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LIVE REPORT

Japanese

バズマザーズ / Jake stone garage

Skream! マガジン 2016年08月号掲載

2016.06.17 @下北沢LIVEHOLIC

Writer 岡本 貴之

LIVEHOLICオープン1周年記念イベントの第8弾がバズマザーズとJake stone garageのツーマン・ライヴとして行われた。この日は気温が30℃近くにまで達した熱い1日だっただけに開場後、人が増えていくごとに会場の温度も上昇。女性を中心としたお客さんでステージ前から出入り口付近までギッシリ埋まっていた。

先攻はLIVEHOLIC初出演となるJake stone garage。観客をかき分けて3人がステージに上がると、ワタナベサトシ(Vo/Gt)と西司(Ba)が、岩中英明(Dr)の方を向き、一斉に音を出して「GOD LOVES YOU」からライヴが始まった。早速火がついたように盛り上がり、サビでフロアから一斉に腕が伸びる。続けてメロディアスな「Alice on edge」へと移行し、扇情的な旋律に酔わされる。西のベース・プレイはピック弾きながら、この曲ではまるでスラッピングしているかのように跳ねている。ダンス・ロック・チューンの「WARP」まで、3曲を矢継ぎ早に繰り出して一気に観客を惹きつけた。"こんばんは、Jake stone garageです! 暑い! でも俺は意地でも脱がない!"すでに髪の毛から汗が滴るほどの暑さにも関わらず、黒い革ジャン姿でそう宣言するワタナベのロックなこだわりに、観客からは笑いながらも讃える拍手が起こった。「秘密」から「SHAKE YOUR HEAD」へと続き、テレキャスを掲げて恍惚の表情を見せるワタナベ。西と岩中も実に楽しそうに演奏している。

"LIVEHOLIC、1周年おめでとうございます!初出演ですけど(笑)"と改めてMC。すると、ドラムの岩中も昨年上京してきてから7月で1周年になることを報告。そのプチ情報に対して無情にも"知らねーよ(笑)。"と一刀両断するワタナベとのやりとりに会場が和んだ。昨年、札幌から東京へと活動拠点を移して2ndフル・アルバム『Jake stone garage』をリリースし、11月には渋谷CLUB QUATTROでのワンマン・ライヴを成功させるなど、この1年にバンドが濃い活動を行っていることを思い起こさせるひとコマだった。 シンプルなリズムながら人力テクノ調で最高に踊れる曲「シンディア」でフロアを揺らす。ガレージ、ロカビリー、ビック・バンド、あらゆる要素を飲み込んだ「DEEP IN」や「golden hill」からは、ひと口に3ピースのガレージ・バンドとくくることのできない懐の深さを感じさせた。ライヴ告知を挟み、ドライヴ感のあるキャッチーな曲「陽炎の夜」からライヴは佳境に入る。ステージ前方のお客さんは飛び跳ねて残りの時間を惜しむように楽しんでいる。テンポアップして「クリムゾンジャガー」から、ラストは「ラトル スネイク シェイク」へ。ワタナベと西がヘドバンしながら曲に入ると、観客も一緒に頭を振り乱している。狂ったように演奏しながらもビシッとシンコペーションをキメる息のあった3人。いや、息が合っているというより肉体と魂が共鳴し合って音になっているかのようだ。そして、ライヴが終わって引き上げるまで、結局ワタナベは革ジャンを脱がなかった。

暗幕の向こうでJimi Hendrixの「Voodoo Chile」を弾くギターが聴こえてくる。暗転すると、アニメ"あしたのジョー"のテーマ曲と共に幕が上がる。バズマザーズのライヴは、山田亮一(Gt/Vo)がギターを掻き鳴らし、観客に向かって大きく両手を広げて始まった。重松伸(Ba)がモニターに乗ってオーディエンスを煽り、「故郷ノ空」から演奏開始。福岡"せんちょー"大資(Dr)は縦横無尽に行き交うふたりの音を支えつつバンドを引っ張る。「スカートリフティング」へと続き、重松が手拍子を求めると一斉に両手を上げる観客。山田のハーモナイザーを使った特徴的なギターの音色が大音量で会場を支配する。「革命にふさわしいファンファーレ」を終えると"こんばんは、バズマザーズです!"と短い挨拶を挟み、「せっかちな人の為の簡易的な肯定」へ。さっきからフロアの隅々まで踊りっぱなしだ。続いて始まった「スクールカースト」は神経を逆なでするようなキンキンのギターと殴りつけるようなリズムに圧倒された。重松と山田のやり取りで笑わせるMCは関西のバンドならではなのかもしれない。そうかと思えば「ハゼイロノマチ」の間奏でアフロヘアーの後ろにギターを回してソロを弾く山田の姿はロック・スター然とした佇まいだ。美しくもの悲しげな旋律に重松が裏メロのように弾くベース・ラインが印象的な「ディレイアンダースタンド」では、先ほどまでと打って変わって観客もじっと聴き入っている。他の曲を演奏しているときの轟音の中からはうかがい知ることができない、山田の歌唱力の高さが感じられた曲だった。

ワウギターでファンキーに煽ってから中華風のフレーズへ移行して始まったのは「麻婆豆腐殺人事件」。マスロック的なフレーズを合わせるベースとドラム、テクニカルなバンドの底力を発揮する。その演奏力の高さ、アンサンブルの上手さは「カマイタチごっこ」でも顕著だった。それにしてもこの曲のドラミングは爆発力が半端じゃない。山田がバスドラの上に乗って上着を脱ぎ捨てると「スキャンティ・スティーラー」からライヴは後半戦へ。前の方のお客さんは汗だくで盛り上がっている。ファンキーなベースが牽引する「ワイセツミー」で踊らせたあとは、「キャバレークラブギミック」でシンガロングが起こり、会場が一体に。エフェクトのかかったヴォーカルで歌われた「文系絶賛宿酔中」から「怒鳴りたい日本語」ではなんとマイクを口に咥えながら歌う場面も。そんな姿もフロアを埋めたファンは大歓迎で手を伸ばしている。

アンコールでは、"裏切られたり、裏切ったりしてこれまで生きてきたんですけど、みんなもそうだと思います。俺たちのエンターテイメントはそんな奴に向けてもやってるつもりです。俺はずっとそうやって死ぬまで音楽をやっていきます。ありがとう、バズマザーズでした"との言葉を送り、長いギター・ソロを弾きながら、「ハイエースの車窓から」へ。ひと際シンプルな演奏、シリアスな歌声による楽曲は徐々にファンの心に沁み込んでいっているように見えた。最後は激しくギターを掻き鳴らしての「ロックンロールイズレッド」。ステージ前で揉みくちゃになった観客数人の上にギターを下ろし、激しい演奏と真摯なメッセージを投げかけたライヴを終えた。

同じ3ピースのロック・バンドながら、まったく異なる音と言葉を持ったふたつのバンド。それぞれの個性が生々しく露わになり交差したことで、楽しくも緊張感を感じさせたツーマン・ライヴだった。

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