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LIVE REPORT

Japanese

Droog

Skream! マガジン 2016年12月号掲載

2016.11.04 @渋谷La.mama

Writer 岡本 貴之

"原点奪還"をテーマに掲げたフル・アルバム『命題』を携えて、8月からツアーを行ってきたDroog。ツアー・ファイナルとなったこの日のワンマンは、彼らにとってこのツアーが"ロック・バンド"として自らのアイデンティティを再び取り戻した日々であったことを知らしめる白熱のライヴとなった。

メンバーらしき人物の足が線路を歩いていく映像が流れ、ステージ上にメンバーが登場するオープニングは、自主レーベル"TICK RECORDS"を立ち上げて歩み出した彼らの姿勢と、ツアーで全国を回り今日のワンマン公演に辿り着いたことを表しており、観ている方もグッとステージに気持ちが引き寄せられる。荒金祐太朗(Gt)、多田拓斗(Ba)、右田智弘(Dr)がスタンバイすると荒金の合図と共に楽器陣が一斉に音を鳴らし、ステージから客席に光のシャワーが放物線を描く。"渋谷! 帰ってきました! 行くぞラママ!"、センターに立ったカタヤマヒロキ(Vo)がそう叫ぶと、ライヴは「TOKYO SUBMARINE」からスタートした。

荒金が弾く小気味よいギター・リフがスタジオ・バージョンよりも歪んだ音色でバンドを引っ張り、白いカールコードを震わせる多田のベースと右田のドラムが野太いビートでボトムを支えている。その音の洪水の中、カタヤマが妖艶にマイクスタンドを両手で握り叫ぶ姿は往年のグラム・ロック・スターを思わせる。2曲目ではハンドマイクでモニターに上がり観客を煽ると、ギター・ソロを終えた荒金が寄り添う。"今日はDroog史上最長のセトリでやる"との宣言どおり、3コードのロックンロールやものすごいBPMでカバーした「The Loco-Motion」など、様々な楽曲を聴かせる4人。振り切れたパフォーマンスでオールディーズ・ナンバーをフレッシュに蘇らせる演奏は、古いも新しいもない、俺たちは音楽が、ロックが好きなんだという、まさに"原点奪還"な彼らのパッションを体現したものだったと言える。

深いリヴァーブがかかったヴォーカルで歌われた豪快なロックンロール「Loser」を歌い終わると、マイクスタンドを掲げて笑顔で観客を見渡すカタヤマ。熱狂的なパフォーマンスの合間にも、冷静にあたりを見るような視線を覗かせている気がしたのが印象的だった。「終点」では、カタヤマが歌詞に出てくる"蜂のように刺す"で知られるモハメド・アリを連想させるガウンを纏い歌う演出も見られた。続く「B級ブギー」の演奏にはタイトでグッと引き寄せられる。荒金のギターは高音と低音を織り交ぜたコードワークが非常に上手い。こうした王道のロック・ギターが弾けるミュージシャンは稀有な存在だろうし、Droogが若い音楽ファンにロックの魅力を伝えるうえでの核になっているのが荒金のギターだ。

「オールド・ロマンス」、「晩夏のブルース」、「こわれても」と、アルバムの曲順どおりに披露される楽曲には、アルバム自体がライヴのような熱を持っていることを再認識させられた。"バンド初のバラード"との曲紹介から歌われた「こわれても」では、バラードとはいえ激しい演奏で、カラフルな照明がステージ後方から放たれるなか、カタヤマが見事な歌唱を聴かせる。そして、グランド・ピアノを使って録音した曲だという「夜明け前」が歌われたのだが、La.mamaにはグランド・ピアノがあるとのことで、歌い出しでは荒金がピアノを演奏し、ツアー・ファイナルに相応しいスペシャルさを感じさせた。

メンバー紹介から"We are Droog!"と叫んで後半戦へ突入すると、もう止まらない。「BAND ON THE ROAD」、「Johnny&Vicious」、「ロックンロール以外は全部嘘」と、ロックンロール・バンドっぷり全開の楽曲たちで煽りに煽り、カタヤマはフロアにダイブ。汗だくでピッタリ身体に張りついた白いシャツを揉みくちゃにされながら、ステージと客席の境もないような一体感を生み出す直情型のパフォーマンス。これぞロック・バンドのライヴだ。

アンコールで聴かせたデビュー曲「人類」は、『命題』とは明らかに楽曲のニュアンスが違う。今のDroogが、あくまでもロック・サウンドを体現しながらもしっかりとカタヤマの歌を聴かせようとしているバンドのモードを感じさせた。逆に初期の楽曲の粗暴な感じもまた良い。ツアーのタイトルでもあるアルバム表題曲「命題」を一気呵成にプレイして観客へ感謝すると、12月21日にユニバーサルミュージックからリリースするメジャー復帰作となるミニ・アルバム『Monochrome』から「青い道」を最後に演奏。"またまだDroogの道は続きますので、一緒にいきましょう!"と観客に語り掛け、万雷の拍手に包まれながらツアー・ファイナルはエンディングを迎えた。現代の音楽シーンに失われつつある、ホンモノのロック・バンドの輝きを取り戻すという"命題"を果たした彼らの、次なる道のりが輝かしいものになることを予感させるライヴだった。なお、12月16日には下北沢LIVEHOLICにてミニ・アルバムの新曲披露ライヴが行われる。

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