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LIVE REPORT

Japanese

POLYSICS

Skream! マガジン 2017年11月号掲載

2017.10.14 @渋谷TSUTAYA O-EAST

Writer 吉羽 さおり

POLYSICS結成20周年対バン・ツアーのファイナルであり、新メンバー、ナカムラリョウ(Gt/Vo/Syn)のお披露目ライヴとなった"POLYMPIC 2017 FINAL!!!!"が渋谷TSUTAYA O-EASTで開催された。ハヤシ(Gt/Vo/Syn/Prog)が"とてもアクの強い、千鳥っぽく言えばクセがすごい3バンド"とMCをしたとおり、ファイナルらしく、対バンはCHAIとグループ魂という濃いメンツ揃い。

1番目にステージに立ったCHAIは、"はじめまして、TOISU! 20周年おめでTOISU! 何より呼んでくれてありがTOISU!"(マナ/Vo/Key)とPOLYSICSへのリスペクトを表しながらも、そのステージングはやりたい放題! おそらくは初めてCHAIを観るという人も多かったと思うが、「Sound & Stomach」で始まり、全員がヴォーカルやコーラスをとるキャッチーな歌と、シンプルでいてとてもグルーヴィなサウンドにみるみる引き込まれていくのがわかる。4人でわちゃわちゃと賑やかにトークでもしているような女の子の感じもありながら、それを嫌味なくポップに聴かせているのが強靭なユナのドラムとユウキ(Ba/Cho)のリズム隊によるグルーヴと、そこに乗る双子のマナとカナ(Vo/Gt)の不思議なユニゾン感やステレオ感のあるヴォーカル、絶妙なフレーズ使いである。ヒップホップとCSSのようなポップなダンス・ミュージックを思わせ、佇まいはかわいいが全然ユルくない、幾何学的でキレのあるアンサンブルで紡ぐロック・ミュージックに、フロアは思わず手拍子をし興奮の歓声を上げる。MADONNAの「Material Girl」に合わせて自己紹介をしたり、ニュー・アルバム『PINK』からの新曲「N.E.O.」などを披露したりし、最後には拍手喝采を浴びる刺激たっぷりのステージとなった。

CHAIからのバトンを受けたグループ魂も、これまた持ち時間を無視したようなやりたい放題なステージで、港カヲル(皆川猿時/46歳)の客いじりから始まり"グループ魂は、今年は対バンに呼ばれることが多くて、人気デリヘル嬢になった気分です"と語り、「ペニスJAPAN」から「パンチラ・オブ・ジョイトイ」と下ネタも全開で会場を引っ掻き回していく。破壊(阿部サダヲ/Vo)の飛ばすスリッパはフロアの奥や2階席まで凄まじい速度で風を切っていき、うかうかしているとぶつかりそうな勢い。だが、盛り上がっている観客にはまったく問題ではなく、パンクなサウンドに拳を突き上げてシンガロングし、MCに腹を抱えて笑い、次々に衣装が変わって、しまいには立派な太鼓腹を出してステージを飛び跳ねている港カヲルに拍手を送って爆笑する。拳を上げながらも笑いで脇腹が痛いライヴもなかなかないが、スタッフから巻きが出るほどの沸騰ぶりで全10曲プラス、ネタ満載のステージでPOLYSICSの20周年を祝い、晴れやかに舞った。

こうして"クセがすごい"独特のステージ2連発からのPOLYSICSへという流れだが、この日のポリ(POLYSICS)の飛ばしっぷりも凄まじかった。結成20周年という、重みのあるキャリアを打ち消していくような初期衝動感のある勢いで、バンドのテンションはのっけから最高潮。「Buggie Technica」、「SUN ELECTRIC」、そして「シーラカンス イズ アンドロイド」とスピードを緩めることなく突き進み、フロアをカオスにしていく。「Digital Coffee」では、ハヤシがハンドマイクで歌い、フロア最前列の観客と握手をしていくリサイタル状態に。ギターやシンセをプレイするナカムラが加わって4人編成となったことで、ステージにおけるハヤシの機動力もこれまで以上に上がり、解き放たれたように縦横無尽に跳ね回って"TOISU!"コールを起こし、ハイテンションな声を上げる。自ら"このテンション大丈夫かな。今日、いい感じだわ"とムンムンとしたフロアの熱気を堪能して、新メンバー ナカムラを改めて紹介し、"結成20周年。新メンバーを加えたこの4人で突っ走っていくので、応援よろしく!"と、「Young OH! OH!」でフロアを一体化させて、ヘッドバンギングさせる。この曲ではツイン・ギターとなったが、ヤノ(Dr/Vo)のタイトなビートとパワフルなフミのベースとの絡みは格段にソリッドとなり、よりロックな攻撃性と、笑っちゃうくらいのシアトリカルな佇まいが面白い。

この新体制のお披露目ライヴの前に、"THE TOISU!!!!"という名義でいくつかライヴをやって4人編成での感触を確かめてきたというポリ。その甲斐もあってか、とにかくこの4人でのステージはとてもしっくりときている。ヴォーカルとシンセのカヨが卒業して7年、3人編成のPOLYSICSを築き上げてきたが、新たに4人となって、単なるパワーアップというよりも、パズルのピースや機械のパーツが違和感なくピタっとハマった感覚がある。これはナカムラ自身もまた、ポリのメンバーとしての役割をしっかり認識しているからなんだろう。そういうバンドのグルーヴやムードが気持ちよく音になっている。初期からのキラー・チューンばかりという熱湯地獄状態のライヴは後半にきても休む間もなく、「URGE ON!!」でフロアへとダイヴしたハヤシが、フラッフラになりながらステージへと戻って、超高速の「Shout Aloud!」でダメ押しのごとくフロアを昇天させるという、湯気が立ち昇るような熱いステージとなった。

アンコールではこの4人で作ったニュー・アルバム『That's Fantastic!』から表題曲を披露。"新しい血が入って、こんなこともできた! と思った自信作だ"とアルバムを紹介したハヤシ。20周年を迎え、このキャリアにあぐらをかくことなく、新体制となり未知のゾーンへと突き進んでいくPOLYSICSのパンク精神と、ニュー・ウェーヴ感。ここにはもう期待しかないし、バンドのクリエイティヴィティを感じる。

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