Japanese
SHE'S
Skream! マガジン 2020年01月号掲載
2019.12.03 @中野サンプラザホール
Writer 沖 さやこ Photo by MASANORI FUJIKAWA
トロンボーン、トランペット、サックスの管楽器隊3人、弦楽四重奏のカルテット、SHE'Sの4人の11人編成で行うホール・ライヴ。すべての楽曲を11人で披露するのではなく、楽曲によって演奏編成を変え、良さを最も引き出せる方法を選ぶのは、バンドのライヴ内で井上竜馬(Vo/Key)がピアノ、ハンドマイク、エレキ・ギター、アコギを使い分ける延長線上にあるとも言える。同公演は、インディーズ時代からスケールの大きなサウンド・メイクをしてきた彼らにとって、お誂え向き。中でもこの日痛烈に印象に残ったのは、"この4人が作るSHE'Sの強度"だった。
管弦楽団の7人がステージで音合わせをし始めるとSHE'Sの4人が登場。11人で盛大なファンファーレを奏で、その波に乗って一斉に「Over You」へと駆け出していく。井上はアコギを抱えて軽やかにステップを踏みながらステージ上を闊歩し、管弦楽団もクラップをするなどして、会場は一気に華やかなムードに彩られた。カルテットとともに届ける「Un-science」は優雅さと生命力に溢れ、メンバーの高揚がそのまま音へと姿を変えているよう。管楽器と演奏する「Beautiful Day」は音楽を楽しみつくすほどの気概に溢れる。彼らのライヴを観たのは2019年4月のZepp Tokyoワンマン([SHE'S Tour 2019 "Now & Then"])ぶりだったが、あのときと比較してもさらにバンドとしての芯が太くなっていることを頭3曲で確信した。
そのあともどんどん楽曲の精度を研ぎ澄ませながら、躍動感と喜びに満ちた演奏を繰り広げる。自然体の陽のエネルギーがとても健やかで心地いい。11人編成で届ける「Just Find What You'd Carry Out」から鋭さや動の要素を強め、「Getting Mad」と「Your Song」を4人編成で披露。SHE'Sの内面を描き出すようなセクションへと突入していく。人生経験で得たであろうアダルティな空気感や佇まいがとても逞しく、頼もしく、カルテットと同期音を交えた「Clock」もバンドの凛々しさ、弦楽器ならではの琴線に触れる感傷性で圧倒した。そのあとは、カルテットによるインタールードを経てディープでエモーショナルな「Ghost」、優しさと切なさがない交ぜになった「Letter」へと繋ぐ。一連の展開はまるで組曲のようで、それはこれまでのバンドの歩み、少年から青年へと成長していく4人の姿を観ているようだ。
アコースティック編成で「フィルム」と「月は美しく」をムーディに届けたあと、井上は"地道やけど着々と活動してこれて良かった。しっかりといろんな経験ができて、今も一歩一歩みんなと歩いていけてるなとすごく思います"と、朗らか且つ地に足のついた様子で想いを口にする。彼らは挑戦を止めず、背伸びをしながら完成度の高い楽曲に落とし込むことへとこじつけてきた。そして、今彼らはステージで堂々と、その楽曲たちに命を吹き込むように、鮮やかな演奏を繰り広げている。これまでに彼らが撒いてきた種たちが、芽吹き始めている――「Dance With Me」の躍動感や、井上が客席に降りて闊歩して歌うような遊び心溢れる様子はまさにその象徴で、春の訪れのような眩しさだった。
アンコールで井上が観客に向かって、"ちゃんと音楽で繋がってるんやなと再確認した今日でした"と言い、感謝を伝え、この日を11人編成の「Stand By Me」で締めくくる。多彩な楽曲の中で、自由に音楽を楽しむ彼らの姿や演奏は、瑞々しい艶を帯びていた。想いを発信するだけでなく、観客から受け取ることができる彼らは、その土壌でさらに美しい花を咲かすことができるだろう。
[Setlist]
1. Over You
2. Un-science
3. Beautiful Day
4. パレードが終わる頃
5. Masquerade
6. Just Find What You'd Carry Out
7. Getting Mad
8. Your Song
9. Clock
10. Ghost
11. Letter
12. フィルム
13. 月は美しく
14. Time To Dive
15. The World Lost You
16. Sweet Sweet Magic
17. Dance With Me
18. The Everglow
En1. She Will Be Loved
En2. Stand By Me
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