phatmans after schoolというバンド名をsajiに改めて、再び歩き始めた彼らの改名後、初の音源。表題曲の「ツバサ」は、TVアニメ"あひるの空"のエンディング・テーマに起用されているが、ヴォーカルでありメイン・コンポーザーのヨシダがかねてより愛読していた作品なこともあり、原作の世界観をしっかりと楽曲に落とし込んでいる。それだけでなく、澄み切った青空が目に浮かぶ爽快感溢れるバンド・サウンドであり、そこに綴られている言葉は、新たな名前で走り出した今の彼らの姿を彷彿とさせるものに。また、甘酸っぱさのある「猫と花火」も、ビッグ・バンドな「まだ何者でもない君へ」も"夢"をテーマに掲げていて、心機一転の第一声に相応しい内容に仕上がっている。
直近の2枚のミニ・アルバムではアグレッシヴな作品を立て続けにリリースしてきたphatmans after schoolだったが、この最新アルバム『キミノバアイハ』はバンドの中核にある"歌"の魅力をフィーチャーした原点回帰の1枚となった。タイトルには2011年にリリースされたメジャー・デビュー作『ボクノバアイハ』のアンサーとしての意味合いを持たせているとおり、出会いや別れを繰り返す活動のなかで、変わってゆくこと、変わらないことのすべてを肯定するような曲たちが力強く鳴らされている。中でも、8曲目に収録された温かいミディアム・テンポ「kakemeguru」の"怖がらないで 一歩ずつ/君らしくいけばいいさ"というメッセージは、いまの彼らだからこそ歌える優しいエール・ソングだ。
2014年春、拠点を北海道から東京へ移し本格的にライヴを始動させた4ピース、phatmans after school。ミニ・アルバムやシングルで、キャッチーでキラキラとしたギター・サウンドを披露してきた彼らの1stアルバムは、四つ打ちチューン、ギターとシンセの音のシャワーが歌に降り注ぐフレッシュな曲から、打ち込み、じっくりと歌を聴かせる曲などやりたいことを詰め込んだエネルギッシュな1枚。そんな1stアルバムらしい天真爛漫なパワーがあるが、1曲1曲を紐解くと、細やかなディテールが積み重ねられたアレンジの妙がある。各々好みの音楽が幅広く、またJ-POPを聴きながら育ってきたゆえの、心地よい歌心とつい癖になって繰り返してしまうフックが織り込まれている。確信犯的なのか、天然なのか、これからが楽しみになる。
札幌在住、平均21歳の4人組バンドphatmans after school。2011年秋にメジャー・デビュー。メジャー1stミニ・アルバム『ボクノバアイハ』以来約1年5ヶ月振りのリリースとなる。若者特有の衝動と物憂げな空気が交錯するギター・ロック・ナンバー「メディアリテラシー」と、ティーンのモラトリアムな心情を綴ったキャッチーな「1○歳」、どちらも共通して歌われているのは"夢"だ。何が正しいかもわからなくなる現代。"それでも夢を追いたい"という彼らの純粋な思いはリスナーの心にまっすぐ飛び込んでくるだろう。インターネットを拠点に活動するy0c1eによる「無重力少年」のリミックスは、楽曲のサイバー感と憂いを抽出したソリッドなアレンジになっているのでこちらも必聴だ。