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LIVE REPORT

Japanese

NICO Touches the Walls

Skream! マガジン 2016年04月号掲載

2016.03.11 @CLUB CITTA'川崎

Writer 山口 智男

ライターという仕事の都合に加え、その仕事を東京でしているから、ライヴに足を運ぶときは、だいたい東京で行われるツアー・ファイナルや、例えば日本武道館といった大きな会場でやるスペシャルなワンマン・ライヴということが多いのだけれど、そういうある意味、集大成的なライヴだけではなく、イベントはもちろん、東京近郊や地方都市でやるライヴにももっと足を運ばなきゃいけない......いけないというか、足を運んだら運んだだけ、そのバンドのまた違った一面が見えてきて楽しいと改めて気づかされたライヴだった。
 
3月4日から"NICO Touches the Walls TOUR 2016 「勇気も愛もないなんて」"を行っているNICO Touches the Walls(以下:NICO)が、その全国ツアーの真っ最中に東名阪と川崎で行う対バン・ツアー"ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ フェスト '16"。開催3年目となる今回もウルフルズを始め、各公演、豪華且つ興味深い顔ぶれのゲストが顔を揃えているが、その第1弾となる川崎公演のゲストは、この1~2年、めきめきと頭角を現してきた事務所の後輩、フレデリックだ。NICOの光村龍哉(Vo/Gt)が以前、自分たちのことを"NICOの舎弟"と呼んでいたことに触れ、"子分かと思ったら(舎弟には)弟分という意味もある。弟と呼んでくれるなんて愛してくれてるんだ"と対バン・ツアーに招かれた喜びを語る一方で、兄貴だからって負けられないという闘志も見せる。ファンキーな味つけを加えたNICOの「THE BUNGY」のカバーも織り交ぜながら、疾走感溢れるダンサブル......と言うよりもむしろリズム・コンシャスなロック・ナンバーの数々で盛り上げた。
 
ノスタルジックな情緒と人を食ったようなユーモアが入り混じる歌が残した余韻の心地よさに浸っていると、アイリッシュ・パンクが大音量で鳴り響き、NICOの4人が登場。"お祭り騒ぎだぜ!"という光村のかけ声とともにいきなりトップギアで演奏になだれ込んだ。
客席と距離が近いライヴハウスならではというところはあったかもしれないが、「渦と渦」、"本家本元いってみたいと思います!"と光村が紹介した「THE BUNGY」を始め、アップテンポのロック・ナンバーで4人が見せた解き放たれたようなエネルギッシュなパフォーマンスが印象的だった。その「THE BUNGY」では"行くぞ! 飛び跳ねろ!"という光村の号令で観客全員がジャンプ。古村大介(Gt)、坂倉心悟(Ba)、光村、対馬祥太郎(Dr)と順々にソロを繋げる間奏では、古村が右手の骨折が完治したことをまるでアピールするようにギタリスト然としたアクションでレスポールを鳴らした。懐かしい「GANIMATA GIRL」では坂倉が客席に身を乗り出し、まるで見せつけるようにベースを奏でた。デニムが似合う(いい意味で)いなたいバンドの姿がずいぶん板についてきた。
"生まれ変わったらフレデリックに入りたい"と、かわいい弟分のファンであることを語った光村は"「THE BUNGY」の仕返し"とフレデリックの「峠の幽霊」のワンフレーズを歌ってから自分たちの「Lonesome Ghost」を披露。「ニワカ雨ニモ負ケズ」では間奏のスキャットにフレデリックの「オドループ」のフレーズを紛れ込ませた。そんな遊び心はこのイベントならでは。それを言うならスカにアレンジした矢野顕子の「ラーメン食べたい」のカバーも貴重だったはず。演奏が終わると、ラーメン二郎京急川崎店の魅力について、光村が熱弁をふるった。 ひょっとしたら今回のフェスト、「ラーメン食べたい」とともに光村のご当地ラーメン・トークが楽しめるのかもしれない。荒々しいくらいにエネルギッシュであると同時にリラックスしている。そのせいか、いつも以上にバンドが演奏を心底楽しんでいるように見えた。こまめに彼らのライヴに通っている熱心なファンなら見慣れているのかもしれないが、それは筆者がまだ見たことがないNICOの姿だった。
ハイライトは「天地ガエシ」だった。"ドン! ドーン!"と鳴る対馬のドラムを始め、さらにパワーアップしたアレンジは、そのままバンドのパワーワップを物語るものなのだろう。それが全国ツアーを通して、どこまで高められているか。ツアー・ファイナルに対する期待が一気に高まった。
 
アンコールではフレデリックのメンバーを迎え、"(フレデリックの三原)健司の歌で聴きたい曲がある"と光村が語り、「泥んこドビー」をセッションしてダメ押しで盛り上げた。曲数が多いワンマンももちろんいいと思うが、それとは違う見どころがいっぱいあるこの対バン・ツアー。こんなに楽しいイベントだったとは! 前回、前々回を見逃したことが今さらのように悔やまれる。次も絶対行くぞ。興奮が冷めやらぬ中、早速そう思ったのだった。

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