Japanese
takekings
Skream! マガジン 2016年03月号掲載
2016.01.24 @TSUTAYA O-Crest
Writer 吉羽 さおり
2015年2月に活動を休止したFoZZtoneのギタリスト、竹尾典明がソロ・プロジェクト"takekings"をスタートし、2016年1月にデビュー・アルバムとなる『Case of takekings』をリリースした。これまではバンドのいちギタリストとして、サウンドの景色を色鮮やかに広げてきたけれど、ここではギタリストとしてはもちろん、フロントマンとしてその歌声を響かせている。骨太でいて、華のあるロック・アルバムに仕上がった『Case of takekings』を引っ提げてのツアーが、TSUTAYA O-Crestから始まった。
まずオープニング・アクトとしてステージに立ったのは、takekingsのベーシストである渡邉紘(プラナリア/HIGHGINTONIC006)と大学での同期だったという、コントラバス奏者、Basse Plante。大きなコントラバスとともにステージに立ち、ループ・マシンを駆使して生み出すサウンドは、それまでのコントラバスという楽器のイメージを大きく変えるもの。ふくよかな音色はもちろんのこと、こんなにも攻撃的な音や鋭さの角度も自在で、リアルタイムで多重録音をしながら奏でられる耽美でポップなサウンドに、会場からは大きな拍手が沸き起こった。
続いて登場したのは、ARCHAIC RAG STORE。ずっとFoZZtoneの背中を追いかけ活動をしてきたといい、活動休止を知らされたときの寂しさを鴻池遼(Vo/Gt)はMCで語っていたが、そんな憧れを抱いていた人の新たな門出となったツアーの初日に呼ばれた喜びも付け加える。そして、平均年齢21歳という勢いと、パワフルなアンサンブルを武器にして、つんのめりながらも繊細な心の叫びを響かせていった。3月リリースのミニ・アルバム『EXPLODE』収録の「LOVE SONG」など、新曲も多数交えたセットリストで、遠慮なしにtakekingsに挑んでいくステージとなった。
そしていよいよ、takekingsが登場。ちなみにバンドは、竹尾をフロントに、ギターがchoro(Jeepta)、ベースに渡邉紘、ドラムには哲之(ジン)という鉄壁のメンバーで構成。いずれもライヴ・バンドで多くのステージを凌いできた猛者ばかりとあって、のっけのセッションからガンガンに責める爆裂ぶり。みっちりと濃度の高いプレイと、スケール感のあるアンサンブルで飛ばしていく。アルバム『Case of takekings』をほぼ頭から順番に演奏していくようなセットリストで、「非日常」で哀愁のドラマをカタルシスたっぷりに聴かせ、「Remove it!」では、ドライヴ感のあるビートと重厚なギター・フレーズとリフによる迫力のサウンドで、フロアを熱くする。竹尾のヴォーカルは力強さよりも、線の細めな、優美で繊細な雰囲気を持っているものの、馬力あるバンド・サウンドに埋もれることなく、曲に華やかな香りを添えている。「Paper moon」や「ハローグッバイ」などは、どこか懐かしさのある歌謡曲や、70年代ポップス風の憂いあるメロディ・ラインで、日本的な情緒や歌心を丁寧に描く。こうした歌心のある曲では、全編で印象的でメロディアスなギター・フレーズを、ハード・ロック的なパンチのある曲では、重厚で一撃必勝ともいえるインパクトの高いリフで切り込んでいく。歌も、ギター・サウンドも、互いが譲り合うことなく主張し合うように構築されている感じは、ギタリスト目線ならではのものかもしれない。それでいて、エキセントリックで奇をてらったものにはならないバランスや、音の色味の強弱のほど良さはやはり、歌を知るからこそのものなんだろう。その絶妙なさじ加減が、骨太でありながらも、華や色気のあるロックとなっている所以だ。ラストの「まだ見ぬ君へ」をプレイする前に、竹尾は、"ここから3年で、今は世にいないギター・ヒーローに駆け上がっていく"と、観客に高らかに宣言した。その言葉に大きな歓声が沸く中で、「まだ見ぬ君へ」で静かに、且つ饒舌にギターを奏でると、会場はさらなる拍手で包まれていった。現代のギター・ヒーローとなるべく、ここからtakekingsがどのようにその音に磨きをかけていくのかは、とても楽しみなところだ。
- 1