デビュー20周年。リーダー脱退やレーベル移籍などの転機も前向きに乗り越え、ロック・シーンに君臨し続けるバイン。あえてメッセージを明言しない姿勢の彼らが今、何を歌うのか。シンプルで壮大なギター・ロック・ナンバー「Arma」は"このままここで終われない"と、武器を持たず新しい音を創造するバインの魂をミディアム・テンポで聴かせる。乾いた音のキメが心地よい「Shame」で"ひと夏の思い出"としてのフェスなど現実を俯瞰的に皮肉り、重厚な歪みの「The milk(of human kindness)」でどっぷりとダークな世界へ誘い込むが、ラスト「聖ルチア」では一転、キーボードが映えるこれでもかと明るく美しいポップ・メロディに乗せて愛を歌い、強い余韻を残す。預言者は例え話を聴く者に伝え、そこから本質を読み取らせる存在。"道端の預言者"なる本作もそんな作品のようだ。
ヤナセジロウのソロ・プロジェクト、betcover!!による2ndアルバム。"2020年の今に望まれたロック・アルバム"と謳われる今作は、"愛"と"悲しみ"の表裏を淡々と歌い上げ、ノスタルジックで情緒溢れるサウンドスケープを描き、独自の感性を叙情詩のように表現した全10曲が収録されている。今作の鍵となるであろう「Love and Destroy」は、新たな試みとしてプロデューサーに小袋成彬を迎えて制作された楽曲。繊細で、しっとりと心に触れるものがあると同時に、"僕の体が道路に落ちても/心はそれを見ているだけ"などの言葉にハッとさせられ、聴き終えてからしばらく考えさせられるような感覚になる。純度の高い彼の音楽は、まさしく彼にしか作れないものだと思う。