの良い語感を生かした歌、4人各々がインパクトのある音を鳴らす"点"を生かした構成で、音の隙間もリズムを作る重要な役割になっている。キャッチーでありながらも緊迫感のあるグルーヴは、推理小説のような謎めいたハラハラ感。楽しいだけではない空気を醸しながら踊れるナンバーを作る彼らのセンスと知性には相変わらず感服だ。
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オワリカラ
Q&A
"オワリカラなのにオワリカラじゃない。そうか、これが今のオワリカラなんだ"と、前作『イギー・ポップと賛美歌』で思ったが、今回もそうだ。自分たちの新しい可能性を試したくて、それが面白くて仕方がないのだろう。瑞々しいサウンドに焦りの文字は無い。それは1stアルバム『ドアたち』から一貫しているから感服だ。"Q&A"というミニマルなコミュニケーションをテーマに掲げた今作は非常にストレートで、小難しいリズムも皆無。だが彼らが培った経験は、オワリカラ特有の謎めいたムードとして輪を描いてゆく。じっくり聴かせる楽曲、疾走感のあるギター・ナンバーから攻撃的なロックンロール、ファンク、やわらかいサウンドまで多彩な全11曲。皆さんもちょっぴり不思議なコミュニケーション、してみませんか?
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オワリカラ
シルバーの世界
「swing」の振り子は、大きな弧を描きながら「シルバーの世界」へ――。2ndアルバム『イギー・ポップと讃美歌』で、バンドの現在進行形の衝動の全てを叩き込んでみせた、革新曲「swing」。タカハシヒョウリ(Vo&Gt)曰く、"マインドとフィジカルが拮抗している"と言うこの曲は "ハートに訴えかけたい、でも踊らせたい=心と体に訴えかけたい"という、内にも外にも突き刺さる "完全無欠の衝動"が波打つダンス・ナンバーであった。そして本作は、未だ止まらず進行していく衝動が、更にディープに作用する"怪作"である。タカハシの言葉を借りるならば "拮抗している"という、せめぎ合いによるストレス状態すらも超越した"超高揚状態"を味わえる。エンドルフィンもアドレナリンも過剰分泌されるシルバーの誘惑......オワリカラ、最早脳内麻薬の域っす。
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オワリカラ
イギー・ポップと讃美歌
そのドアは、開けても開けても開けても開けても…きりがない。あれはなんだ?終わりなき欲望か?逃れようのない矛盾だったのか?サイケデリックかつディープなネヴァー・エンディング・ストーリーを描き出したデビュー作『ドアたち』はやはり本物だった。本作もまた、前作同様に演奏と言葉の説得力が凄まじく、歌詞はもちろん、音や曲の表情までもが一つのキーワードにリンクしている。今回のテーマは“つきささる”。この完成度の高さはコンセプト・アルバムの類いのものであり、より私的な言葉や表現を全面に押し出したDavid Bowieの『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』というような印象を受けた。音と言葉で完璧なビジュアル世界を作り上げたのがBowieならば、彼らは音でもって言葉の本質というビジュアルを明確にしていく。
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オワリカラ
ドアたち
気が付けば、ノストラダムスの予言から11年が経過した訳で、私たちは変わりない毎日を生きている。けれど、恐怖に包まれた1999年以降、あけすけに幸せが充満した音楽に紛れ、シニカルな音楽が着実に育まれてきたように思う。そんな2010年に産み落とされたオワリカラの1stアルバム『ドアたち』。暴力的なまで引きずり込む熱気と、浮遊感あるノスタルジックな余韻が全身を圧倒する。中でも、「団地」は衝撃であった。人々の生活空間を“ハコ”という完結かつ閉鎖された空間となみす客観視の鋭さと、そこに存在する生活をいとおしいと感じる主観的な温もり。そして、最終的には逃れることの出来ない結末を受容する微妙な矛盾。衝動や焦燥感を伴った不安定な感覚は、限界まで掘り下げられ、吟味・咀嚼され、再構築された上で吐き出される。そこには、日常性を剥き出しにするタカハシヒョウリその人の人間性が、色濃く凝縮されているように思う。そして、練り上げた感情を実体として解放できるのは、強烈にストイックな4 つの音が存在しているからだ。誰もが全力で一点を目指す。“全員が4番”というサウンドが互いに音を磨ぎ合うからこそ、言葉が突き刺さるように弾けるのだろう。彼らをサイケデリック・ロックと言うジャンルで括ってしまうのは、どうも解せない。おそらくは、音楽性のカテゴライズというよりも、もっと深いそれ以上の世界を彼らは捉えているのだ。“オワリカラ”始まる“コレカラ”。まばたきする一瞬さえも惜しい。